大文字伝子の休日31改
クライングフリーマン
『火事場のクソ力』
========= この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字(高遠)学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。EITOと連携を取って仕事をすることもある。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は警部。みちるの夫。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築事務所に就職し、演劇活動は休止している。
服部源一郎・・・伝子の高校のコーラス部後輩。シンガーソングライター。昭和レトロなレコードを探して、伝子達に紹介している。
服部コウ・・・服部の妻。夫を何とか音楽家として世に出したいと願っている。
==================================================
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==
午前11時。伝子のマンション。
高尾山の闘いから2日過ぎていた。
高遠は、DDメンバーとLinen会議をしていた。
物部が言った。「愛宕氏が表彰状?」
「愛宕さんは、区長達を救出しに高尾に行ったことになったようです。まあ、マスコミ向けですね。区長達も感謝状出してくれたらしいし。」と、高遠が言うと、「出世するの?って警視に尋ねたら笑われたよ。」と、依田は言った。
「ヨーダのホテルのバスが区長達を連れ出す時に利用されたってことは、前に利用したことがあったのかな?」と、福本が疑問を口にすると、「利用していた。何度かね。それで、第3駐車場にいつも駐車していることを知っていたらしい。」と依田が応えた。
「時系列で整理するとね。伝子さん達が鬼子母神堂で闘った頃、高尾山登山口付近の坂道で自転車同士の正面追突事故が起こったらしい。亡くなった62歳のヘルメット無着用の男性の家族が、SNSの誹謗中傷に耐えかねて、葬儀が終った後すぐに生活安全課に相談に行ったらしい。橋爪さんが受け付けた案件だけど、愛宕さんは気になっていた。」
「あの朝、女性物真似タレントで、御池都知事の物真似が出来る女、来栖あきほが御池都知事の物真似をして区長達を呼び出した。同じ頃、連れの男、マネージャーだっけ。轟次郎がヨーダのホテルからバスを盗み出し、各区役所を回って区長達を連れ出した。だよね?」と、福本が続けた。
「うん。轟が高尾に向かった後、来栖が車で高尾に向かい、事件現場をうろつく愛宕さんに出くわした。来栖はスマホで轟に連絡をした。轟は、部下の、『葉っぱ』の連中に区長達を縛ってトラックに押し込んでおくことを命じて、坂道まで戻って来た。来栖は、車に積んであった布で三角巾を作り、愛宕さんに声をかけた。事故の当事者を装って。亡くなった人に手を合わしに来た、と言って。愛宕さんの隙を見て、轟は後方から襲った。愛宕さんは目を覚まして、状況を知った。」
「橋爪さんは、他の用事でもあったの?」「うん。出掛けてた。実は、その事故の遺族の家に線香をあげに行ってたんだ。署に帰ると愛宕さんから連絡がないままなので、署長に相談した時、みちるちゃんが帰って来た。事件に巻き込まれたに違いない、ということで、署長は捜索隊を組んだ。ブラックスニーカーから挑戦状が来て、伝子さんは段取りを組んだが、その直前に愛宕さん失踪の事を聞いていたので、結城さん達警察からの出向組を捜索隊に送り込んだ。」
「夕方から雨が降り出したんだよね。」と、服部が言った。
「翌日、出直すことにしていたが、やはり橋爪さんは気になった。そこで、署長に直談判した。山の天気は変わりやすいし、冷えやすい。署長は、可愛い姪の婿でもある愛宕さんを案じて、EITOにオスプレイ貸与を依頼、自ら陣頭指揮を執った。」
