第009話 女子の服はしっかり褒めよう

見学の後、寮に帰り着くと王馬から電話が掛かってきた。


『もしもし、霧道殿。結局、部活は決まったでござるか?』

「王馬か。なんと部活が決まったから明日は休みだぜ。」

『ちょうど良かったでござる。昨日、職員室で大柏殿と会って、霧道殿が部活を決めていたら遊び行こうという話をしていたでござるよ。』

「俺は全然良いけど何するか決まってるのか?」

『それは大柏殿が決めてくれるらしいでござるよ。』


大柏が決めて大丈夫なのだろうか。

1日スイーツ巡りとかにはならないだろうな。


「そうなのか。で、他に誰か来るのか?」

『それは拙者達の担当でござるな。拙者は2人ぐらい心当たりがあるでござる。』


おいおい、まさか日朝兄妹のことじゃないだろうな。

違うとは思うが念のため他の人を誘っておくか。


その後も明日の計画について話をしていたが、遅くなる前に人を誘っておくことにした。


まず、1人目はこいつだな。


「もしもし、霧道だけど。犬飼、今時間大丈夫か?」

『おう!霧道か!お前から電話してくるなんて何事だ。』

「明日、王馬達と遊びに行くんだけどお前もどうかと思ってな」

『まじでいいのか!すげー行きたいけどよ、悪りぃ、部活のやつと買い出しに行く約束してるから無理だ。また今度誘ってくれよ!』

「そうか、こちらもいきなりだったし申し訳ない。また今度の休みにでも遊ぼう。」

『そうしてくれると助かるぜ!じゃあ、またな。』


そういうと犬飼は電話を切った。

先に約束があったのなら仕方がない。

気を取り直して、電話していこう。



次はこいつにしよう。

まず、電話に出るかも分からないが。


「もしもし、霧道だけど。今、筋トレ中とかじゃないよな京極。」

『なんだ、霧道か。俺が筋トレしてるってよく分かったな。電話しながらでも出来るから問題ないぞ。』

「明日、王馬とかと遊ぶんだけど京極も来ないか?」

『明日はすまないが無理だな。秋鹿と訓練する約束を先にしているからな。』


そう言われると邪魔はできないな。


「そうか、約束があるなら仕方ない。今度遊ぶ時には声かけるよ。」

『すまないな。なんなら、お前達も俺と訓練するか?休みだからって油断してると大変なことになるぜ。』

「それは色々な意味で遠慮させていただくよ。」

『遠慮することはないけどな。誘ってくれるのは有り難いから時間ある時はよろしくな。』


京極も用事があるらしい。

それが秋鹿となら余計に邪魔できないな。


最後の望みにかけることにした。


「もしもし、霧道だけど。電話番号もらっていきなりでごめんな月野。」

『全然問題ないよ!というか、嬉しいですというか。』

「それなら良かった。突然で申し訳ないけど明日クラスメイトと遊ぶことになってだな、他にも人呼んで欲しいってことになって。月野さえ良ければなんだけど遊びにこないかなと思って。」

