魔法・魔術・真なる法術

魔法・魔術・真なる法術について

目次

【第一項:魔法の定義】

【第二項:魔術の定義】

【第三項:原理とプロセス】

【第四項:簡易契約】

<詠唱・術式構築・魔法名・魔術名の必要性について>

<詠唱・術式構築・魔法名・魔術名の歴史について>

【第五項:例外】

【第六項:真なる法術について】

_____________________________________

【第一項:魔法の定義】

概要:『魔法』——それは、この世のありとあらゆる超自然現象を司る存在である『精霊』の力を、霊力マナを消費する事によって疑似的に再現したものである。

一般的に人間が使う魔法と呼ばれるものは、霊力マナの操作や詠唱、またルーン文字を使用した術式などを利用した簡易的な精霊との契約により、一時的に精霊の力を借りて行っているに過ぎない。

つまり、人間が直接その手で魔法を行使しているのではなく、人間の簡易契約に応じた精霊が、人間との簡易契約によって受け取った霊力マナを使って、自らが司る超自然的現象を引き起こしているのである。


——が、より詳しく言及すると、魔法を行っているのは精霊ではなく、彼ら精霊を産み出した母なる根源精霊——この世界そのものが持つ霊体アニマである『大いなる精霊グラン・ルヴナン』が魔法を引き起こしている。

魔法発動の際における彼ら精霊の役割とは、『大いなる精霊グラン・ルヴナン』と人間との仲介役であり、彼らが魔法の発動を受理し、『大いなる精霊グラン・ルヴナン』に魔法の発動を進言、人間から渡された霊力マナ大いなる精霊グラン・ルヴナンに渡すと、自動的に魔法が発動される。


また、ここで二つ・・気をつけておきたいのは、精霊は自我のある存在・・・・・・・であり、大いなる精霊グラン・ルヴナン自我の無い存在・・・・・・・であるという事だ。


その為、彼ら精霊がこの魔法の発動を受理しなかった場合、魔法は発動できない。

精霊は便宜上、『大いなる精霊グラン・ルヴナン』と魔法発動の是非に関する決定権を折半しているが、魔法を発動する『大いなる精霊グラン・ルヴナン』に自我は無い為、精霊から来た魔法発動の進言を自動的に再現するだけである。

故に、魔法発動に関する是非の決定権を持っているのは事実上は完全に精霊である為、全ての魔法を使う者の間には、『魔法を使いたいのであれば、精霊に嫌われてはならない』という共通認識が、古来より口伝やイディオムとして残っている。


だが、この魔法の発動に関する是非の決定権を無視し、『大いなる精霊グラン・ルヴナン』に直接的に干渉して魔法を発動できる例外が、歴史上には四件だけ存在した。

この四件に関する詳しい言及は、【第五項:例外】に記載する。




【第二項:魔術の定義】

概要:この世には、『悪魔』と呼ばれる者達が存在する。彼らは、精霊と同じく『大いなる精霊グラン・ルヴナン』の分霊であり、この世のありとあらゆる超自然現象……その根幹となる原子アトムの世界を司る力を持っている。


『魔術』とは、彼ら悪魔が持つ力を霊力マナを消費する事によって疑似的に再現したものである。


魔法と魔術は、よく混同されがちであるが、『精霊の力を再現したものか、悪魔の力を再現したものか』——というのが、魔法と魔術の名称を分けている。つまり、精霊の使う力を『魔法』、悪魔の使う力を『魔術』と呼称しているのだ。


また、魔術の原理は魔法と同じで、簡易的な契約によって行われるものである。

が、しかし……魔法とは違って、魔術では、詠唱やルーン文字による術式などは使用しない。魔術の発動は、ただ魔術の名称と、超高度な霊力マナの操作力、そして多大な霊力マナが要求されるのが、魔法の簡易契約とは異なる点である。


