霊体(アニマ)について

目次

【第一項:霊体アニマの定義】

【第二項:後天宿主と先天宿主】

<コルネリウスの壺・穴だらけの壺>

【第三項:契約】

【第四項:パス】

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【第一項:霊体アニマの定義】

概要:霊体アニマとは、この世の生命全てに宿る魂の力であり、高密度の霊力マナが、機械のような構造を持って出来た霊力マナの塊である。

霊力マナという物理的な外殻を持たない形而上的なエネルギーで構成される霊体アニマは、基本的に宿っている生命の肉体から影響を受けやすい。肉体が死ねば霊体アニマは徐々に霧散し、完全には崩壊しないものの、元の原型を保てなくなってしまう。

その為、全ての霊体アニマは、自らの状態を常に一定に保とうとする本能のようなものを有しており、自らの宿る肉体——一般的には宿主しゅくしゅと呼ぶ——が崩壊するのを防ぐ為に、宿主がより強力な存在へ進化するように手助けする霊体恒常性アクロスタシスという機能を持っている。


危機への適応本能とも呼ばれるこの霊体恒常性アクロスタシスは、宿主がより早く過酷な環境や状況に適応できるように、宿主の肉体を構成する真空物質エーテル——霊力マナを媒介する物質をもちいて、より強い肉体を形成したり、生存の為の技術を身につけさせたりする。

分かりやすい例で言うと、分限魔術などで分かる身体能力や霊力マナの値が短期間の間に、通常ではありえないような速度で急上昇したり、魔獣の群れに襲われたただの行商人が、いきなり今まで使えなかった魔法を使えるようになったりなどがそうである。


つまり、この霊体アニマの力によって、あらゆる生命は超常の身体能力や常人離れした技術スキルを有する事ができ……また、魂に宿る超常的な固有の能力——霊体能力ユニークスキルを発現させる事が出来ると言われている。




【第二項:後天宿主・先天宿主・同質宿主】

概要:人間が霊体アニマを持つように、精霊・悪魔・神なども霊体アニマを有している。しかし、人間と彼らの霊体アニマには、明確な違いが存在する。

この違いを説明する上で良く用いられる言葉は『人間と神は肉体の方に霊体アニマがくっ付いているのに対して、精霊・悪魔は霊体アニマの方に肉体がくっ付いている』という言葉である。

これは、人間と神が物質的世界の住人である事に対して、精霊・悪魔は霊的世界の住人であるからであり、それぞれのせかいの法則が異なる為である。


霊体アニマは元々、精霊・悪魔・神だけが持つ力であった事が判明しているが、長い歴史の中で多くの生命体が過酷な環境に適応する事を迫られた結果、徐々に人間を中心とした多くの生命体が霊体アニマを獲得するようになった。

このように環境に適応し続けた結果として、後天的に霊体アニマを獲得した者達を後天宿主こうてんしゅくしゅと呼び、先天的に霊体アニマを持っていた精霊・悪魔などの先天宿主とは種別される。


そして、上記の二つとは異なり、神だけは先天宿主でもなく後天宿主でもない。

彼らは肉体の方が本体であるが、彼らの肉体は全て、霊力マナに反応する物質——真空物質エーテルで構成されており、自らの肉体を維持する為に、常に自分の霊力マナを消費している。

その為、霊力マナが無くなると肉体を維持する事が出来なってしまう。つまり、肉体と霊体アニマの両方が、互いに互いの存在を補い合っている特殊な関係性にあり、肉体が欠けても、霊体アニマが欠けても、彼ら神は存在を維持できなくなってしまう。

故に神たちは、後天宿主でもなく先天宿主でもなく、同質宿主と呼ばれる。


<コルネリウスの壺・穴だらけの壺>

概要:後天宿主の最大の特徴は、霊体マナが枯渇したとしても霊体アニマが崩壊しないという事と、もし何らかの要因により霊体アニマが崩壊しても、肉体は死なず、その人の心や意識が失われるような事は無いという事である。仮に霊体アニマを失ったとしても、人間のような後天宿主は、ただ霊体アニマを持たない人間として、その後も生きて行く事が出来る。

