7話 未来の話 echo

――今は、たぶん西暦100億年とか?


私の先祖はどうやら歴史学者だったそうです。


ああ、自己紹介が遅れました。

私の名前はリリィと申します。

月は、大昔どうやら凄いテロリズムが起きたそうですが。

人と人はある時気づきました。

争いはくだらないから、止めましょう。


進化はある日突然に。悟りのような形態で発生しました。

すでに月ではエネルギーを大量に生み出す理論が確立され

太陽エネルギーや私たちの呼吸を。

例えばこう。


息を吸って。


吐いて。


もともと月に空気はなかったのですが。

呼吸ができるまで空気を生成、また再生することで

微量な消費にとどめる事が可能となりました。

――あなたはいつかの小さな兵士さん。


私たちが無限に生きられる輪廻を。

二重スリット理論を前提にする事によって自由に往来できるとしたら。


あっ、いけない。

あなたはその後、国際政治学を専攻されていましたけれど。

こういったのははじめてとなりますよね。



ごめんなさい。説明に力が入ってしまいまして。

そうですね。

なんでもできる超越した人類。

神様みたいな考えにあたるのでしょうか。


こればかりは、たぶん。そうかもしれない。という仮定としたお話です。

良くも悪くも私たち人類は"概念"に進化したのです。

例えばあの時。

チョコレートを渡したぎこちない顔をした兵士が

私たちの機関の者だとしたら。


いつでも私たちの世界に奇蹟はあふれていて、

あなたはその時に起こった世界の偶然を奇蹟と認識したのです。


しかし、私たちにとっては因果です。

だから意味も理由もない死がもしも。

本当にもしもなかったら。


これをあなたが奇蹟だというのか、その逆か。

なんだってできたじゃないかって、思うかもしれません。

なんだってできる世界は極脆く不自由なのです。


あなたを救うにはこれしか方法がなかった。

数万年かけたのちにもこれしかできなかった。


二重スリット理論、多元宇宙理論、これら古典物理学を基に。

私たちは歴史を学んで。

発展して進化して衰退して復興してを繰り返して。

やっとここまで来られた。


人類はもはや争うことではなく、全人類で過去を救うために生きている。


この使命にリリィは命をかけています。

具体的な紹介をする前に。

――あなたは、ある時のサイボーグさん。

あなた達の秘密結社は今ここまで大きくなりましたよ。



いかがでしょうか。

でも地球はなくなってしまいました。


私たちも必死だったのですが、あなたの後の後になくなってしまいました。

全くあなたの責任ではないのでご安心を。

リリィの役割を改めて説明します。



昔は魂と呼ばれていた部分。

今の我々は"コア"と呼んでいます。

コアに世界を案内するのがリリィの仕事です。

なにもかもを救うことは未だできていません。


数万年たった人類もまた、必死で一人一人を救おうとしています。



偶然性に介入し因果を調整しています。

巨大なコンピューターは分散して太陽エネルギーで稼働していますが

彼らはコアを持たないため、人々を救う事ができません。


それでは

仕事を開始します。



エコー、エコー。

呼びかけています。

エコー、エコー。

あなたに呼びかけています。


あなたは本当に御仕舞でしょうか。


もてる限りの手段を尽くしたでしょうか。

あなたの世界は広く、きっと想像以上に広大です。

窓の外を見てみませんか。

どうでしょう。

何が見えるでしょうか。


これがあなたの世界です。


少し歩いてみましょうか。

そこから空を眺める。あるいは想像でもかまいません。

世界はこんなにも希望と可能性で満ち溢れていて。

ありとあらゆるあなたの絶望を。


私たちにも引き受ける覚悟がここにあるのです。


私、はい。

リリィを信じてください。

ほら、手に触れてください。


あなたは生きている。

あなたができる最善は未来数万年後に必ずすべて役立っています。

絶望に打ちひしがれる人は少しだけ立ち止まって休んでみてはいかがでしょう。

全てはつながっている。

あなたは世界から孤立していない。

決して孤立してはいない。



あなたが生きる事を。

生きたいと思う事をやめないでください。

リリィがついていますから。

――ああ、この素晴らしき世界よ。

あっ、星です。



丁度星が降ってきました。

こういう偶然もあるといいたいところですが。

これは私たちからあなたへの贈り物です。

――ああ、今夜は。本当に。星がきれいですね。

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