——また、魔術の魔法との違いは、もう一つ存在する。

【第一項:魔法の定義】において、“魔法を行っているのは精霊ではなく、彼ら精霊を産み出した母なる根源精霊——この世界そのものが持つ霊体アニマである『大いなる精霊グラン・ルヴナン』が魔法を引き起こしている”、という言及が存在するが、魔術に限ってだけで言えば、これは当てはまらない。

悪魔は精霊と同じく『大いなる精霊グラン・ルヴナン』の分霊であるが、分霊というよりも分身体に近く、『大いなる精霊グラン・ルヴナン』から独立した存在でありながら、限りなく『大いなる精霊グラン・ルヴナン』に近い存在である。『大いなる精霊グラン・ルヴナン』という巨大な霊体アニマを構成する一部と言ってもいいかもしれない。

その為、魔法のように魔法発動の決定権を便宜上でも折半しているのではなく、魔術発動の決定権の是非を悪魔は完全に有している。


だが、魔法と同様に魔術には魔術発動に関する悪魔の決定権を無視し、彼ら悪魔の力を行使できる例外が、歴史上には二件だけ存在した。

この二件に関する詳しい言及は、【第五項:例外】に記載する。




【第三項:原理とプロセス】

概要:第一項と二項でも少し触れたが、魔法・魔術を直接的に引き起こしているのは、人間ではなく、悪魔、そして大いなる精霊グラン・ルヴナンである。

人間の役割は、彼らが魔法・魔術を引き起こす為に必要な霊力マナの提供であり、霊力マナの操作技術や、詠唱、またルーン文字を利用した術式の構築は、特定の精霊や悪魔に働きかけるのに必要な補助のような役割を果たしている。


これらの魔法・魔術を発動するまでのプロセスは、魔道学と呼ばれる魔法・魔術を研究する学問の祖である古代の神学者——カインによって明らかにされている。

彼が後世に遺した魔道書グリモアである『始まりの魔道指南書ネクロノミコン』によると、人間が魔法・魔術を発動する際に消費した霊力マナは、大いなる精霊グラン・ルヴナンや悪魔が魔法・魔術を発動する際に使用され、彼らの意志によって、ある物質に作用し、超自然的現象を引き起こすと記されている。


真空物質エーテルと呼ばれるこの物質は、霊力マナと相互に強く作用し合い、あらゆる原子アトムに変化して超自然的現象を引き起こすとされ、これらの『霊力マナ』『真空物質エーテル』『精霊』『悪魔』『大いなる精霊グラン・ルヴナン』達による魔法・魔術発動のプロセスは以下のようになる。


~魔法~

①:人間による精霊との簡易契約。

②:①の簡易契約に応じた特定の精霊が大いなる精霊グラン・ルヴナンへ魔法発動を進言。この時、人間との簡易契約の際に受け取った霊力マナも一緒に渡す。

③:②で精霊から昇って来た魔法発動の進言に応じ、大いなる精霊グラン・ルヴナンが、精霊から渡された霊力マナを使って、真空物質エーテルに干渉する。

④:③で干渉された真空物質エーテルが特定の原子アトムに変化し、それぞれの精霊達が司る魔法が発動する。


~魔術~

①:人間による悪魔との簡易契約。

②:①の簡易契約に応じた特定の悪魔が、人間との簡易契約の際に受け取った霊力マナを使って、真空物質エーテルに干渉する。

③:③で干渉された真空物質エーテルが特定の原子アトムに変化し、それぞれの悪魔達が司る魔術が発動する。


このようなプロセスで魔法と魔術は発動されるが、上記で分かる通り、真空物質エーテルに干渉して魔法を直接的に引き起こしているのは、大いなる精霊グラン・ルヴナンであり、魔術を直接的に引き起こしているのは悪魔である。術者も、精霊も、他の存在は全て彼らに霊力マナを引き渡し、『この超自然的現象を引き起こして下さい』とお願いしているだけである。


では、なぜ大いなる精霊グラン・ルヴナンと悪魔にだけ、真空物質エーテルに干渉できる能力があるのか?


