2章

第17話 嫉妬なんてしてません(若菜視点)

★今はもう大丈夫ですが、最近、あることがありまして、打ち切りにしようとも考えましたが、2章完結まで投稿します。

【本編↓】





 困らせたいわけではない。奏太くんには私でドキドキしてもらいたい。


 小さい頃から彼は、額や頬にキスをしても、手を繋いでもあまり表情の変化がみられない。


 だから私のことは恋愛対象として見てなくてただの幼なじみと思われていると思っていた。


 けれど、引っ越す前日に彼も私を好きだということを知った。


 だから私は彼と次に再会したら結婚しようと約束を交わした。


 引っ越して奏太くんと離れてしまってからの日々は退屈でつまらなかった。


 中学2年生の時。偶然の再会なんて待ってなかった私は、高校になったら奏太くんに会いに行くことにした。


 そう決意した数日後、お母様から奏太くんのお母様から聞いた話を私にしてくれた。話の内容は、彼が一人暮らしをすることだ。


 そこで私は思った。彼の近くにいたいと思うなら私もそこで一人暮らししようと。


 再会しても私もあの日の約束も忘れてしまっているかもしれない。けど、もしそうでも私はまた好きになってもらえればいいと思った。


 そして再会した高校1年生での入学式。奏太くんがこの学校に通うことは彼のお母様から聞いて知っていたけれど、同じクラスになれるとは予想していなかった。


 嬉しかった。またあなたと一緒にいられることが、側にいられることが。


 会ったらすぐに声をかけようと思った。けど、いろんな人に声をかけられ、彼に近づけない。2人だけの状況を何としてでも作りたい。


 ロッカーの鍵は明日配布されるそうで、その日は、誰でも開けることができた。そこで私は、手紙を書いて彼のロッカーへ入れた。


 会ったらまずは約束を覚えているか聞こう。もし、覚えているなら告白しようと私は決めていた。


 あの時した約束は結婚の約束だったが、急に再会して結婚は急すぎる。だからお付き合いしてくださいと言った。


 放課後、彼は来てくれた。告白の結果は、予想していた通り、振られてしまった。


 告白して振られたということは私にとっては初めて自分の思い通りにいかなかったことだ。


(面白いです……。そうです、世の中そんな簡単に自分が思うように上手くいくものではないのです)


 自分には勝てない壁のようなものに初めて当たった気がして私は振られたはずなのにワクワクしていた。


 困らせてしまうかもしれないが、お得意のポーカーフェイスを崩して今まで見たことのない表情をさせたい。私のことだけを見てほしい。


 好きでないのならまた好きにさせればいい。そう思った私は再会したその日から彼に好きになってもらえるよう意識させるような行動をしていた。


 額へのキス。小さい頃の彼なら無反応に近かったが、久しぶりにしたら違った。


 ほんの少しだが、彼の顔が赤くなっていた気がした。


(効果ゼロ……ではなさそうですね)


 急にグイグイ攻めても引かれるだけ。だから少しずつ距離を縮めて意識してもらおうとしていた。


(ですが、ダメですね……好きな人が目の前にいると我慢できそうにありません)


 彼の手の甲にキスした私は、顔を上げ彼のことを真っ直ぐと見た。


 すると奏太くんは、顔も耳も真っ赤で下を向いていた。


「急にやられると心臓に悪い……」


「ふふっ、では、次からは言ってからしますね」


「それも心臓に悪い。残りは1人で食べるよ」


 奏太くんは、顔を真っ赤にして紅茶とケーキを持ってテーブルの方へ移動した。


(ふふっ、照れてる奏太くんが見れて満足です)





***




 翌日。本当は、奏太くんと行きたいところだが、断られているのでいつも通り真昼さんと待ち合わせて一緒に学校へ行く。


「嬉しそうね。何かいいことでもあった?」


 顔が真っ赤な奏太くんを見れて嬉しかったことが顔に出ていたようで真昼さんに気付かれた。


「えぇ、何があったと思います?」


「奏太と何かあった……としか考えられないわね。付き合えることになったとか?」


 真昼さんは、私からよく奏太の話を聞いているので嬉しいことに彼が関係していることはすぐにわかったようだ。


「いえ、違います。私があることをしたら彼が顔を真っ赤にしてくれたんです」


 私がそう言うと真昼さんは、一体、彼に何をしたんだと言いたげな表情をした。


「へぇ~、良かったわね」 


 最初、奏太くんが初めて連絡先を交換をしたのが真昼さんと知った時は、彼女も彼を好きだと思っていた。


 けれど、真昼さんは、彼より別の方が気になっていると知り、同じ人を好きであるライバルではないとわかった。


「真昼さん、私はクラスの女子の中であればあなたが1番好きですよ」


「……ありがと、それは私も。やっぱり城市さんって変わってる」


「変わり者なのはお互い様です」


 学校に辿り着くまでたわいもない会話をして、教室に入ると今日は先に彼が来ていた。

 

 一緒に来ている園川くんは、まだ来ていないようで奏太くんは、1人でいた。


 彼のところに行こうとすると奏太くんは、あるクラスメイトの女子に話しかけられてそのまま廊下へ出てどこかへ行ってしまった。


「あの子、青木さんだっけ? 奏太と何しに……って、大丈夫?」


「だ、大丈夫ですよ。嫉妬なんてしてません。奏太くんが、私以外の女性といても何とも思いませんよ」


 大丈夫です。朝から告白……ではなさそうですし、あるとしたら……あれ、何も思い付きません。


 いろんな可能性を考えてみたが、いつもより早い時間に奏太くんが学校に来ているのが少し不思議だ。


「何とも思ってない顔してないけど。まっ、大丈夫でしょ。ちょっと話に行っただけだろうし」


 真昼さんは、そう言って自分の席へと向かったので私も遅れて席についた。





***





「若菜、おは……ってどうしたんだ?」


 教室に戻ってくると若菜が机に突っ伏していたので俺は近くにいた真昼に聞く。すると彼女は俺に向かってこう言った。


「奏太のせいだから」


「えっ、俺、何かした?」










     

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