対して、精霊・悪魔・神などの先天宿主は、霊体アニマの方が本体である為、霊体アニマが崩壊すれば、肉体の方もドロドロに溶けて崩壊し……実質的な死を迎える。


このメカニズムは未だ詳しく解明されてはいないが、最も有力な説として——『後天宿主が持つ霊体アニマはそれぞれの宿主の肉体をベースにして後天的に霊力マナが集まって構築されたものである為、霊力マナの全てが枯渇したとしても、再び肉体が霊力マナで満たされれば、自動的に霊体アニマが構築されるのではないか? 霊力マナを水、壺を肉体として例えるのなら……壺に水を入れて、壺の形に沿って満たされた水の形——これが霊体アニマだ』、という古代霊体学者コルネリオスが提唱した<コルネリウスの壺>というものがある。


このコルネリウスの壺に照らし合わせると、人間の霊力マナの回復速度が精霊・悪魔・神と比べて、尋常ではない程に早いと言う説明がつくのである。

霊力マナは、霊力マナの濃い場所に引き寄せられやすいという<マナの場>と呼ばれる性質があるが、この性質に照らし合わせると、最も霊力マナの回復速度が速いのは、本来は神であるはずなのである。


だが、そうではない事実をかんがみて学者たちが導き出した結論は、『神や精霊に集合した霊力マナは、そのまま神や精霊の身体として定着せず、その大半が漏れ出ているのではないのか? 或いは、常に消費されているのではないか?』という<穴だらけの壺>と呼ばれる説である。

コルネリオスの壺と比較して提唱されたこの説は、神や精霊の身体を『穴だらけの壺』に例え、霊力マナを取り込んでも何らかの要因により定着せず、そのまま霧散・消費しているという内容である。




【第三項:契約】

概要:上記のコルネリオスの壺と穴だらけの壺の説を踏まえると、後天宿主と先天宿主の最大の違いはここであると考える事が出来る。彼らの肉体は何らかの要因で霊力マナが定着しない、或いはし辛いが、この『何らかの要因』は、精霊や悪魔、そして神とで異なり、それぞれ候補として挙げられる要因が一つずつある。


精霊や悪魔の霊体アニマは、こことは別の次元——『波動領域』と呼ばれる異世界にあると言われている。

この波動領域は、この世界と同じ座標にありながら、この世界とは完全に混ざり合わない世界と言われ、人々は当たり前に認識している世界を物理的な世界とするならば、彼らの波動領域は霊的な世界と説明される。多くの学者たちは、この波動領域こそが大いなる精霊グラン・ルヴナンであると考えている——が、精霊・悪魔はそれを否定しており、彼らはこの波動領域の事を以下のように説明している。


『確かに我々は大いなる精霊グラン・ルヴナンの上に立っているが、波動領域は、その大いなる精霊グラン・ルヴナンが立つもっと大きな世界であり、霊力マナより小さい霊力マナで構成された異世界……君たち人間でいうところの宇宙の外側・・・・・である。波動領域は、君たち人間の世界と違って、外側の法則と区切られていない為、その外側の法則の影響を強く受けている』


彼ら精霊・悪魔の言葉から憶測するに、彼らの霊体アニマは、人間たちの霊体アニマと違い、その波動領域の法則で動いている存在である事が伺える。その波動領域の法則の影響により、彼らの霊体アニマには霊力マナが定着し辛いものだと考えられる。


しかし、彼らの本体である霊体アニマ霊力マナを供給し続けなければ、何時かは霧散して消えてしまう。彼らの本体は霊体アニマであり、その霊体アニマを構成しているのは霊力マナだからである。


その為、彼らは自らの生命とも言える霊体アニマを維持する為に、自分達とは別の世界の住人である人間たちと<契約>というものを行う。


神も精霊や悪魔と同様で、霊力マナを供給し続けなければ消えてしまうが、彼らの本体である霊体アニマは精霊や悪魔のように波動領域にあるのではなく、人間と同じ物質的世界に存在する。通常であれば、彼らの霊体アニマには常に霊力マナが補給される為、霊力マナを補給する必要はない筈である。

しかし彼ら神は同質宿主と呼ばれる特殊な存在であり、自らの肉体を構成する為に、自身の意志とは関係なしに自らの霊力マナを常に消費している。その為、常に莫大な量の霊力マナを消費しており、霊力マナの場の法則による霊力マナの回復速度が追い付かず、霊力マナが枯渇してしまうのである。

その為、自らの肉体を構成する事が困難になり、最終的に肉体が崩壊してしまう。

彼らは常に人間たちに対して『信仰』を求めるが、それhが『信仰』こそが精霊や悪魔で言うところの『契約』だからである。人間が彼らを信仰する事で、神と人間との霊体アニマとの間にパスが繋がり、霊力マナの受け渡しが可能になるのである。



<契約>

概要:契約とは、精霊・悪魔・神たちが自身の持つ霊体アニマと、人間たちが持つ霊体アニマの間に、霊的な門のようなモノ—―専門的にはパスと呼ばれる——を、瞬間的、若しくは長期的に開き、霊体アニマ同士の融合を図る儀式である。

一般的に精霊・悪魔が出来る契約は『融合契約』『仮契約』『簡易契約』の三つであり、神が出来る契約は『信仰』『眷属化』の二つである。

この契約には以下の五種類が存在する。


『融合契約』

概要:精霊・悪魔の側から人間の霊体アニマの間に開かれる大きなパスにより、両者の霊力マナを互いに循環させ、双方の霊体アニマの境界線を曖昧にし融合状態を作る契約。

契約者である人間は契約精霊・悪魔の力を、自らが保有する霊力マナが許す限り、自由に使用する事が可能になるというメリットがある。ただし、互いの霊体アニマが融合状態にある為、一度融合契約をしてしまうと一部の特殊例を除いて、死ぬまで契約を破棄できないというデメリットと、融合した事により、精霊・悪魔の住まう波動領域を動かす法則の影響強く受けるというデメリットがある。

このデメリットの最大の要点は、融合契約の影響により契約者の霊体アニマが契約精霊・悪魔たちの霊体アニマを通して、彼らの住まう波動領域の法則に汚染され、後天宿主としての性質と先天宿主の性質を同時に持ち合わせる存在になってしまうという点にある。

つまり、半分、精霊や悪魔と同様の存在になってしまい、精霊や悪魔と同様に霊体アニマの方に肉体がくっ付いている存在になってしまうのである。


後天宿主としての性質も持ち合わせている為、肉体から完全に霊力マナが尽きたとしても、霊力マナはすぐに回復し、霊体アニマが自壊するような事は無いが……もしも、何らかの要因により霊体アニマが崩壊するような事があれば、半精霊・悪魔化した契約者は肉体がドロドロに溶けて死亡する。

また、無理矢理に精霊・悪魔の霊体アニマを剥がした場合も同様である。剥がされた衝撃で、契約していた精霊・悪魔の霊体アニマ共々、契約者の霊体アニマはドロドロに溶けて崩壊する。


精霊・悪魔の融合契約は、上記のようにメリットもある反面、デメリットも非常に大きい。もし、どちらかの裏切りにより一方的に契約が切られるような事があれば、そのままどちらも死亡してしまうからである。

この融合契約が解除される場合は、特殊な魔道具を用いるか、契約者、若しくは契約精霊・悪魔が死亡しなど、パスが自然消滅するような場合を除きあり得ない。


『仮契約』

概要:概要:精霊・悪魔の側から人間の霊体アニマの間に開かれる小さなパスにより、両者の霊力マナを互いに循環させ、双方の霊体アニマの境界線をハッキリさせた上で、緩やかな融合状態を作る契約。

基本的にパスというものは、一度開くとゆっくりと時間をかけて閉じて行く。融合契約が一生ものと言われるのは、融合契約で開くパスの大きさが非常に大きく、自然に閉じるまでの時間が、人間の寿命を大きく上回るからである。

その期間は数前年とも数万年とも言われており、仮契約というのはこのパスが閉じるまでの期間を、開くパスを小さくすることによって、非常に短い期間に抑える契約の事である。