それは非常に単純明快であり、あらゆる精霊それぞれに自らが司る自然現象や事象が存在するように、彼ら大いなる精霊グラン・ルヴナンや悪魔にも自らが司る自然現象が事象が存在するからである。

その自らが司る自然現象や事象が、大いなる精霊グラン・ルヴナンと悪魔にとっては真空物質エーテルだからである。彼ら以外に真空物質エーテルを司る存在がいない為、自然と彼ら以外に魔法と魔術を真空物質エーテルに干渉できる存在がいなくなっている。


だが、ここで一つの疑問がある。

そもそもとして、大いなる精霊グラン・ルヴナンや悪魔と真空物質エーテルのように、精霊とそれぞれの自然現象や事象を結び付けているのは一体何なのか? という疑問である。


<原理の無いひも>

概要:上記の最後で『精霊とそれぞれの自然現象や事象を結び付けているのは一体何なのか?』という疑問を呈したが、これは魔道学においても誰も解く事の出来ていない難問であり、『原理の無いひも』という名前で現在でも議論されている。

この問題は魔道学だけに留まらず、生物学や物理学、あらゆる学術界隈で議論されている問題である。それというのも、この世界には何度も原理を紐解いていくと、最後に必ず『何の法則も原理も持たずに、そういう存在として、ただ存在するもの』にぶち当たるからである。


例えば聖神の三種の神器の内の一つである『光輪』などが分かりやすい。

光輪は、前述した全ての魔道法則を無視して、魔法・魔術を発動できる破格の神器である。だが、どうして光輪がこのような破格の力を発揮できるのかは、全く分かっていない。ただ『あらゆる存在に変化できる神器』という性質だけが、原理も法則も無く、ただ言葉通りに動いているのである。

魔法や魔術は一見、奇跡のように見えるが前述した魔道法則に従って動く……言わば、霊力マナを原動力とした化学である。その為、見えない世界ではきちんとした法則が存在し、この法則に違反しない限りは、法則通りの現象が起きる。


だが、世界には光輪を始めとした『過程を無視し、結果だけを持つ存在』というものが、思った以上に多く存在する。光輪を模した変身の大精霊や、前述した<原理の無いひも>、神の恩恵などもこれに当たる。


これに対しての言及として有力な説は一切出ていないが、遥か古代の文献——人類がまだ現行の世界に住まう以前の古代、邪神ウルの進行時……よりも以前の時代、人類がまだ文明というものを形成していなかった時代よりも尚、以前の時代のものと思われる『ゲニウス文書』という文献に言及が存在する。


文書曰く、この世には世界、或いは宇宙と呼ばれるものが存在するそれ以前、森羅万象が存在する前の一番最初に、『説明のつかない莫大なエネルギー体』だけが存在しており、この一番最初にあったものが自壊する事で、全てが誕生したとされる。


表象体パラ・ドクサ』と呼ばれるこれらの莫大なエネルギー体は、ある一つの特徴を持つと記載されている。

それは、『あらゆる法則を無視して、あらゆる結果を産み出す』というものである。

この文献の記載を信じる学者はほぼゼロと言っていいが、極一部の変人染みた狂気を持つ学者たちによって仮説が立てられ、<原理の無いひも>を始めとしたこれらの説明のつかないものは全て、この『表象体パラ・ドクサ』、そして、ゲニウス文書にも記載がある二つの存在——『表象体パラ・ドクサ』から分離した『霊象体ミュトス』と『実象体ロゴス』によって形作られているとされる。

この『霊象体ミュトス』と『実象体ロゴス』が何なのかは言及がないが、変人染みた狂気を持つ学者たちの憶測として『霊象体ミュトスは、霊力マナよりも小さい霊力マナ』、『実象体ロゴスは、真空物質エーテルよりも小さい真空物質エーテル』と言われている。


