第016話 中間試験は波乱の予感
結局、俺達は3人が集まって訓練をすることはなかった。
周りは数日でコミュニケーションを深め、連携や作戦の話をしているようだ。今まで見たこともなかった組み合わせが増えたのはそういうことだろう。
試験当日になっても俺達は話をすることなく開始を待っていた。
「それでは、今から中間試験を開始する。」
見たことのないメガネをかけた先生が生徒の前に立つ。
他にも2人見たことのない先生がいるので1年生の担任はすべて集められているのだろう。
「これからルールを説明する。
まず、制限時間は90分。そして、その90分間で事前に説明されているリングを3つ守りきるのが今回の試験だ。勿論、他のチームのリングを奪えばその分ptは加算されてランクが上がりやすくなるので守ってばかりでもいけない。
注意事項として、リングを持った者がリバイブを発動させた場合、その者からリングを奪うことは出来ない。ただし、リバイブが発動した者が所持しているリングはptとして加算されない。以上だ。」
幸運にも使えそうなルールがあるようだな。
「それではリングを配布する。代表者が1名がまとめて受け取りにこい。」
俺は率先してリングを受け取りにいく。
10ptのリングには銅、50ptのリングには銀、100ptのリングには金が使われている。
パッと見でも分かるような工夫されているということか。
「それでは、各チーム指定された地点に移動しろ。20分後にそれに砲撃を放つのでその音が開始の合図だ。」
説明が終えるとみんなゾロゾロと森の方へ歩きだしている。
「霧道、約束通りリングを寄越せ。」
1週間話しかけてこなかったのに、こう言う時だけ真っ先にくる。
「他のチームもいるここでリングを見せたら意味がないだろ。」
「そうですよ。約束は守りますのでまずは移動からですよ。」
来井はそれ以降何も言うことなく、指定された地点を目指して移動する。
それにしても近くに他のチームが見えないことからもこの森の広さが分かる。奥の方のチームは20分で移動するのは大変そうだ。
道中で最後の確認をしておく。
「本当に3人で行動する選択肢はないんだな。結局、俺達のptが0になるのは確定するぞ。」
「そうかもな。その時はそれでもいい。それに90分くらい何てことはない。」
音橋は話に参加してこない。
もしかしたら、まだ途中で来井の気が変わって3人で戦うことを選ぶと信じているのだろうか。
◇◆◇
やっと指定された地点まで移動することができたが、ここまで来るのに体力を結構使うぞ。
「ほら、来井約束のリングだ。元々、守り切れるなんて期待はしていないがそこら辺に捨てるのだけはやめてくれよ。」
放り投げてリングを3つ投げると器用に受けとる来井。
「黙って渡してくれれば嬉しかったんだがな。安心しろ、俺もできればptは欲しいからなリングは死守してやるさ。」
それだけ言って距離を取った場所で開始の合図を待っている。
ドォーーーーン
そうしていると開始の砲撃が放たれる。
バサバサバサッ
その大きな音に驚いた烏達が木の枝から飛び立つ。
そして、長い長い90分間が始まった。
「霧道君。本当にこれでいいのでしょうか。確かに作戦は上手くいくかもしれませんが。」
「音橋の言いたいことは分からなくもないが、どうやらさっそく俺達にお客様のようだぞ。」
開始早々俺達のことを探していた他のクラスのやつらがリングを取りに来た。
「いたぞー!くれぐれもリバイブは起動させるなよ!」
「了解だ。男の方がランク最下位のやつだ。」
そこにもう1組のチームも現れる。
「待ちなさいよ。あれは私達のリングよ、それにあなた達のリングもね。」
どうやら言い争うをしているようだが、俺達もいるのを忘れないで欲しいな。
最初に到着したチームの司令塔らしき生徒の声で指示が飛ぶ。
「フォースのやつらは後回しだ!まずは、あの女達から倒すぞ!」
「OKー!了解だ!」
しかし、焦りだす司令塔。
「待て今のは俺じゃない。この中にいる誰かの能力だ!」
2番目のチームの女子生徒も司令を出す。
「攻めてくるから、まずはこっちのやつらから対処するよ!」
「フォースのやつらはどうするんだよ。まぁ、お前が言うなら分かった。」
こちらも本人の指示ではない
「待ちなさい!私はそんなこと言ってないよ!」
「ナイスだ。音橋、これで混乱のなか両チームが戦闘を開始した。俺達も嫌がらせだけはするぞ。」
「上手くいきました!それでは、煙幕の方頼みます。」
俺のお得意技で状況をより混乱の渦に巻き込む。
「おいなんだこれ、周りが見えねぇーぞ。固まって陣形を組むぞ!リングは絶対に奪われるな!」
「おい、お前の指示他のやつの能力じゃないだろうなー!」
「能力を使ってなんとかしないよ!」
「周りが見えなきゃ意味ないだろ!」
これで少しでも時間を稼げるだろうな。
もう少しぐらいこの面白い状況を眺めていたいのだが、そんな余裕はない。
「リングを奪うの挑戦してみるか?」
「相手も馬鹿ではないから少ししたらこの状況も対応されてしまいますよ。」
とりあえず、開始位置からは離れることにした。
しかし、どこに行っても俺達を狙っている生徒達が多い。
今日1日は、指名手配されている気分が味わえるだろうな。
いたぞー! こっちだ! 向こう行ったぞー!
「どうしますか霧道君。これだけ人がいたらキリがないですよ。」
「攻撃は最大の防御っていうし攻めるか。」
そういうと次の作戦にでる。
「あそこにいたぞ!しかも2人しかいない!」
分かるように立っているから見つけられるに決まってるだろ。
1週間、俺達は無駄に過ごしていたわけではない。
2対3の解決方法を編み出していたからな。
そして、攻めてくるチームを迎え撃つ。
「こいつら、2人だけで仕掛けるつもりだぞ。」
「待て!!!こいつらリングを持ってないぞ!もう1人にも渡してやがる!」
「そいつを探すぞ。こいつらと戦っても意味がない。」
気付いてしまったらしょうがない。
でも、ここから簡単には逃さない。
「おいおい、どこ行くんだよ。俺達リングはないけど時間はあるんだよ。」
「霧道君、訓練で編み出したあれをやりましょう。」
この場を立ち去ろうとする奴らに攻撃する。
「「”
ギュイーーン
錬成したベースとスピーカーで出すの爆音を音橋の能力で地面を削るほどの衝撃波に変える。
俺達が考えた渾身の連携技。
「攻撃が来るぞ!防げ!」
移動しようとしていた相手チームがしっかりと反応してくる。
「”
地面から現れた土壁。
俺達の技なら防ぎきれないと思ったが、見た目以上の強度で防がれる。
「上手くいったのに逃げらてしまいましたね。」
「ptを狙ってみたが、そこは俺達より上位クラスの人間。一筋縄ではいかないな。」
俺達もその場を離れて時間が過ぎるのを待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます