第10話 ルロァ篇02「赤いヒナギク」
ーー時間を潰すのに苦労するな…。
もう、眠り鎮まった時間だし、城を回ってみようかな。
ーーん?
同じ飾り…。
て、事は同じ様な部屋の可能性が高い。
どこか違う飾りの扉はないかな?
……。
ーー見つけた!
違う飾りの扉…部屋には誰もいない。
指を弾く。
瞬く間に全ての蝋燭に火が灯る。
ーー本がいっぱい…。
図書室かな。
猫の本だって。
…へぇ、こんなに種類がいるんだ?
…髭って触覚みたい⁇
…興奮した時に前に寄るのかぁ。
ーー面白い。
……へぇ。
……ふぅん。
……ほぉう。
ゴ ゴォォォン ゴォォォン
ーーあ、夜明けか…。
波打つように人差し指から手を閉じると、瞬く間に灯りは消えて薄暗くなる。
ーーこれは、結構時間を潰すのにいぃな…。
1冊借りて行こう。
「猫」は終わったし…次は「犬」にしよう。
…面白そう…これを借りて行こう。
ーー朝方は誰かいるかも知れない、慎重に戻ろう。
もう少しで自分の部屋…。
!!
ーー誰っ⁈⁈
いきなり、向かいの扉から現れるなっ‼︎
慌てて、持ってた本を部屋に滑り込ませた。
「…!…ぁ、モア様。ヴォン・ジュウ。」
…ヴォ・ジュ〜。
ーー怪しまれてないかな?
何も言われてないし、問題ない…?
まぁ…いいや。
眠ろう。
「リサヴィリィナ様、ご準備はよろしいですか?」
ええ。
・
どうかしら?
「ぉお美しい!!
マロォメの髪、プティシュシュルゥの様な肌、フランボヮの頬と唇、モゥヴ色のカァド、品格ある佇まい、完璧です!
驚きました。」
ぅふふっ。褒めてくれて嬉しいわ。
「では、どうぞこちらへ。」
ーー結構、招待客いるんだ…?
…苦労しそう。
まぁ、夜は長い。
「こちらがスヮントでございます。
今夜は、ルイズとお名のり下さい。」
ありがとう。
ーーどこから行こうか?
令嬢達の噂話に混ざるか、招待客の男達の自慢話を聞くか。
どちらも面倒そう、壁の華になりに行くか。
「あらぁ??
初めて見るお顔ねぇ?」
ーーけばけばしい女…情報は引き出せそうにない。
ァン・シャンテ。リサヴィーナ・ルイズでざいます。
「まぁ、可愛らしい。
どちらのノゥジェルの方?」
ルロア家の遠縁にあたります。
「?!!わたしのモンフェルに会って下さる?
どこに行ったかしらぁあ。ぁぁ…あ、いたわぁ!」
ーールロアの名前を出したから、甘い蜜が吸えると思って食い付いて来たな。
でも、ざんね〜ん。
そんな人間は存在してませ〜ん。
「ダンテ、紹介します。
リサヴィリィナさんよぉ!」
!!
「は、は初めまして。」
ーー声、震えてるけど?
紹介されたゎいいけど、会話できる?
ァン・シャンテ。ダンテさん。
「ほらぁあ!!!一曲、ダジェントして来なさいぃ!」
行きましょう。ダンテさん。
ーー手のかかる奴だなぁ…。
とりあえず、話始めるのを待ちながら、踊る…。
…。
…。
緊張しているの?
ーー我慢できない。なんなのこいつ。
「ぁ…貴女があまりに綺麗だから。」
ぅふふっ褒めてくれて嬉しいわ。貴方も素敵よ。
「ぁ。私はダンテリオン・ルゥセル。」
私くしは、リサヴィーナ・ルイズ。
ーー念の為、情報はないか探ってみるか…。
私くしに会うまでは、どなたとお話ししていたの?
「サラザィル・ノゥジェルの、ジャスティさんと話していました。」
どんなお話しを?
「実は…良い細工師と石材所を内緒で教えてもらったんです。
今度、ちょっとしたものを作らせてみようかと。」
そうなの?よかったわね。
ーー収穫なし。撤収‼︎
…普通ならこの話を広げる所だけど、興味がない。
適当に他の男にも聞いてみよう。
お会い出来てよかったわ。ダンテさん。じゃあね。
「あ…ぁぁ。」
「ぁの!次は…私と!!」
「ィヤ!私と!!」
「ぃいや!私と!!」
ーーなんか急に誘われ出した。
何故…⁇
まぁ、いいけど。
ーー無駄な時間過ごしたなぁ。
あれから、3人と踊ったけど…まだ収穫はない。
ごみごみしてる会場を、うろつく。
手を取り合う奴、楽しそうに話す奴、酒を酌み交わす奴…。
「くそぉおッ!!ァンジェリカの心さえ手に入れば、ルロア・ノゥジェルは私のモノだったんだ!ゴゥディも決まっていたのに!
いきなり断わられてしまった、と思えば…イラィウォスなんかに!!」
「まぁまぁ!飲み過ぎですよ…。デリィック様…。」
「イラィウォスって、気位いが高くて、気難しいって有名だったよな。」
「口うるさくて、いちいちムカつく奴だったよ。アイツ嫌い。」
「せっかくェキュリァンになるいぃキッカケ作りだと思ったのにィイ!
プチ・ブルメルが「任せろ、恋のまじないをかけてやるぅ」と言ったから信じたのに、信じるんじゃなかったぁあッ!」
ーー何?何⁈
待ちに待った情報っ!
誰⁈話してる奴⁈
!!
