第70話 今までで1番の爆発音と揺れ

 積み木でたくさん遊んだ俺達。そして今、俺達の前には、俺の背よりも高い、3倍くらいの、積み木の塔が立っていた。俺は俺で、積み木で手を動かす練習をしていたんだけど。途中で俺の積み木を取って行ったモコモコ達。


 仕方なくモコモコ達の様子を見ていると、モコモコ達は姉さんの積み木も取っていって。最初は背伸びをして積み木を重ね、背伸びじゃ追いつかなくなると、ジャンプしながら。どんどん積み木を重ねていった。


 ジャンプ乗せなのに、ちゃんと縦とか横とか、角度をしっかり見ながら、綺麗に乗っけいていくんだよ。俺なんて3つでもごちゃごちゃなのに。最高で4つだ。2個で崩れるくらいだからな。それなのにモコモコ達の積み木ときたら。


 最初モコモコ達に積み木を取られて、ちょっとふくれていた姉さん。でも途中からモコモコ達と一緒に積み木を積んで。その姉さんが乗せた積み木も、モコモコ達はきれいに直していた。


 そうして全部の積み木を使ってできた積み木の塔は、俺の背の3倍に。


『そろそろちょうど、お昼寝のお時間ですね。では積み木を片付けて、お昼寝の準備をいたしましょう』


 アトウットさんがリズに指示をして、それからみんなで積み木を片付けようとした。


 でもモコモコ達はもう少しだけ積み木の塔を残しておきたいらしく、みんなで片付けを阻止。だからお昼寝が終わって、それから少しだけなら、積み木を残しておいて良いってことに。


 すぐに昼寝の準備が終わって、俺も姉さんもモコモコ達も、みんなぐっすりの昼寝だった。そして約束した通り、お昼寝が終わっておやつを食べるまでは、積み木の塔を残しておいてもらったモコモコ達。


 夕方になって、アトウットさんがそろそろ片付けましょうって言うと、モコモコ達が引っ張ったり、押したりして、積み木の塔の近くまで、おもちゃ箱を持ってきた。そしておもちゃ箱とは反対側、積み木の塔の後ろにみんなで並んで。


 どうも塔に体当たりして、おもちゃ箱に入れたいらしい。あーだこーだ何か話して、おもちゃ箱を指すフェリー。それからみんなが頷いて。

 ユースタスさんが曰く、おもちゃ箱から出さないように、きれいに入れよう、と言っているんじゃないかって。


 そしてそれぞれが飛びかかる体制に入ると、フェリーから順番に高くジャンプ。シェリーが1番上を少し崩すと、その一瞬後にブルーが、フェリーによって崩され、新たに塔のてっぺんになった所を崩して。

 こうしてどんどん順番に、変に順番を開けないで、一定の間隔で塔を崩していくモコモコ達と小さいフルフル。


 小さいフルフルが崩し終わると、塔は半分以上崩れて、そして崩れた積み木は、全部がしっかりとおもちゃ箱に入っていた。ハイタッチをするみんな。

 が、その後は何故か俺の方を見てきて、何かを言ってきた。どうも最後の少しは、俺に倒して良いと言っているらしい。


 ちょっと押せば、そのまま入るくらいの低くなった塔。みんながあんまり言ってくるから、俺もやることに。そうして俺が積み木を押した瞬間。本当に押した瞬間にそれは起こった。


 今までで1番大きな爆発音と共に、今までで1番の揺れが襲ってきたんだ。いやさ、タイミングが良すぎて、俺が何かしたんじゃないかって思えるほどだったよ。


 ユースタスさんが俺を守るように覆い被さり、姉さんをアトウットさんが。そしてリズがモコモコ達と小さいフルフルを守ってくれて。


「みょおぉぉぉぉぉ!!」


「大丈夫だ、大丈夫だぞ」


 あまりの揺れに、思わず声が出てしまう。が、この時俺のモコモコ達と小さいフルフルが、リズの脇から出てきちゃって、俺の方へ這ってきてしまったんだ。大きな揺れに何度も立ち止まりながら、転がりそうになりながら。


 俺はモコモコ達と小さいフルフルのことが心配過ぎて、自分のことを心配するどころじゃなかったよ、もしも怪我をしたら……。

 そりゃあこの世界には、ささっと怪我を治してくれる人がいるし、よく効く薬もあるけれど。それでも傷つけば痛みを感じるんだぞ。もしかしたら治せないような傷が残る可能性だってあるんだ。


 モコモコ達と小さいフルフルが俺の所へ着いたのは、どれくらい経ってからだったか。俺には何10分にも感じたけど、実際は数分だっただろう。でもなんとか怪我をしないで俺の所に来たみんな。


 ユースタスさんが怒りながら、モコモコ達と小さいフルフルに、俺のように覆い被さり守ってくれる。


「まったく、何を考えているんだ。もしお前達が……。いや、怒るのは後だな。皆、もう絶対に動くなよ!!」


 それからも続いた揺れ。爆発音はの方は、さっきの1番大きな爆発音ほどのものは聞こえてこず。それでも小さな爆発音はずっと続いた。

 

「ぱぁ、まぁ、だうにょお」


 今のは、父さん、母さん、大丈夫かな、って思わず声に出しちゃったんだよ。だって心配するなって方が無理だ。1番大きな爆発にこの揺れだぞ。


「グレンヴィル、大人しくしていろ、舌を噛むぞ。分かるか?」


 そうユースタスさんが言う。と、続いて聞こえたのは姉さんの声だ。


『グレンヴィル、しー、だよ。ときどきいっしょ、しー、するでしょう? しずかにのしーだよ』


『お嬢様もお静かに』


『だって、グレンヴィル、みんなのおはなし、むずかしくてわかんないって、みんないってるもん。だからあたしが、おしえてあげるんだもん!! あたしおねえちゃんだもん!!』


 姉さん……。俺はすぐに姉さんに返事を返す。


「あい!!」


「……分かったのか?」


『グレンヴィル、しー、だからね!!』


 姉さんだって怖いはずなのに。俺は中身は大人だけど、姉さんはそのままの姉さんだ。本当だったら泣いていたっておかしくないんだ。それなのに俺に声をかけてきた姉さんを見ると、姉さんはいつも通りの笑顔で、俺を見てくれていて。


 俺はその後、モコモコ達と小さいフルフルを順番に撫でながら、揺れが収まるのを静かに待った。

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