第3話


野太い声の主は、見た目は筋骨隆々の頭は鷲の人だった。

思わず、


「は?!」


と声を上げてしまった。

あり得ない見た目だ。

確か、少年漫画の中でしかお目にかかれないと思っていた見た目だった。


「なんだよ、『は?』って」


その人?鳥?は耳が良いのか、僕の言葉をそっくりそのまま言ってきた。


「失礼な奴だなあ。ちゃんと質問には答えろよ?」


と付け加えて。

僕は近づいてきたその人獣に圧倒された。

僕なんかよりも、約2倍の身長だった。


「えっと……」


そう僕がすっかり目の前の人にビビッて、声も小さくそう言うと、


「お前ちっこいなあー」


とその人は、いきなり僕の頭に自分の掌を乗せた。

僕はいきなりのことに、体がピッキーンと動かなくなった。

心の中は、怖いのと驚きがゴチャマゼになって、これから何をされるんだろうかという不安が渦を巻いた。

そんな僕の様子に気がついたのか、鷲の人は、


「そんなビビるなよ。取って食わないから。ちょっと仕事を手伝って貰うだけさ」


とふわりと優しい顔をした。

その顔に、僕の不安や緊張は少し解けた。


鷲の人は波打ち際まで歩いて行き、僕はそれに付いていった。


「ここでな、あるモノを採取してんだ。人手が必要だったから、お願いできるか?」


とその鷲の人は言った。

僕はコクリと頷いた。


「じゃあ、この道具持って」


鷲の人は、僕に柄の長い熊手を渡した。

あまりにも柄が長すぎて、先端が見えないくらいに。


「長い……ですね」


そう感想を漏らすと、


「長いか?」


とその人はヒョイと扱った。

そこで分かった。

この柄の長さは、その人の身長に合わせて作られていたのだと。

その人もそれに気がついたのか、


「いやあ、悪い坊主。だいたい俺たちは似通った身長だから、普通だと思っていたわ。そうか、坊主にとっちゃこれは長すぎるのか」


その人は頭をポリポリとしながら、どうしたものかと悩んだ。

その内に鷲の人と同じ身長、同じ鷲の頭をした人が近寄ってきた。


「どうしたよ?作業止まってんぞ?」

「ああ、いやな。坊主に作業を手伝って貰おうと思ったら、道具がちょっと合わねえんだ」


その人は困った顔をして言った。

すると、


「なんだ。ちょっと貸してみ?」


と言って近寄ってきた人は、僕が手渡された道具の柄をギコギコと切った。

僕はあまりの潔い行動に、肩が上がるほどに驚いた。

そんな簡単に切っていいのか?!と思って。

そんな僕の心情なんて気にしないで、その人は柄を切って何やら段差をつけて短くした。

短くなった柄の道具を僕に渡してくれた。


「あの、そんな簡単に切っちゃって大丈夫ですか?」


と恐る恐る聞くと、


「あ?……大丈夫だよ。こんな風に、長くすることも出来るからさ」


ともう一度僕に渡した道具を受け取って、分解しては、先ほど切った柄の一部を付け足してほぼ元通りの長さに戻した。

それを僕に見せて、な?と得意げに言ってからもう一度短くしてから僕に渡してくれた。


「いやあ、器用なもんだなスーパーは」


鷲の人がそう言うと、


「何、ちょっちょいと思いついただけさ。ツーサーはこういうことが苦手だからな」


と道具を改良してくれた鷲の人はそう言って、去っていった。


「じゃあ道具も揃ったことだし、説明するか」

「お願いします」


僕はそう言って、作業手伝いが始まった。


なんてことない作業だった。


「この道具を使って、あの海の中のあるモノを取るんだ」


と鷲の人は言った。


「ちょっとやるから見ててくれ」


と言って、何やら目の前の暗く濁った海のような水の物体がうねっているところへ、道具の先端を勢いよく入れた。

と思ったら一気に力を込めて自分のところにまで引き寄せた。

すると先端には、色んなモノが引っかかっていた。

砂のようなモノ、何かの破片、ヒラヒラした紙のようなモノ。

その中に一際キラキラしているモノがあった。

鷲の人はそれを手に取って僕に見せた。


「コレを取って欲しいんだ」


そう言った。

それは近くで見ると、丸い物体をしていて、でも中に発光している形としては星型に近かった。先端は鋭く尖っているようにも見えた。


「コレ……ですか?」


と僕はそれを指差して聞いた。

すると鷲の人は得意げに、


「コレだ」


ともう一度力強く言った。


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