基本的には融合契約の縮小版という事で、もし仮に、どちらかの裏切りにより一方的に契約が切れるような事があっても、両者の霊体アニマが消滅するような事は無く、契約者の霊体アニマが崩壊したとしても、肉体までもがドロドロに溶けるような大事には至らない。

ただし、契約者が得られる精霊・悪魔の力は非常に小さい。


『簡易契約』

概要:上記の二つの契約とは違い、簡易契約は人間の側から精霊・悪魔たちへとパスを開く。また、最大の違いとして両者の霊体アニマの間に、霊力マナの循環経路を作らず、人間の側から精霊・悪魔へ開かれるパスが、一方通行という違いがある。

この一方通行のパスを通って送られて来た霊力マナを使用し、特定の精霊・悪魔たちは、自らが司る超自然的現象を引き起こす。一般的に『魔法』や『魔術』と呼ばれるものである。


『信仰』

概要:神の契約は、精霊や悪魔とは異なる。彼らは精霊や悪魔に本質的には近い存在であると言われているが、その存在を維持する為に必要な霊力マナの総量が桁違いに多く、契約のハードルも非常に低い。ただ強く敬う事、尊敬・畏敬の念を抱く事により、神と人間の間にはパスが繋がる。彼らは本質的に精霊や悪魔に近い存在ではあるものの、彼らとは違い、人間と同じ物質的世界の住人だからである。

このパスを通して人間から神へ霊力マナが送られ、その代価として神は、自らが司る力の象徴——その事物である『恩恵』を授けるのである。


また、彼らはこの世界そのものが持つ霊体アニマと呼ばれる大精霊——大いなる精霊グラン・ルヴナンの分霊である精霊や、分身である悪魔とは違い、彼らは人間の信仰心に呼応した霊力マナ真空物質エーテルが神話という外殻を得てこの世に顕現した非常に不安定な存在である。

神は、自らの肉体を構築し続ける為に、常に自らの霊力マナを消費し続けているが、その肉体構築に要求される霊力マナの総量は、人々が思う以上にはるかに多いと言われている。

その為、マナの場の法則による霊力マナの回復速度が追い付かず、信仰による契約者が少ないと、神はいずれ消滅してしまう。


『眷属化』

概要:『信仰』によって、人間と神の霊体アニマとの間に繋がったパスは人間から神への一方通行であるのに対して、『眷属化』はその逆……神から人間への一方通行のパスが開く。

これによって、人間の霊体アニマは徐々に神の霊体アニマに浸食されて行き、肉体と霊体アニマの関係性が、徐々に神へと近付いて行く。つまり、後天宿主から同質宿主へと変化して行き、最終的に人間の肉体を構成する原子アトム真空物質エーテルに分解、そのまま分解された真空物質エーテルによる肉体の再構築が進み、その肉体の再構築を行い続ける為に、その人の霊力マナが消費され続けるようになる。

肉体を構築し続ける為に人間は莫大な霊力マナが要求され続ける為、神からパスを通して送られて来る霊力マナが唯一の生命線になる。パスは神側の意志で何時でも閉じる事が出来る為、人間は常に、契約した神に心臓を握られているようなものである。


この一種の隷属関係が、眷属化である。


眷属となった人間は限定的に神の力を振るう事が出来るが、神が消滅するまでは、死んでも隷属し続ける事になり、実質的に不老不死の存在になる。しかし、これは死んでも解放されることが無いという事と同義であり、『眷属化』は別名、『神の呪い』とも呼ばれている。


また、眷属化は神側もデメリットが非常に大きく、契約者である人間へ、常に霊力マナを供給し続けなければならない為、あまりお紺われない。が、本当に追い詰められた神が、自暴自棄になり、縋るような思いで、信者を増やす為に適当な人間を眷属化し、宣教師としての役割を強制する事例は存在する。




【第四項:パス】

概要:精霊・悪魔・神と人間の霊体アニマとの間に開く門のようなモノ。このパスを開く事によって、人間は精霊・悪魔・神などとの契約を行う。また、これは人間同士の間でも開く事が可能であり、このパスを利用して相手に幻惑系の魔法や回復魔術を掛ける事が出来る。

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※後書き

以下のURLが本編になります。

https://kakuyomu.jp/works/16817330665644936498

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