「全てが一つの方向に向かった、ということですね。」と、コウが言った。
「来栖と轟は下山していた。『葉っぱ』の集団もだ。助け出された時、女性警察官がずぶ濡れのまま、男性警察官に抱きついた。区長達は、いい映画を見せて貰った、と言っている。」
高遠の説明に、伝子が口を挟んだ。「翌日、皆と高尾に向かった時、一番張り切っていたのはみちるだった。朝まで『子作り』していたそうだ。目が血走っていた。」
「一つ疑問があるんだが、愛宕氏は、事故の女の顔とか名前とか知らなかった訳か。」と、物部は言った。
「そうなんですよ、副部長。まあ、仕方ないですね。本来自分の引き受けた案件じゃなかった訳だし。」
「流石、小説家ね。まとめるのが上手いわね。」と、あつこの声が聞こえた。
「あれ?警視。いつから参加してたの?」「余田君の会社のバスは、盗む予定だった、とかいうところから。」「なあんだ、初めから聞いてたの。」
「依田君、ホントに盗まれたこと気づいてなかったの?」「うん。橋爪さんが、区長達を送って行って、ホテルに乗り付けた時は、びっくりしたよ。慶子にビンタされた。『この間抜け』って、怒鳴られて。それで、愛宕さんの表彰式は?」
「とっくに。朝イチに変更になったの。もう、みちるも愛宕君も帰ったわ。半ドンで。お楽しみの時間ね、オトナの。」
「あつこ。おしとやかに頼むよ。何か用事があるんじゃないのか?」と、伝子は言った。
「ブラックスニーカーから連絡があったわ。New tubeで。見事な作戦だ、って褒めてた。次の事件のヒントはなし。ねえ、おねえさま。那珂国の兵隊って、どれくらいいるのかしら?高遠さん、分かる?」
「無限大、ってことは無いだろうけど、幾らでもなり手はいるんじゃないかな?人口多いし。傭兵だよね、多分。」と高遠は応えた・
「さっきの話だと、我々の闘いの時に、既に準備が始まっている感じね。まあ、自転車の事故は偶然だろうけど。」
「そうだよ、警視。ブラックスニーカーは『絶対勝ってやる』なんて思っていない。今までの幹部とは、『幹』とは違うね。クリアする積もりのないゲームをやっている。だから、敵が付ければ強い程、面白い。」
「とんでもない奴。厄介だな。」と、伝子が言った。
「そろそろ、お開きにしますか、副部長。」と、高遠は言った。
「ああ、もうすぐお昼だな。また、何かあったら連絡してくれ。」
高遠は、Linenを終了した。
正午。伝子と高遠は、おいなりさんと、ざるそばを食べた。「何で、ざるそばと、おいなりさんはセットなんだ?」「知らない。今度、藤井さんに聞いとくよ。」
「あ、そうだ。森さんが、アパートやめようかな、って言うから、EITOの新人入れて、女子寮みたいにすれば?って藤井さんが提案して、乗り気になったそうだよ。」
「ああ。ヨーダが出て、蘭ちゃんが出て、上の階の人も出ちゃってるから、開店休業か。いいんじゃない?で、誰が入るの?」
「上の階に伊知地満子二曹、葉月玲奈二曹、越後網子二曹、下の階に小坂雅巡査、下條梅子巡査。宿直の時以外は、アパートに。宿直室、そんなに数無いから、二段ベッドなんだ。自宅からだと何かと不便だしさ。今、見に行ってるよ、みんな。」
「この上ない住人だね。家賃滞納可能性無し。セキュリティ抜群。いい斡旋したね。」と、高遠は賞賛した。
「そうそう。斡旋と言えば、鈴木校長が、教師辞めた人、再就職先探している、って言うから、南原の学習塾勧めておいた。腰掛けでも助かる、って南原が喜んでたよ。」
「それも、いい斡旋だね。」「ねえ、。学さん。今夜、斡旋して欲しい案件がるんだけど。」
「どんな案件?」と、玄関から入ってきた、綾子が言った。
「しまった、聞かれた。」2人は見合って、揃って舌を出した。
午後2時。森のアパート。
伝子の勧めで、伊知地満子二曹、葉月玲奈二曹、越後網子二曹、小坂雅巡査、下條梅子巡査は森のアパートに下見に行くことになった。以前住んでいた、依田も蘭もやって来ていた。