ただし、これらの仮説を立証する発見は一切出ていない。



【第四項:簡易契約】

概要:魔法・魔術を発動する際、霊力マナの操作、詠唱、ルーン文字による術式の構築、魔法名・魔術名の発声、という作業があるが、これら魔法・魔術発動の為に行われる精霊・悪魔との簡易的な契約作業を、魔道学においては簡易契約と呼ぶ。

精霊・悪魔との簡易契約の際、共通して行われる『霊力マナの操作』というものがある。ルネサンス期に魔法が普及した事により、一般的な市勢にも魔法を使う者が多くなった現代であるが、この『霊力マナの操作』というものが一体どういう事なのか? を理解している者は少ない。


この『霊力マナの操作』の定義だが、結果から述べると、『霊力マナの操作とは、つまり、霊力マナの振動数を操ること』である。


魔道学において、この世全ての霊力マナは一定の速度で振動しているとされているが、この振動によって霊力マナには『波動領域』というものが形成される。

そして、精霊や悪魔は数えきれないほど存在するが、彼ら全てに対応する特定の波動領域が存在し、人間が簡易契約の際、自らの霊体アニマに流れる霊力マナ霊力マナ操作によって特定の振動数で振動させることによって、精霊・悪魔たちの住まう特定の波動領域に繋がり、そこに住まう特定の精霊・悪魔の霊体アニマと、人間の霊体アニマとの間に霊的な門が出来る。


——では、なぜ精霊や悪魔は、特定の波動領域を形成すると場所も時間も条件も関係なしに反応できるのか? という、魔道学の難問である『反応問題』というものがある。


この難問は既に解決済であり、精霊や悪魔の本体がこの波動領域にあるからである。人間が特定の振動数で振動する霊力マナの波動領域を形成すると、霊力マナの波動領域に住まう特定の精霊・悪魔の霊体アニマと術者の霊体アニマとの間に、ある種の門のようなモノ――魔道学では、この門の事をパスと呼ぶ――が空き、術者の意思に、そこに存在する精霊や悪魔の本体である霊体アニマが反応できるようになる。

それによって、術者がパスを開く時に使用した霊力マナを消費して、精霊や悪魔が魔法や魔術を発動するという仕組みである。


これは、大いなる精霊グラン・ルヴナンも例外ではなく、対応する波動の領域が存在する。ただし、大いなる精霊グラン・ルヴナンの波動領域に合わせて霊力マナの振動数を人の身で操作できるのは、ほぼ不可能であり、精霊と悪魔以外では不可能とされている。これは、神でさえ例外ではなく、大いなる精霊グラン・ルヴナンに直接的に干渉できるのは、精霊と悪魔だけであると言われている。

だが、何事にも例外が存在する。

【第一項:魔法の定義】の後半でも触れたように、ここには四件の例外が存在し、この四件の例外については、【第五項:例外】に記載する。


また、人々が普段、本体と認識している可愛い姿をした精霊や悪魔は、実は本体が現実世界に干渉する為に造り出した仮初の肉体である。

彼ら精霊や悪魔には距離という概念が無く、一瞬で別大陸に移動する事が出来るが、それは霊力マナというものが世界中のどこにでも存在する為であり、自らの分身体を霊力マナのある場所ならどの座標にでも造り出す事が出来る為である。

彼らが『完全なる霊的波動体であり、波でもあり点でもあり、故に、どこにでもいる者達』と言われるのは、これが所以ゆえんである。


<詠唱・術式構築・魔法名・魔術名の必要性について>

概要:上記において、精霊や悪魔が特定の波動領域に住まう事を説明したが、この事実に従うのであれば、人間が魔法や魔術を発動させる際に必要なのは、霊力マナの操作技術と霊力マナの提供だけである。

極論で言えば、この霊力マナの操作だけで魔法や魔術を発動させる事が可能であり、元来、詠唱文やルーン文字による術式の構築は必要ない。実際、詠唱文や術式の構築を行わず、霊力マナの操作だけで魔法を発動させる無詠唱と呼ばれる高等技術を駆使する魔導士は存在する。


——では、なぜ詠唱文やルーン文字による術式の構築が必要なのか?


