第63話 みんなで応援、モコモコ達の応援ダンス

 だってそうだろう? わざわざ俺達の所に来て、何が目的なんだ? 俺達を餌にでもしようとしているのか? 

 でもそれなら、海にはもっとシードラゴンの大きさにあった魔獣達がいるだろう。ほら、シードラゴンをも群れで襲うサメみたいな魔獣とか。


 この前見せてもらった絵本じゃなくて、少し前に母さんが、分厚い図鑑を見ていたんだ。それは魔獣達の事が詳しく書いてある図鑑で。

 母さんはそれでシードラゴンについて調べていていた。その時に俺を膝に乗せていたから、図鑑に書いてある事を教えてくれたんだ。


 確かにシードラゴンは力が強く、体も大きいから、そうそう外敵に襲われることはない。だけど、そんなシードラゴンに向かっていく魔獣達が。


 何種類かいたんだけど、確かダイオオイカみたいな魔獣に、クラーケンみたいな奴。それから大きなクジラみたいな魔獣に、さっき言った、クジラくらい大きなサメみたいな魔獣。

 他にもいるけれど、こういった魔獣達が、シードラゴンに向かって行くんだ。


 後、生まれたばかりのシードラゴンや、まだまだ成長途中のシードラゴンは、まだシードラゴンとしての力がそんなに強くないから、普段は襲ってこないような魔獣達にも襲われるって。狙われやすいって事だ。

 そのため子供のいるシードラゴンは、子供を守るために、かなり凶暴になるらしい。


 と、シードラゴンにも色々あるんだが、もしお腹が空いていて、この国の人を狙ってきたのなら、俺達を狙わないで、自分を襲ってくる魔獣達を襲えば良いだろう。しかも向こうのほうがかなり大きいんだから。


 まさか、近くに子供がいて、子供に食べさせるために、ここを狙ったとか? 子供は小さいらしいから、人間サイズがちょうど良いとか。


 後は考えたくはないけど、シードラゴンにこの国の人が何をかして、シードラゴンを怒らせて。その人を追ってきたらここの国で、それでそのままこの国を襲っているとか?


 それか、俺の最初の家族のような、この国の人達じゃなくて、モコモコ達を狙うような悪い人間が、シードラゴンに何かをして。シードラゴンは人間だろうが、海に生きる者達だろうが、同じ人型だから仕返しに襲ってきたとか。


 それだったら最悪だ。悪い事を考える人達のせいで、俺達が狙われるなんて。そいつら自身がどうなろうが、悪い事をしたんだから、それ相応の罰は受けるべきだけど、俺達には関係ないんだから。


 なんて事を考えていると、ちょうど見ていた方から爆発音と、赤い光。それからモコモコと泡が上がり。


「今のはしっかりと攻撃が当たったな。ああして少しずつ、攻撃を加えて行くしかないだろう」


『そうですね。少しずつでも攻撃する事が大切ですからね』


 どうも今のはこちらの攻撃が、シードラゴンにしっかりと当たったから、あの爆発が起きたらしい。良かった、向こうからの攻撃じゃなかった。と、ほっとしたら、すぐにシードラゴンの攻撃が。


 結界にバチバチと何かが当たり、街全体が少し揺れて。今のはシードラゴンの雷攻撃だと。結界を破ろうとしているんだろうと、ユースタスさんが。もちろん結界のおかげで、街に被害はなかった。そして結界はどこも破られなかったようだ。


「だが、奴は変異種。あの程度の攻撃で終わることはないだろう。気をつけなければ」


『そうですね。今のところは予定通り進んでいるようです』


「ああ、そうだな。お前の父と母の気配はしっかりと感じているからな、安心するといい」


 ユースタスさんは、人の気配を感じるのが得意で、遠くにいる人でも、気配でその人が誰なのか分かるんだ。それで父さんや母さんの気配を調べてくれたらしい。うんうん、良かった良かった。


『あたし、おえんする!!』


 今まで静かに外を見ていた姉さんが、腕を上げそう言った。それから。


『おえんの、おうたうたう!! ⚪︎△◻︎*⭐︎~~!!』


 姉さん、それは応援なのか? あの独特な歌を、いつもよりも力を込めてうたう姉さん。そのせいか、いつもよりももっと独特に聞こえる。

 姉さんの頭の上にいたルーちゃんも、隣にいた俺のモコモコ達に、小さなフルフルも。全員が口を少し開けて、なんだこれ? みたいな表情で、ただただ姉さんを見つめていた。


 でもすぐに復活したルーちゃんが、モコモコ達や小さなフルフルに何かを言って。それに頷くみんな。すぐに床に降りると、みんなで歌付きのダンスを始めた。お尻振りダンスじゃなくて、いつもよりも激しいダンスで。


 その場で2回転ジャンプをしたり、連続でんぐり返しをしたり。フンフンと立ったりしゃがんだりしたり。いつものほほんとしているみんなからは、考えられない動きをしていた。


『応援のダンスですね。坊っちゃま、今のモコモコ達のダンスは、応援のダンスです。いつものダンスとは違い激しくダンスしていますでしょう。見分けるのはそこです。いつものゆっくりのダンスは、基本嬉しい時、楽しい時に。今のように激しいダンスは他者を応援する時によくされます。時々楽しすぎて激しいダンスになる時もありますが、今は応援のダンスですね』


 応援のダンスもあったのか。みんな激しいダンスをしながら、姉さんの歌に負けないくらい、大きな声で歌っている。

 応援だからな、どんな応援だって今は良いか。その応援の気持ちが少しでも父さんと母さん、みんなに伝われば。よし!! 俺も応援するか。


「ぱぁ、れ~! まぁ、れ~! みちゃ、れ~!!」


 今のは、パパ頑張れ! ママ頑張れ! みんな頑張れ!! って言ったんだ。なるべく大きな被害が起きていないうちに、全てが終われば。


 その後も少しの間、応援していた俺達。時々姉さんの応援の歌に釣られそうになりながら、頑張って応援をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る