第一章「蜘蛛の糸」2

「どうして受けたの?」

 二人きりになって、芹菜が問いかけてきた。

 芹菜が優斗の左手を掴んでいる。

 優斗は、長く息を吐く。

「役には立たないかもしれないけど、マイナスにはならないと思って。ほら、別に今抱えている他のものがあるわけでもないしさ」

「それはそうだけど、私はあんまり賛成しない」

「どうして?」

「なんだか、危険な雰囲気がする。喧嘩の仲裁とは違うよ、人が一人いなくなっている。単純な家出だったらいいかもしれないけど、事故の可能性も事件の可能性もあるよ、誘拐だったら私たちが余計なことをして犯人に刺激をしてしまうかもしれない」

「単なる家出かもしれないし」

「それならいいんだけど」

 優斗がパンっと手を叩いた。

「それじゃあ、役割分担をしよう。芹菜はやっぱりいなくなった彼女の周辺の聞き込みかな。それくらいなら変なことにはならないだろうし、もちろん、警察がやっていることでもあるだろうから実入りは少ないかもしれないけれど」

「わかった。さっきの彼女に色々、交友関係とか聞いてみる。優斗は?」

「僕は、こっちの線で探してみようかな」

 優斗はひらひらと、預かった『神様』の紙を揺らす。

「芹菜も聞いて回るついで情報を集めてほしい」

「どんな?」

「うーん、今思いつくのは、ていうかさっき聞いておけばよかったな。この紙は複数存在するのか。他の紙は同じ並び順なのか。作り方が決まっているのか、あるいは特定の誰かから手に入れているのか。かな。僕から彼女に聞いてみるけど、他の人も同じ状況だったか知りたい」

「わかった、優斗」

「じゃあ随時連絡を取り……っと」

 芹菜が優斗の前に立ち、胴に手を回し、抱きつく。

「充電」

「うん」

 優斗も手を芹菜の胴に回した。

「また明日ね」

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