第13話 ルロァ篇05「ァリスの初恋」

 …○◇□……

 …▽☆△…

 …ぉき…て……。

 …ァリ……シァ…。

…どなた?ワタクシの名前を呼ぶのは?

その優しく、気品溢れる声は?

あぁ、眩しいぃ。

もぅ、朝なのね。

 ……さぁ…起き…

 …お眼醒め…時間…よ。

声のする方にすっと手を伸した。

目を開けるとそこにまるで…。

シャトゥレに彫られてあった大天使ミカィル様のように美しい人が、ワタクシを心配そうに見ている。

まだ、夢を見てるのかしら?

!!

抱きついてみたけど、夢じゃないみたい…?

 え?ァリシアティーヌ嬢? 

えっ?

目の前にいる、ブル・ド・ロヮイェの髪をしてリネェをかけている方は現実なのっ?!

「ァリシアティリィヌ様!!」

「あぁ!ァリス‼︎

やっと起きたのね、すっごく心配したわ!

……この人は治療師でワタクシの友人モアよ。」

モア様って仰るの⁈

なんて素敵な響きのお名前‼︎

何⁇

なんなの⁈

この気持ち⁈

こんな気持ちは始めて…。

プティシュシュルゥのような肌。

美しいブル・ド・ロヮイエ色の髪。

リネェで知的に隠しているプティッシュな顔。

ルビィ・キャラメェルの目がキンカラリネみたい!

不思議そうにこちらを見ている。

「ァリス?」

「あゎ、シェルリィヌっ?!

ご心配おかけしてすみませんでした。」

危ないわ。つい、夢中に。

あら?

おかしいわ?

足が動かない?

「シェルリィヌ…おかしいわ。足が動かないの!!」


ーー魔術が解けてない⁇

しくじるはずがないんだけど…⁇

眼は醒めてるし⁇

レースのクロスを捲る…。

!!

……日に当たらなかった白い脚には、脚先から膝に向かってマンカァを落とした様に、闇が広がってる。

ーー「これ」は少し厄介かも…?

この呪いはファロン家のとは違う。

もっと濃い呪い。

今すぐ、どうすることも出来ない。

 大丈夫です。ァリシアティーヌ嬢。なんとか、してみせます。

「本当ですか?!最後までちゃんと診て下さいね!?」

ーー…流れ的にね。

だから、そのがっちり掴んでる手を離して。

でも、ィライウォスには来るなって言われたし…どうしよう…?

いちいちこっそり出入りするのは面倒だし。

ァンがどう出るか…?

 ァリシアティーヌ嬢の眼は醒めた事ですし、私は一旦帰りますね。

では、また。

ーー不安そうな顔をこっちに向けてる。

そうだろう。

彼女は、これから脚が動かない生活をするんだから…。


 どうぞ

「モアァァ…!!」

「…モア様っ!」

ーー帰り支度をしていると、ァンとジャンジャックが部屋に飛び込んで来た。

「モア!本当に本当にごめんなさい!!

まさか、ィライウォスがあそこまでするなんて! 

もぅ、来てとは言えないわ…。

でもッ!!」

 いいですよ。あぁ言う扱いをされるのは慣れてます。

「ァリシアティリィヌ様への治癒はどうしましょう?!

目は覚めていらっしゃるし、脚は動かないけど…元気。

きっとモア様にしか、今の事態は理解できないでしょう。」

「ァリスにはモアが必要よ!!

どうか、あの子を治してあげて!!」

ーーこれで、依頼は正式にァンからとなった。

「でも、ィライウォスにはわかってもらえないわ…。」

ーー確かに…面倒な事になった。

もう1つの呪いまで流れ的になんとかする事になってしまった…。

どうしよう。 

…ァリシアティーヌをどこかに移せないかな。

 ルロア家は他にお持ちの建物はないですか?

ァリシアティーヌ嬢に療養してもらえそうな所です。

「ありますが??」

 では、どうでしょう?

しばらく、そこにァリシアティーヌ嬢だけ移っていただくのは⁇そうすれば私は、ィライウォス様に出会ないで済みます。

「それがいいわ!ワタクシ、すぐィライウォスとシェルリィゼに話すわ!!」

「では、私は引っ越しの手配を!!すぐに!」

ーーよし。

これでなんとかなったな。

帰ろう。


ーー眩しい…。

ルロア城を出る頃には昼になっていた。

昼間の外を眺めるなんて…いつくらい経つだろう?

噴水の水面が反射して、光が揺れる。

禡車が、右へ左へ進むたびに景色は変る。

木の葉は緑色で花々は色鮮やかに咲き誇る。

道行く人々の装いも興味深い。

今まで見てた景色と違う!

ーーなんだろう、この感じ…⁇

…太陽を受け入れて、何かが変わった気がする?

…何だろう…?

ーーやっと、お馴染みの通りに…ルロア家との差が激しい。

店先には、ソレイュとコリィヌ。

忙しそうにテーブルを片付けてる。

「おう、モア!おかえり!!」

「モア、おかえりなさぁい!!」

ーー相変わらず、花びらが舞ってそうで厚くるしいな…この2人。

「予定より早く仕事終わったんだな!」

 あぁ。調べて診たら、簡単な仕事だった。

「荷物置いたら、店寄れよ!

ショコラ〜テ飲むだろ?」

ーーソレイユがにかにか笑顔を向けてくる。

…〜ッ。

…ショコラ。

天秤が揺れてしまう言葉が。

 …わかった。

!!

「あぁッ!!」

ーー音のした方に振り向くと、コリィヌが皿を落としていた。

「待ってろ、フリィナとプシェッリシュ持って来てやる!!」

「あ。痛ッ!!」

!!

ーー目の前の景色が歪む。

おかしい。

視界が狭くなってく…。

何これ⁈

まずいッ‼︎

…原因は「これ」か?

 傷口をこれで押さえて。

治まってきた…。

「…ぁ…モア!ありがとう!!」

ーーやたら、コリィヌが見つめてくる…熱を感じる。

何?

何故?


ーー上から脚音が聞こえる…?

確か…この前、燭台とお菓子をくれた確か…エマ。

「あら、モア元気??

この前のモヮルゥ・ショコラは気に入った?」

 あぁ。

「良かったわぁ!

焼いたらまたあげるわねぇ!」

 ありがとう。

ーー「あれ」また貰えるんだ‼︎

螺旋階段を4階まで登って、自分の部屋のドアを開ける。

右手の扉を開ける。

荷物を置いて、腰掛ける。

ーー…行かなきゃダメ⁈

行きたくない…‼︎

面倒くさい…‼︎

でも、ショコラ…。

はぁー。

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