これは、魔法の歴史が深く関係している。魔法はその利便性から、あらゆる民族体系の文化で崇拝された歴史があり、詠唱や術式はこういった精霊崇拝アミニズムに基づく精霊を讃える祝詞のりとを起源としている。

つまり、魔法や魔術を発動させる分には、詠唱や術式は必要なく、極論で言えば霊力マナの振動数を操るだけで、術者と精霊・悪魔とのパスは開通し、魔法や魔術は発動する。


しかし、ある特定の魔法や魔術を狙って発動させたい場合に限り、それは別である。


精霊や悪魔の住まう波動領域は決まっている為、術者の霊力マナの操作技術が拙いと、発動させたい魔法・魔術を司る精霊や悪魔たちの霊力マナの波動領域に霊力マナの振動数を合わせる事が出来ず、特定の魔法や魔術を発動する事が出来ない。

霊力マナの操作が拙いと、結果として、別の精霊や悪魔の住まう波動領域に繋がってしまい、周囲を巻き込むような危険な魔法儘術が発動してしまう可能性がある。実際に、そういった事故は現在でも存在する。


そこで、こういった事故を防ぐ為に、拙い霊力マナの操作でも、狙って魔法を発動させる技術が魔道学の祖カインの実弟である四大英雄の一人——大魔導士アベルによって開発された。


——それこそが、詠唱文であり、術式の構築である。


詠唱文や術式の構築は原理自体は単純であり『精霊や悪魔に自我が存在し、ある程度は言語や文字による意思疎通が可能』という点を利用したものだ。

精霊一体一体に特定の波動領域が存在する事は、前項で既に説明したが、一般的に、ある一つの波動領域にパスを開くと、術者と意思疎通が可能な精霊はそのパスに住まう精霊だけであると思われがちである——が、実際には一つの波動領域は、壁の薄い部屋のようなモノであり、大きな声で叫ぶと、隣にいる住人も声が届いてしまう……つまり、一つの波動領域にパスが開通した時、そのパスが開通した波動領域と隣接した波動領域に住まう精霊は、隣の波動領域部屋にパスが開いている事を認識している状態なのである。


魔道学では、この『精霊が、隣接した波動領域にパスを開いている事を認識ている状態』の事を『精霊の隣人認識』、或いは単純に『隣人認識』と呼ぶ。


隣人認識の状態にある精霊には、詠唱文や術式の構築によって呼び掛ける事が可能である。仮に術者の霊力マナ操作が拙かったとしても、この詠唱文や、術式の構築があると、術者が発動したい魔法が、隣の波動領域に住まう精霊ではなく、自分である事を、隣人認識のある精霊に伝える事が出来るのだ。

詠唱文や術式構築の役割は、このように魔法の誤作動を防ぐ為に、特定の精霊との意思疎通を図る為の簡易契約の補助のような役割を担っている。


だが、ここで一つの疑問がある。

詠唱文や構築された術式の内容は多岐にわたるが、精霊は、どうやってこの詠唱文や構築された術式を自分に呼び掛けられたものだと認識しているのだろうか?


この疑問には次項である<詠唱・術式構築・魔法名・魔術名の歴史について>で、答える。


<詠唱・術式構築・魔法名・魔術名の歴史について>

概要:前項において『詠唱文や構築された術式の内容は多岐にわたるが、精霊は、どうやってこの詠唱文や構築された術式を自分に呼び掛けられたものだと認識しているのだろうか?』という疑問が呈されたが、結果から言うと、これは精霊と人間の長い文化的交流によって築かれた意伝子ミームである。

古来より、人間は神への崇拝以外にも、精霊信仰アニミズムによる精霊を崇拝する宗教を幾つも作り上げて来た歴史的背景があるが、こうした長い歴史で精霊と人間の間には、『この祝詞はこの精霊に捧げるもの』『この象形はこの精霊を表すもの』という共通認識が生まれ、この共通した意伝子ミームを背景として、詠唱文や術式の構築という技術が誕生した。


