【プロローグ-2】魔族採用担当

ある魔界にて。


男は何かの来訪を待つように砂浜で海の彼方を見つめていた。

闇を取り込んだようにどこまでも黒く染まった髪が海風で靡く。

金色の瞳、2本の角、そして尖った耳。その横顔はまるで彫刻のような美しさだった。


数刻して、男は海の中から近づいてくる気配を感じ取る。

視線を向けると、海面に大きな影が見える。そしてその影が徐々に砂浜へと近づいていてくる。


男は深く、そして上品に一礼し終えると影に向かって話しかけた。


「——こんにちは、株式会社 逢魔おうまの採用責任者ゼノ・フィールドです。

のクルル様、本日はインターンシップの面接へようこそお越しくださいました。」


ゼノと名乗るに応えるように、影の主が大きな水飛沫を上げながら、その巨躯を現した。


全長30m以上はあるだろうか。桃色の光沢ある表皮を纏う海洋生物。

柔軟性を感じさせる複数の触手をうねらせながら、愛くるしい目を向けてくる。

魔界では広く認知された巨大烏賊クラーケンと呼ばれる種族だ。


クルルと呼ばれるクラーケンは目をキョロキョロさせながら恥ずかしそうに答えた。


「こここここんにちは!く、クルルですう!よ、よ、よ、よ宜しくお願いいたしますう!」


——かくして魔族採用担当、魔人ゼノの面接は始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る