第73話 父さんとルスの休憩

『みんな大丈夫か!?』


 俺のモコモコ達と小さいフルフルへの、誠心誠意の謝罪からどれくらい経ったのか。父さんとルスが休憩しに戻ってきた。そして父さんは俺と姉さんの姿を確認すると、すぐに俺達をまとめて抱きしめてきて。


『2人とも、怪我はしていないか? 苦しいところはないか?』


 と、今度はすぐに俺達の体を調べた。急なことと父さんの勢いに、父さんが止まるまで俺も姉さんもパパとは言えずに、思わず父さんをじっと見てしまったよ。


『ん? どうした2人とも。何だ!? どこか具合が悪いのか!!』


 まずい、俺達が何も言わなかったせいで、父さんのお勢いがまた増してしまう! と思ったら、アトウットさんが父さんを止めてくれた。


『旦那様、お嬢様も坊っちゃまも、全く問題はございません。今は旦那様の勢いに驚いて声が出せていないのです』


『あ、そうなのか? 私のせいか……。2人共もう1度よく見せてくれ』


 父さんのあの勢いが止まって、今度はゆっくりとした動きで俺と姉さんを見てきた父さん。そうして全体的に見終わると、大きな大きなため息を吐いて、また俺達を抱きしめてきた。そう、抱きしめるのもゆっくりとだ。


『はぁ、2人が無事で良かった』


『パパ!!』


『ぱぁ!!』


 やっとパパって呼べたよ。父さんが俺達を調べているうちに、俺も父さんを確認していたんだけど。今の感じだと、父さんも洋服は汚れているものの、怪我はしていないようで安心した。

 もしかしたら治癒魔法や薬を飲んだかもしれないけど、それでも今、何もないのなら、とりあえず安心だ。


 やっと落ち着いた父さんは、俺達を抱きしめ終わると、俺達をいっぺんに抱き上げてソファーへ。そしてソファーにまとめて座ると、またまた大きなため息を吐いた。


『ふぅ、なかなか戻ってこられなかったから、ようやくみんなの顔を見ることができて、安心よりも心配してしまった』


「お前は相変わらずだな」


『ユースタス、子供達を守ってくれてありがとう』


「私はこれといって、何もしていないがな」


 そんな事ないよ。ユースタスさんは俺達のことを、しっかりと守ってくれてるじゃないか。何かあればすぐに俺達を庇ってくれてさ。守ってくれるだけじゃなくて、食事や俺達の体調も、随時気にしてくれて。


 それに姉さんも俺を元気づけてくれるし、アトウットさん達だってそうだよ。それからモコモコ達や小さいフルフルも。俺は……、まぁ、色々やらかしている方が多いけどさ。さっきもモコモコ達と小さいフルフルに誠心誠意謝ったばっかりだし。

 

 でもみんなが俺を守ったり元気づけてくれているんだ。しっかりとありがとうを言えたら良いんだけど、言葉がちゃんと話せないのは仕方がないからな。でもこれからも、何かあればすぐに、感謝は伝えるようにしよう。


『ぷぷぷぷぷっ!!』


『ブルーも元気で良かった。それにモコモコ達も小さいおチビフルフルも、2人を守ってくれたんだろう? ありがとう』


『ぷぷぷっ!!』


 ブルーがとっても嬉しそうだ。ずっと心配していたもんな。俺はフェリーを見る。フェリーはブルーを見てニコニコしていた。でもちょっと寂しそうにも。

 確か父さんと交代で母さんも休憩に来るって言っていたよな。フェリーだって母さんに会いたいはず。フェリー、もう少しだからな。後少しで母さんに会えるからな。


『みんな元気そうだな!! 元気が1番だ。ご飯はしっかりと食べているか? こいつの薬草は飲んだか?』


「ああ、ご飯はしっかりと食べているぞ。1番しっかりと食べているのはグレンヴィルだな。薬草もしっかりと」


『そうか、こいつの薬草は本当に効くからな』


「お前も、キュリスも問題はないか?」


『ああ、私は途中で回復魔法と、君からもらった特別な薬でバッチリだ』


『俺もだ、お前の薬は相変わらず最高だよ』


「そうか。では戻る時に別の薬も持って行くと良い。ルス、お前はここで飲んでいけ。この薬で体力の減少をおさえることが出来る。あまり量がなくて、すぐには渡せなかったのさ。1度でも飲めば、かなり長い間、その状態を維持することができる」


「それはありがたい」


『よし、それを飲んでもう1戦だな』


 ユースタスさんは、どれだけ薬を持ってきているんだろう。ちょっとエルフの薬に興味が出てきた。


 その後もずっと俺達を抱っこしながら、話しを続ける父さん達。だんだんと話しは、向こうで起きていることに変わっていき。


 襲ってきたシードラゴンは、父さん達が予想していた大きさとさほど変わらなく。また力についても予想していた通りだったため、そこまで慌てることはなかったと。だからと言って、すぐに倒せるかは別だけど。


 ただ、問題はやっぱり半端者達らしい。本当はシードラゴンに集中したけど、面倒な半端者達が邪魔をして、しっかりとした攻撃ができず。

 それにやっぱり半端者の攻撃力が少し上がってきて、それも問題みたいだ。ルスがいなかったら今頃大変だったって。


 それから一緒に戦ってくれている魔獣達にやエルフ達。みんなが一緒に戦ってくれて良かったと。魔獣達に関してだけど、魔獣達は結界の外から戦う魔獣達もいるから、そういう魔獣には体に纏わす感じで、結界を直に張っているらしい。


 それでも危ないと思ったら時は、すぐに中へ隠れられるように自分が逃げられる余裕がある距離で、戦ってもらっているから。今のところ、大きな怪我をしている魔獣はいないようだ。


 そういえば、これからフルーも交代で休憩するって言っていたけど、フルーも怪我は大丈夫だろうか。

 フルーにも休憩が終わったら、戦いに行く前に、薬草を飲んでもらおう。フルーの分はあるかな。ユースタスさんはしっかり用意していてくれると思うけど。


『それにしても、今だに向こうを指揮している者が現れない』


 難しいい顔をして、そう父さんが言った。

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