『行く!行きたいです!私なんかで良ければ全然問題ないよ。』


すごい乗り気で誘いを承諾してくれた。

友達が増える機会は大事にしたいのかもしれない。


『あ、でも友達も呼んでもいいかな。私、1人だと心細いから。』

「全然いいぞ。というか、そっちの方が俺達的にも助かる。じゃあ、詳しいことはメールで送っとくな。」

『うん!分かった!それじゃあ、おやすみなさい霧道君。』


そう言うと月野は電話を切った。

どうやら、月野が友達を連れてくるようなのでこれ以上は呼ばなくてもいいだろう。

明日遅刻しないように早めに寝ることにした。


◇◆◇


当日、いつもより早めに目が覚めたので時間にゆとりを持ちながら準備を始めた。

少し早めに家をでて、今待ち合わせ場所である駅前に着いたがどうやら俺が1番ではないらしい。


「意外なやつが俺達の次に来たな。おはよう歩!」

「キリにぃじゃーん!おっはよー!」


そこにいたのは日朝兄妹。

やはり王馬が誘ったのはこの2人だったか。


「朝から元気だなお前ら。待ち合わせもう少し先だぞ。」


そういう俺も今日が楽しみだから早く着いたのは内緒である。

学園の生活はどうかなど一般的な会話をしていると次の人間が現れた。


「あれ?拙者が1番だと思ったら結構集まってるでござるな。」

「残念だったな王馬、お前は俺の次で4番目だ。」


俺と同じく1番だと思っていた王馬だった。

後は、大柏と月野が来る予定だ。

月野は遅れることはないだろうが、問題は大柏だな。


予想通り、次に来たのは月野だった。


「遅れてごめんなさい。」

「おはよう、月野。謝罪しているところ悪いが集合時間前だぞ。」


いきなり謝罪から入る月野を止めようとしていると、


「ふーん。あなたが霧道 歩ね。どんなやつかと思えば意外と普通ね。」

「ダメだよ千里ちゃん!霧道君困ってるから自己紹介して。」

「小鳥と同じクラス・サードの増本 千里ますもと ちさとよ。それで、あんた小鳥見てなんか無いわけ?」


ちょっと強い口調で怖いが友達思いみたいだし悪いやつではないようだ。

というか、なんかってなんだよ。


「これはダメダメだねぇー霧道君。ここは私服を見て褒めるところだと思うよー。」


横から現れた大柏がアドバイスをする。

てか大柏、遅刻しなかったんだな。


「そういうことか、確かに私服見たことなかったな。似合ってると思うぞ月野。それと、大柏お前もな。」


これは満点ではないだろうか。

月野を褒めるだけでなく大柏も褒めることにより後で怒られる可能性を減らせる一石二鳥の作戦である。


「ありゃりゃー。むぅー的には嬉しいけどーそこの子的には0点かもー。」

「全くもって同じ意見よ。」


2人揃って、その残念そうな顔をやめてくれ。

困っていると助け船がきた。


「拙者は?拙者の服はどうでござるか?」

「俺も今日は張り切ってるぞ歩どうだ!」

「キリにぃ、私は私の服はー?」


普段ならそのノリが面倒だと感じるが今は感謝しかない。

月野と増本との自己紹介をみんな終わらせると集合時間ぴったりになった。


「そろそろ今日の計画を発表しまーす。今日はーボーリングに行くんよぉー。」


大柏が休みの日にスポーツとは意外だ。

最後にボーリングをしたのは小学校以来だな。

どんな結果になるのか楽しみだ。


駅からそこまで遠くなかったのでボーリング場にはすぐ着いた。

日朝兄妹は慣れた様子で受付を済ませてくれる。


「よし、張り切っていっちゃおーー!」


灯がはしゃぎながらボーリングの玉を選ぶ。

スムーズに進められるようにレーンを2つに分けて取ってくれたようだ。

同性の方が話やすいだろうということで男女に分かれてすることにした。


「蛍殿、霧道殿。拙者は負けず嫌いでござる。いくら遊びとはいえ真剣にやらせてもらうでござるよ。」


蛍も嬉しそうにしながら玉を運んでいる。

普段は俺が熱くなるタイプではないので王馬のようなタイプが嬉しいのだろう。


「言っとくけど俺はボーリングめっちゃ上手いんだぜ銀丸!」

「開始前から熱くなりすぎだ2人とも。怪我だけはないようにしとけよ。」


そして男性陣の熱いバトルが今始まった。


40分後、そろそろ終盤をなってきてた。

俺は2人の戦いについていくことすらできなかったので、今回の目標はストライクをとることである。

王馬と蛍は、ラストのストライクを取れるかどうかの勝負になっていた。


「まずは俺からだな。覚悟しとけよ銀丸。うおぉぉーーー!」


勢いのあった蛍だが、あまりに勢いがあり手元の玉が滑ってしまい結果は7本。

ここは負けられない王馬が玉を持って構える。


「いくでござる!”竜王の時間 初級 二歩の間合いにほ まあい”」


あいつ負けたくないからって能力を使いやがった。

歩攻よりも威力はかなり低いがそれでもよくないだろ。

王馬が放った技は爽快にピンを弾いていき結果はストライク。


もちろん、蛍は納得がいかないようで講義を始まる。


「あぁーーー!今、能力使っただろ銀丸!反則だ反則!」

「なんのことか分からないでござる。」


おい、知らないフリしても無理があるだろう。

そこに灯がやってきて注意する。


「コラー!お兄ちゃん達大きな声で叫ばないの!」

「俺は叫んでないから一緒にするなよ」


まるで俺までうるさくしていたみたいじゃないか。

俺は静かで優等生なのに。


「霧道君も注意してないからー同罪かもぉー。」


こういう時だけまともなことを言い出すな大柏。


どうやら女子同士のボーリングは、お喋りもゲームも盛り上がったらしい。

次は、男女混合でゲームを進めていき最後までボーリングは楽しむことができた。


結局俺はストライク取れなかったけど。


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