第2話 辺境ミラージュ
「はー、此処の空気って綺麗だねぇ。王都は建築物とかが多いから、自然と息が詰まっちゃうんだよね」
私は竜魔法で竜の翼を生やした後、辺境ミラージュに飛んできた。最近は特に王都に居たからか、自然が前よりも美しく感じる。精々、数百年前とか、そこ等なんだけどなぁ。私はそんなことを考えながら地上へと降りる。
「確かこっちだったよね」
私はそんなことを言いながら、チャルからもらった地図で目的地の場所を目指す。えっと……こっちだから、右に曲がると。……此処広いねぇ。いやぁ、昔はもっと広い神城を探索しても平気だったんだけどね。今ではこんな広さでさえ参っちゃうな。
「よし、着いたね。此処がミラージュの冒険者ギルドか……いつの間にこんなのができたのやら」
私は時代の流れははや開くて困っちゃうなぁ、と呟いきながらギルドへと入る。……なんか酒くさいんですけど。誰か酔っ払い混じってるでしょ。私は顔を顰めながらそんなことを思っていると、酔っ払いに絡まれた。
「へいへい、嬢ちゃん。俺とあそば……」
「うっさい」
私はその酔っ払いの言葉を最後まで聞くことはなく、力を最低限度、しかしこの男にダメージが通じる程度の力で男の急所を蹴った。周りが多少引いてるが、私はそれを気にせずに歩き進める。
「少し用事があります」
「……!?な、なんの用事でしょうか……?」
「ギルドの受付嬢として働かせてください!」
『え、ええええええ!?』
ギルドにそんな声が響き渡る。
「名前は?」
「ミネリア・スタージュです」
私は今、面接をしている。ちなみにだが、これが初めての面接である。
「不審者を撃退する術は持っててほしいからね。戦闘力は?」
「ペルリス帝国で三大剣王をやらせててもらってて、此処ルビエルの王都で三年前は宮廷魔道士会の会長をやってました。これが証拠ですね」
「えぇ……これ多分本物じゃん。えげつな……ゴホンッ!なぜウチに?」
「ギルドの受付嬢やってなかったなぁってのと、辺境だからやるなら此方がいいという理由からです」
「うん、採用!」
ということで今日から働くことになった私ですよと。ふふ、来た時から思ってたけど、ギルド受付嬢の制服って可愛いよねぇ。可愛げのなかった勇者時代や宮廷魔道士会の制服とは比べ物にならないね。
「それじゃ、行って来ます」
『行ってらっしゃい、ミネリア』
「……!?そうだね、行ってきます」
私は誰も居ないはずな区間に振り返り、そう言葉にする。
「ダメです」
「はぁ!?何言ってんだ!?俺様が言ってんだから許可しろよ!」
「そうよ!このアレアレ・フィーメール様が言ってるのよ!?」
「なぜ犠牲者を増やさなければいけないのですか?貴方達の実力では踏み潰されて終了ですよ」
「チッ!もう行こうぜ。あとから泣いて謝っても知らないからな!」
「そうよそうよ!」
「確かフィメリナさんでしたっけ?浮気にはご注意を」
「はぁ!?アレアレ様が浮気をするはずないじゃないの!」
人はそう簡単には変われないから無理だと思うけどなぁ。
「お疲れ様だ、ミネリア。一つ聞きたいんだが、なんの依頼だったんだ?」
「ギガント・タートルです。というか、バカじゃないんですか?この依頼」
「え、その依頼、俺知らないんだけど……何奴かが勝手に貼ったか。警備を強めたほうがいいかなぁ」
「そのほうがいいと思いますよ」
「あの!そのギガント・タートルってなんなんですか?」
「簡単にいうと、でかいカメ。長くいうと、下級竜なら容易に潰せるパワーと巨体。並みの聖剣、魔剣では傷がつかない耐久力。数秒まで見通せる未来予知に周囲の魔力干渉ができる緻密な魔力操作。まだまだあるけど、そんな能力を持っているカメ」
「まるで体験したかのようだな」
「してるんだよ。本当に面倒くさかった。勝ったけど……もう二度と戦いたくない」
私がそういうと、ギルド長は引いたような視線で私を見つめる。
「はいはい、もう話はここら辺でいいでしょ?さっさと仕事に戻るよ」
私が手をパンパン叩くと、私の周りに集まって来て居た人々は散って行った。全く、興味津々というのも困りものだね。私はそうため息を吐きながら、私の目の前に立った男、いや、男の子に目を向ける。依頼書は持っていないから、冒険者登録だろうか。しかし目線がおかしい。いや、ぼーっとしているわけではないので、視線が可笑しいといった所だろうか。
「あ、あの!好きです……あ、間違えた!」
「間違えた?」
「い、いえ!好きに、一目惚れになったのは本当なんです。だけど思いが先走り過ぎちゃって……」
「そうなんだ……まぁ、今は仕事中だから返事は後でね」
「は、はい。分かりました」
「はい、レイくん」
「ありがとうございます……どこで待っていればいいですかね?」
「ピナス広場の噴水にしようか」
「そこで待ってます。例え……それでは失礼します」
ふぅ、どうしようか。私いま、すっごい揺れてるんだけど。仕方ないじゃんね?私って強大な力を恐れられてとかで、好きっていう一直線な思いをぶつけられたことなかったんだよ。仕方ないじゃん。それにさぁ、あのレイくんの表情、例え来なくても待っているってことなんだろうけど……やばすぎるってぇ。あんなに可愛い子が私を待つっていってくれて、その時の表情が覚悟を決めた漢の顔だった。そういうギャップも来るものがあるし、一つの恋に真剣になってくれてるのも良い。あ”あ”ー、私だけにあの笑顔を向けてくれないかなぁ。でも見せていない自分を見せて捨てられるのも嫌だし……でも隠したくないんだよぉ。全てをさらけ出したい気持ちもありけり。
「仕事に集中してくれミネリア」
「……わかってますよ」
「ミネリア、もう上がっていいよ。新人をあまり働かせるわけにはいかないし、レイくんが待ってるんでしょ?」
「確かにそうですね。あの子を長く待たせるわけにはいかないか。明日は今日の埋め合わせを頑張るよ」
「やっ、レイくん、来たよ。ごめんね、急いで来たから仕事服のままで」
「いえ、大丈夫です」
「そう、なら良かったよ。それで返事なんだけど……」
ゴクリとレイくんが唾液を飲み込む。
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