第014話 誕生!最悪の3人組

昨日は、結局部活で情報を得ようとしたが活動に夢中になり忘れていた。

そして、今日が来てしまい作戦もないまま組み分け発表の日が来た。


「それではお楽しみチーム発表をするぞー。学園側がランダムに決めたものだから文句は無しだぞー。」


倉谷先生は、そう言ってはいるが恐らくチームのランクはある程度平等になるようになっているだろう。

そこから俺がどのポジションを担当するか。そして、どうやって連携をするか決めていくのがセオリーだろう。


「では、まず1組目ー。・・・・」


数組発表されていたが、そこには犬飼と京極、秋鹿と王馬という意外な組み合わせがあった。

どちらのペアも役割がはっきりしていて連携がしやすそうだな。

少しでも知っている人がよかったのだが、残っているのは大柏ぐらいだな。


「次の組は、霧道 歩、来井 英司くるい えいじ音橋 真梨おとはし まりの3名。」


来井と音橋か。まだ一言も喋ったことはないが普段の様子を見る限りは、この班が1番問題がありそうだな。


「それじゃー各自で軽く自己紹介をした後、それぞれ話あって1週間の訓練内容を決めて良いぞ。」


そういうと先生は教室を出て、職員室の方に戻っていく。

みんな、周りの様子を伺いながらチームごとに集まりだした。


音橋が俺の方に来て話しかけてくる。


「よろしくお願いします!霧道君だけでも作戦会議しませんか?」


音橋は真面目な性格なので率先してチームをまとめようとしてくれている。


「俺だけでも?来井はどうしたんだ欠席か?」

「来井君なんですが、先程話かけたらお前に話すことなど無いと言われました。けど、安心してください私がリーダーとして引っ張っていくのでお互い頑張りましょう!!!」


音橋は真面目すぎる部分があり、まかせ過ぎてしまえば面倒な訓練を組まされるに決まっている。

仕方ないが、ここは来井の方にもう1度声を掛けにいこう。


「今いいか来井。俺達チームになるんだし作戦会議はしっかりしないか?」

「お前は、めんどくさがって話掛けてこないと思っていたが残念だ霧道。」


こいつ生意気すぎるだろうが、ランク上げたいとは思わないのか。

そんな態度を続ける来井に音橋も限界が来たようだ。


「さっきからなんなのですかその態度!クラスのみんな真剣になってこの中間に挑むんですよ!恥ずかしくないんですか?」


さすがにこれ以上声を荒げて注目されてしまうのは避けたいので仲裁に入る。


「落ち着け音橋、お前が言っていることが正しいがここで感情的になっても得はないぞ。それに来井お前も少しは参加する姿勢を見せてくれないか。」


すると来井が諦めたのか口を開く、


「霧道、さっき作戦会議と言ったな。作戦はしっかり伝えてやろう。俺にリングを3つ寄越せ。俺は能力は使わないがそれでもお前らよりは遥かに強いと自負している。時間終了まで守り切ってやるから160ptは確定だ。」

「な、何言ってるんですかーー!!!ありえません!!!」


そう言うと怒った音橋は教室を出て行った。


「追いかけなくていいのか。お前だけでもあの熱血バカの機嫌を取らないと試験まで気まずいことになるだろうな。」

「ありがたい忠告どうも。今回の俺の役割は、お前と音橋の仲介役になるだろうからな意見があるなら俺に伝えろ喧嘩になるからな。」

「ああ、そうする。お前の方が少しは話ができるようだからな。」


俺は短く伝えたいことだけ伝え、音橋の後を追いかける。


◇◆◇


だいぶ探したがどこにもいない。今日から1週間は授業時間も生徒の判断に任せて行動することができる。

どこにいても注意されることがないので探さなければいけない場所もその分広くなる。

校舎内を探していると屋上の方から歌声が聞こえる。

俺は誘われるようにして屋上に向かう。


「歌うの好きなのか音橋。やっと見つけたぞ。」

「考えごとをする時この屋上の綺麗な景色を見ながら歌うの好きなんです。スッキリとした気持ちで悩みも晴れるような気がして。」


申し訳無さそうな顔をして音橋が語った。


「先程は感情的になってしまいご迷惑を掛けました。来井君抜きでも作戦を考えましょう。私達だけでも連携しないとptなんてすぐに0ptになってしまいますので。」


空元気で喋る音橋と図書館まで行き作戦会議を開始した。


「お互いに詳しい自己紹介から始めませんか。まずは、私から改めまして音橋 真梨です。部活は、中学の頃から続けている吹奏楽部に入部しています。見てもらったらわかるように私、張り切りすぎて空回りすることが多いのでその時は何か言って貰えると助かります。」

「知っていると思うけど霧道 歩だ。部活はなんとなく歴史研究部に。俺的には誰かが引っ張ってくれたほうがありがたいな。」


話すことがなくなり少し気まずい沈黙が訪れる。


「そうだ、よければ能力のこと話せることだけでも話さないか。俺は、”錬金術師アルケミスト”簡単に言うと色んな物を作ることができる。血を使えば生命を錬成もできるがあまり使いたくはないな。音橋の能力次第ではあるが俺は後衛向きではあるな。」


「後衛ですか、、、。私の能力なんですが、”虹色の音色カラフルサウンド”と言って詳しいことは伏せさせていただきますが、色んな音が出せます。近接戦闘は、苦手なので後衛向きではありますね。」


ただでさえ、このチームの空気感は最悪。

なのに、ここで躓いては結果が残せないのは明らかだ。


「それなら俺が前衛を担当しよう。そして基本的には、リングを死守していく方針にしよう。音が関係しているなら楽器やスピーカーなんかを錬成すれば強化されないか?」

「音の増強ですか。確かに試したことはなかったですね。この後の訓練で試してみましょう。」


どうやら、少しずつ元気を取り戻して来たようだ。


「物は試しだ。個別訓練場がまだ空いてると思うし先に行っておいてくれ。行かないといけない場所があってな。」

「分かりました。準備運動でもしておきます。」


俺は教室の方に戻った。

そこには、まだあいつがいた。


「まだ、教室にいてくれて助かった来井。話し合って方向だけが決まったので共有しにきた。音橋には、リングを守りきる方針にしようと伝えてある。でも、俺は2人だけでは守るのは不可能だと確信している。」

「そうだろうな。他のチームは、3人しっかり揃っている。チームが別々に動けば取れるリングが少ないのは明らかだからな。ましてや、ランク最下位のお前がいるこのチームは真っ先に狙われるだろうな。」


ハッキリとした物言いに呆れてしまうが来井の言うことが正しい。


「だからな、本番俺にこっそりリングを貰いにこい。3つ全部お前に渡す。俺らが囮になるから、逃げ回るくらいならできるんだろ?」

「俺はそれで構わないが、音橋は説得できるのか?」

「テキトーな言い訳を探しておくから気にするな。」


伝えたいことだけ言って個別訓練場に向かう。


俺がチームをコントロールする。それ以外に勝つ方法はない。

それでも、ptが増えるかは五分五分だろうがな。

大変な1週間になりそうだ。

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