詠唱文に詩的な文章が多かったり、術式が非常に難解な図式であったりのするのは、こうした精霊に捧げる祝詞や象形を起源としているからであり、精霊側に『この詠唱は自分に捧げた祝詞』『この術式は自分を讃える象形』という認識が定着してしまっているからである。

魔導士たちの間で、よく詠唱文や術式の構築が『もっと簡単にならないのか?』という話題が上がるのに、全く簡単にならないのは、こうした精霊側の意伝子ミームが変わらないからである。

これは余談であるが、精霊の中には、精霊信仰アニミズムにより自分が崇拝されていた時代を引きずっており、威張り散らかす精霊がいる。そういった精霊は、どれだけ霊力マナの操作が正確で、詠唱文や術式の構築が必要なくとも、詠唱文や術式の構築を行いその精霊を讃えないと、絶対に魔法を発動してくれない。


また、上記で隣人認識にある精霊への魔法発動のアプローチの方法として詠唱文や術式がある事を説明したが、中にはこういった詠唱文や術式が、そもそも存在しない精霊がいる。

そういった精霊こそが、悪魔と呼ばれる者達である。

彼らには精霊信仰アニミズムを背景とした意伝子ミームが存在しない。悪魔への崇拝を是とする悪魔崇拝ディアボリズムは存在するものの、こういった悪魔崇拝ディアボリズムを背景とした詠唱文や術式構築の研究は歴史的に禁忌とされてきた為、悪魔との簡易契約による魔術の使用は霊力マナの操作だけで行う必要があり、魔術の使用は熟練の魔導士であっても非常に困難であるとされている。




【第五項:例外】

概要:第一項、第二項、第四項で示唆した通り、魔法と魔術には例外が存在する。

魔法発動には第一項で前述した通り、魔法発動に関する精霊の是非の決定権を無視する事はできない。それは、大いなる精霊グラン・ルヴナンが住まう霊力マナの波動領域に干渉できるのが、精霊と悪魔だけだからである。

だが、これはつまり、大いなる精霊グラン・ルヴナンの住まう霊力マナの波動領域に干渉できさえすれば、魔法は精霊の是非の決定権を無視して発動できるのである。

しかし、この霊力マナの操作力は砂の一粒一粒を抓み、それを積み上げ、一つの世界を創り上げるようなものであり、それを霊力マナの操作という存座市内手で行うようなもの。ハッキリ言って不可能である。


そこに至ったのは、たった一人の大魔導士と、たった一柱の聖神だけである。

また、例外中の例外として、霊力マナの操作さえ行わず、原理さえ無視して、直接的に魔法そのものに変化する一つの神器と、変身する一体の大精霊も存在する。


また、魔術に関しては魔法とは少し異なる。魔術を司るのは悪魔であり、彼らは魔術発動の是非の決定権を持つのと同時に、精霊と違い、魔術を直接引き起こしている存在でもある。第二項でも前述した通り、魔術発動の決定権の是非を悪魔は完全に有している彼らに魔術発動の許可が貰えなければ、術者は魔術を発動する事が出来ない。

これは、魔法発動の是非の決定権を無視して魔法を発動できるの大魔導士と聖神でさえ例外ではなく、悪魔の魔術発動に関する是非の決定権を無視して魔術を発動する事は出来ない。


しかし、これにも例外は二件だけ存在する。

それこそが、魔道法則の全てを無視して、ただ魔法や魔術という現象に変化し、変身してしまう光輪や変身の大精霊シーである。




【第六項:真なる法術について】

概要:神々が司る事物を具現化した神器。俗に『神の恩恵』と呼ばれるものや、神々の力そのものを指す言葉である。精霊が使う魔法や悪魔が使う魔術とは、全く異なる法則で動いていると言われている。

_____________________________________

※以下のURLが本編になります。

https://kakuyomu.jp/works/16817330665644936498

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