後ろを振り向いた、と同時に誰に手を掴まれた。
ダンテ⁈
「リ、リサヴィリィナさん、…少し散歩に行きませんか?」
…ええ、いいですよ。
ーー''ッ‼︎
邪魔しやがってぇっ‼︎
せっかくの情報だったのにぃ‼︎
…。
…。
…。
ーー会話なしっ⁈
''ッ。
何故、散歩に誘った⁈
後ろを歩いていたので、崩れかけた顔は見られていないだろう。
でも、こっちも顔色が読めない。
ダンテがいきなり振り返り、手をわしっと掴んできた。
「ぁ…ぅ…リ、リサヴィリィナさん!!ゎわ…私とマリァジアして下さい!!」
?
ーーは?
何?
なんて言った?
…とにかく嫌に決まってる。
益々、崩れそうになる顔をなんとか保つ。
ダンテさん、いきなりどうしたんですか?
「は、初めてお会いした時に、貴女だと心に決めました!
貴女は突然、私の前に舞い降りたぁ!
そう…貴女は、ミカィルのヴィナス!私をぉ幸せへと導いてくれるのですぅ!!」
へ、へぇ。
ーーあ、この展開なんかまずい気がする。
「ぁ貴女を、他の人に獲られたくありません!!」
!!
ーー迫られて。
気付いたら、背中に扉…‼︎
・・
ぅ、うわ。
後ろの扉が開いて倒れてしまった。
考える間もなく、男が覆い被さって来た。
「もぉ…貴女は私の物になってもらいましょぉ!
リサヴィリィナさん!…いや、リィサと呼ばせてくれ。
ハァ…ハァ…ハァ。」
ーーヤメロ‼︎気持ち悪いッ。
両手を封じられ、頬擦りされる。
振り解くのは、簡単。
ゃぁ、ぃや!
「ぁあ、なんて可愛いんだ…。」
ーーしかし、今日はルイズ家の令嬢でいなくてはならない。
余計な記憶は作って置きたくない…。
淑やかに、か弱く。
ま、待ってぇ。ゃやめてぇ!
?!
ぅっんんぅ…。
ーーぅゔぁ。
下手過ぎる、気持ち悪い。
なめくじが這ってるよう…。
でも、ここまでの記憶さえあれば後は夢だと思うだろう。
ぅう''あ''ーっ‼︎太腿を撫でるなぁっ‼︎
限界ーっ''‼︎…眠ってもらお。
「ハァア、リィサァアッ!」
ーー早く眠れ‼︎
早く堕ちろっ‼︎
早くっ‼︎
男の身体から力が抜けて、男は眠りにやっと堕ちた。
ヴォン・ニュ〜…。
ーーあぁ''ー…気持ち悪かった。
とりあえず、カゥチに横たわらせて部屋出た。
大人しくもう部屋に帰ろう…。
「リサヴィリィナ様?」
!!
ーーこの声は…確か執事のジャンジャック?
いつの間に…。
「リサヴィリィナ様、奇遇ですね。もう、お部屋に帰られるのですか?」
ーー…後始末を任せて仕舞おう。
はっきり言って面倒くさい。
はい。お1人に手荒な求婚を迫られまして。眠っていただきました。
「それは、大変でしたね!
でも、リサヴィリィナ様ほどなら、あり得ない話ではないかと…!」
その方が西側の白い石の付いた扉の部屋にいるので、後をお願いしてもよろしいですか?名前はダンテリオン・ルゥセル。確か、母親がいたはずです。
「わかりました。お任せ下さい。」
1時間後に部屋へ。
「はい。」
ーー犯人は、ァンの心が欲しかった。
でも、ァリシアティーヌが呪いにかかった。
何故⁇
んん…⁇
とりあえず、ァンが逢うのを拒んだ相手を調べるのがいいか。
聞けばすぐわかるだろう。
ーーしばらく女の格好で夜会に出るのはやめよう…。
気持ち悪かったぁ…。
「モア様、宜しいでしょうか?」
どうぞ。
・
「なんでしょうか?」
ァンが逢うのを拒んだ相手の事が知りたいのです。
「ァンジェリカ様が逢うのをお断りになられた相手…?
……ぁあ!思い出しました!!
ファロン・ノゥジェルのデリィックリァン様ですね!」
ーー犯人はわかった。
貴族が魔術師を使うのは、ここでも同じか… 。
問題はァリシアティーヌが眠った原因だけど…。
そのデリィックリァンとはどんな人物ですか?
ァリシアティーヌ嬢と繋がる物は何かありますか?
「デリィックリァン様は、小さな頃からァンジェリカ様の事がお好きでたくさん贈りものしてくださいました!
その中にァリシアティリィヌ様も気に入られた物があった…気がします。」
ーー原因は「それ」だぁあ‼︎
明日「それ」を見せて下さい。
「わかりました。」
ーーん?
でも、なんで眠った⁇
まだお持ちですか?
「ええ、おそらく…?」
ファロン家についても教えてください。
「ファロン・ノゥジェルはプチ・ブルメルのオフェルスタからお付き合いのあるノゥジェルです。
皆さん信仰心が深い人だそうです。ァンジェリカ様とデリィックリァン様がお逢いなるのは、プチ・ブルメルが決められたのですが…。
ァンジェリカ様がィライウォス様に出逢われ…お辞めになられました。」
ーーファロン家。
黒魔術師を飼ってるんだから、どこが信仰心が深い…?
もしかして、用途で白と黒。
使い分けてた?
そうですか…わかりました。もう、下がっていいですよ。
「はい、それでは…今夜もティタニァに心を奪われませんよぅ…。」
?
ーーティタニァ⁇
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