「まあ、一人暮らしには不便ないよ。意外と広い・・・。」
案内していた依田は言葉を呑んだ。
燃えていた。森が最低限の荷物を持ち出したのか、荷物を持って、おろおろしている。蘭がすぐに救急車と警察を呼んだ。
依田は、長波ホイッスルを吹いた後、DDバッジを押した。森に事情を聞いた。
小坂、下條は付近の家の住人に避難を呼びかけた。そして、野次馬達を遠ざけた。
裏手に回った、伊知地、葉月、越後はアパートの中で、火を点けまくっている男達を見付け、引っ張り出した。
火の勢いは、男達が放火しまくった為、延焼は早かった。伊知地達はバケツリレーの為の道具を探す余裕が無くなった。
MAITOが飛来して、消火弾を落したが、ほぼ全焼した。
男達は、走り去った。小坂は、カラーボールを男達の1人に投げた。今回は命中した。これで、見失っても、跡を辿れる。
伊知地、葉月、越後、そして小坂と下條は男達を追った。
男達は、路地を駆け抜けたが、5人は追いついた。
男達が更に逃げようとすると、立ちはだかった者がいた。伝子と飯星だった。
「よくも焼いてくれたな、地上げ屋さんよ。」と、ヘルメットを脱いだ伝子は言った。
「こっちのトシマからやっちまえ!」地上げ屋は余計な一言を言った。
「ト、シ、マ、だとぉーーーーーーー!!」この言葉はタブーである。伝子の未知のパワーが全開するからだ。暴走した伝子を止めるのは大人3人がかりでも難しい。
伝子は、たった5分で5人の男を素手で倒し、交互に殴り始めた。どの男も顔面が腫れ上がり、身動き一つ出来ない。しまった、と飯星は思った。何も救急道具を持っていない。咄嗟に体が動いた飯星は、フライングヘッドシザースを伝子にかけ、更に『4の字固め』をかけた。
駆けつけた依田がカウントを取った。「ワン、ツー、スリー!」
飯星は伝子から体を離した。流石の伝子も延びている。
新人の5人のEITO女子隊員は、何も言えず見ていた。
蘭が、愛宕と橋爪、警官隊を連れてきた。
飯星が、伝子の顔を少し叩くと、伝子は起きた。蘭と依田が、顔を覗き込んでいる。
伝子のスマホが鳴動した。蘭が伝子のスマホを取り出し、伝子の耳に当てた。
「おねえさま。今、どこ?こちらの火災はMAITOが来て鎮火しました。」
伝子は、他にも火災があって、EITOが出動をしてことを悟った。
なぎさの声だ。「似たような状況だ。」と、適当な返事をした。
森は、「意気消沈してると思った?ちゃんと火災保険は入っているわ。地上げ屋が、実力行使するとは思っていなかった。でも、すっきりした。行動隊長。EITOで責任持ってセキュリティーの工事、お願いね。あなたのマンションみたいに隙がないようにするのよ。」
「了解しました。」と、返事をした。
「先輩の『火事場のクソ力』のことは説明しておきました。素直に受け入れてくれましたよ。先輩がここに向かった後、神山田消防署が火事になりました。高遠の機転で、なぎさちゃんに任せたようです。あちらも鎮火したようですが、こちらは全焼ですね。」
依田の簡略な説明に伝子は納得が行った。バイクで、このアパートに来る途中で着信があったのかも知れない。それで、連絡を受けた高遠が、このアパートに向かっていることを伝え、理事官は伝子抜きで出動させたのだろう。
「お前もご苦労だったな、ヨーダ。アパート、前の面影無くなっちゃったな。」
「僕はちゃんと写真は撮ってありますよ。」「いい後輩だ。」「先輩の後輩ですから。」
2人はクスクスと笑い出したが、やがて大きな笑い声になった。
飯星と新人達は、微笑んで見ていた。
―完―
大文字伝子の休日31改 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
下品!!/クライングフリーマン
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます