第9話 ルロァ篇01 「デュティ」

ーーここは例えば、水中にいるみたい。  

脚はおぼつかなくて、感覚はぼやけてる。

どこにもいるようで、どこにもいない。

まるで、存在を認められてない、不安定な存在。

眼も耳も舌も、鼻に至っては全く効かない。

まぁでも、経験で補える…。

ーーはあぁぁ。

考えるの、やめよう…。

考えても仕方ない。

明日、問題なく過ごせたらそれでいい。

眠ろ…。

 


座るとしばらくして、すっとショコラを出された。

「モア〜!コレ、な〜んだ⁇」

ーーなんだろう⁇

ソレイュが、にやにやして紙をはたはた降ってる。

「仕事だ〜仕事。俺、すごくない!?」

ーー仕事⁈

この短時間で⁈

何を、どうすれば⁈

「ァンのノゥジェルからなんだ!ァンが、きっとモアの事を話してくれたんだろうな〜!」

ーー差し出し人はァンの家の執事、ァンの…妹が奇病にかかり。治癒師にもかかったが、効果がなく、原因もわからず。

末に「探偵」に頼む事に至ったそうだ。

「なんて書いてあったんだ?」

ーー原因がわからない。

面白そうじゃないか…!

 この仕事受けるよ。

ーー多目に見積もって7日くらい⁇

 ソレイュ、いろいろ入りそうなの貸して。それと7日くらい、いないからサンチェからの荷物受け取っといて。

「ぇ…ゎ、わかった!仕事頑張れ〜!

でも、なんて書いてあったか気になるな〜…。

部屋の扉を開けた所にたぶんあるから。ほら、鍵。」

 ここ、どこかわかる?

「ああ、ここから北へ1時間だ。」

ーーソレイュ…やっぱり便利‼︎


ーー何があってもいいようにドレスをトランクへ詰め込めておこう…。 

探偵の時は何故か、眼鏡をかけた方が信用されやすい。

ーー何故だろう⁇

すぐに、禡車に乗って向かうことにした。

仕事が来て退屈しなさそうでよかった…。


ーー北へ1時間…。

到着するまで退屈…本でも持ってくればよかった…。

どんどん雰囲気が変わっていく…。

アパルトマンが多い地区から街並みが変わる。

渡る橋の彫像にも貫禄が。

たまには街並みを眺めるのもたまには、悪くない…?


ーーここか…。

この辺りを治める、貴族の城って感じかなぁ。

「ヴォン・ソワァ。どちら様でしょうか?」

 ヴォ・ソ〜。お困りと訊いて来ました。モア・リシャールです。

ーー仕事用の笑顔は欠かさない。

「ほ!ほんとうに来てくださったんですね!

ァリシアティリィヌを助けてくれるかもしれない方は大歓迎でございます。

私は、ルロァ・ノゥジェル・シャンドルジュ、ジャンジックと申します。」

 彼女はどこに?

「こちらです。

ァンジェリカ様からお聴きしたのですが、治癒師でもあらせなさるそうで!!期待しています。」

 そうですか。それは、よかった。

ーー廊下長いな…。

長い廊下の間、執事は、ァンと妹がどれだけ仲が良いか語っていた。

中庭が広場になってる、行事とかやる時ここ使うんだろう。

肖像画が飾ってある。

ァンの絵も、もちろんある。

ァン⁈

ァンの絵が二枚⁇

「ここがァリシアティリィヌ様のお部屋でございます。

…ァリシアティリィヌ様です。」

!!

ーー似過ぎ。

ベッドに横たわる彼女は、ァンにそっくりで少し驚いた。

でも、ァンの絵で見たホクロがなかった。

 診てみます。

ーー脈は正常。

腕をすぅぅと、血管を辿って撫でる。

この違和感は何?

額に触れてみる。

ごぼ

ごぼん

ごぼ

ゆらり

きらり

ごぼっ

ごぼっ

ごっ

ぼぼっ

ーーなんか変…?

 彼女は、どのくらいこの状態何ですか?

「目が覚めなくなってもう、2ヶ月になります。初めは、眠い眠いと仰って…。」

……魔術の気配がする。

けど、ここでは魔術師はどういう扱い⁇

慎重に行動しないと。

 あの、魔術師の力を信じますか?

「昔は、扱える者もいたのですが今は少なくなりました…。」

ーーじゃあ、簡単に治してしまえば、まずいな…。

できるだけ時間を掛けとこう…。

 まず、彼女にはおそらく魔術がかけられています。

治らないはずです。治癒ではどうしようもないんですから…。

ーーこれのままじゃ時が過ぎてくだけ…。

「そうなのですか!?モア様!!

ァリシアティリィヌ様はどうなるのですか!?」

 私の家は裏稼業が魔術師なので、簡単な物なら私にも解く事ができます。時間はかかりますが、その間に犯人探しもしましょう。

ーー嘘。

話を作ってる。

ほんとはこの程度なら指を弾いて終わりだけど、怪しまれたら面倒くさい。

「本当ですか!?

ミリァナシェル様とァンジェリカ様に知らせなくては!

やっとァリシアティリィヌ様を助けてくださる方が現れたのですね!!め

よろしくお願いします!協力は惜しみません!!」

 これから、かけられてる術を調べてァリシアティーヌ嬢にかかった術を解きましょう。

「はい!!」

ーーすごく嬉しそう…。

今までほんとに誰もどうも出来なかったんだろうな。

じゃないと「探偵」には頼まない。

それにしても、ァンとそっくり…。

「今日はもう遅いので、お部屋に案内します。お食事はどうされますか?」

 食事は大丈夫です。

ーーあ。

たまたますれ違った女が、熱のこもった視線を向けてきたからこいつにしよう。

 この子を専属でつけてほしい。

「えっ!この方は?」

ーー聞くな。

説明がめんどくさいからッ‼︎

状況があんまり飲み込めてないうちに手駒にしてしまおう。

 嫌かな?

*:*

ーーさぁ、眼を魅て。

眼を魅つめる。

身を委ねて。

「ぃいえ。」

ーー逆らわず、言いなりなればいい。

気持ち良くしてあげる。

甘い時間を約束してあげる。

だから、ねぇ?可愛い私の仔猫?

「モア様がマリオンをご指名なら…。」

 後で、部屋に来て欲しい。用事を、頼みたいんだ。

「わかりました。モア様。」

「では、ご案内します。」

ーー…1、2、3、4…隣か。

「こちらでお休みください。」

 ありがとう。

ーー窓を開けたら、木がいっぱい植わってる。

丁度いい。

食事はこの先で埋めよう。

ーー……仕事らしくなってきたぁ。

犯人、理由は何⁇

得するのは?

身近に疑わしい人間はいるのか?

あぁ、情報が欲しい…。

!!

「マリオンでございます。」

 入ってくれ。 

ーーこの女はどこまで情報を持ってるだろう?

 ルロアの家の事、この家に関係する家、噂話し。君が聞いた事を教えて欲しいんだ。

「はい。」

ーー暗示を強くかけ過ぎたかな?

何?この熱い眼差し…。

 もちろんちゃんと出来たら、「ご褒美」をあげるよ。

どう?出来る?

「…はい。」

 それと、私は仕事中、邪魔されるのが大嫌いだ。

夕刻に1度、来てくれればいい。食事は1食ドアの所に置いておいてくれ。

では、ルロアの家の事から、今、住んでるのは?

ーー昼間はたぶん寝てるし、食事は埋める。

できるだけ、接点を持ちたくない。

記憶を改竄することはできるけど、いろいろ面倒だし…。

「ルロア・シャトゥは現在、シェルリィヌ様のァンジェリカ様とマリマジィアされたイラィウォス様がご当主になられています。

ァンジェリカ様、イラィウォス様、ァリシアティリィヌ様。

後は、ァンジェリカ様とァリシアティリィヌ様のシェルリィゼのミリァナシェル様がお住まいです。

そう言えば明日、ルロア・ノゥジェルにご関係がある方々を招いてスヮリィがあるそうです!」

ーー⁇夜会の事…?

情報収集にはいいかも。

 そうか。教えてくれてありがとう。では、君を私の所に行く様に指示した者を呼んでくれるかな。

『ご褒美に一歩前進だね。』

耳元でそう囁くと女は、慌てて部屋を出て行った。

ーーそれにしても、この家の家具はなかなか美しいな…。

この棚も彫り細工が素晴らしいし、あっちの机も足のとこまで飾りが素晴らしい。

あぁ、あの鏡も扉がついた棚も…。

!!

「モア様。お呼びでしょうか?」

 どうぞ…。

 明日、夜会があるそうですね?

「はい…?

…ルロア・ノゥジェルとご縁のあるノゥジェルから、これからご縁のあるかもしれないノゥジェルまで、皆様にお越し頂き、一晩楽しんで頂こうと言うスヮリィです。

アンジェリカ様のご提案です。」

ーーよくやった!

この夜会は情報が手に入りそう。

 それでは、私をルロア家の客として招いてください。大丈夫です。それなりの変装はしていくつもりです。

明日、私の事は、リサヴィリィーナと呼んでください。

部屋に迎えに来て会場に案内してくれれば、後は自分でなんとかするので…。

「わかりました。」

ーー聞いてみようかな?

 こちらの家具はどれも素晴らしいですね。何か理由があるのですか?

「はい。プチ・ブルメル様のご趣味だったのです。

ご友人に家具のご商売を家業にしてる方がいらっしゃって、集めてらっしゃいました。

宮殿からも注文があるらしいですよ。

明日は、「そんな」友人の多いルロアノゥジェルが皆様を招いてのスヮリィなのです。」

 そうなのですね、納得しました。

もう下がっていいですよ。 

では、また明日。

「それでは…甘い言葉にお負けになりませんよぅ…。」

 ?

ーー…さぁ、どちらのドレスにするかな?

ドレスを並べて比べる。

胸元が隠れるのと、出てるの。

…今回は情報収集が目的、色気はいらない。

こっちにしよう。

 !!

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