第62話 シードラゴンはどこだ?

 ん~? どこにシードラゴンがいるって? 俺には結界しか見えないんだけど。爆発音や鳴き声は聞こえているから、絶対にそこにいるはずなんだけど。でも姿が見えない。更に目を細める俺。本当にどこだよ。


 国を街を、守ってくれている人達の動きは戦っている動きだ。ということは、やっぱりそこにシードラゴンが? ところで結界の中からどうやって攻撃してるんだ? あの結界も、本当にどうなってるんだろう。なんか疑問だけが増えていくな。


 俺はユースタスさんの腕をパチパチ叩いて、シードラゴンが何処にいるのか、もう1度聞いてみた。


「ちー、にゃあ」


「今度は何だ」


「ちー、にゃあ!」


 さっき、アトウットさんに教えてもらっただろ、。『ち』はシードラゴンの『ち』だって。それから『にゃあ』は、居ないの『にゃあ』だ。シードラゴンが居ないって言ったんだよ。

 

「ちー、にゃあ!!」


『シードラゴンが居ない、とおっしゃられているのでは?』


 さっきの続き、またまたアトウットさん正解!! 俺は窓の外を指差した。


『ああ、そう言ったのか。何だ、しっかりと見えているだろう?』


 は? どこに? もう1度しっかりと、言われた方角を見る。だけどやっぱり、結界と戦っているみんなの姿しか見えない。ほら、いないじゃないか!


「何だその顔は? シースで自分の顔を見てみろ」


 そんなジロジロ見ていた俺に、ユースタスさんがそう言ってきた。何だって、そっちこそ何だよ。俺は今確認しようとしてるんだよ。でもユースタスさんが言った場所に、シードラゴンが居ないんだよ。本当にあそこに居るのか? 


 ユースタスさんに言われてささっと、リズがシースを持ってきてくれた。シースっていうのは、この世界の、いやこの国で使われている、地球で言うところの鏡だ。


 海の中にも地上と同じく洞窟があって。その中で時間をかけて、シースの元となる石が生成される。そしてその生成された石を取ってきて、良い具合に薄く切って、それを磨くと鏡みたいにピカピカに。それをみんな鏡として使っているんだ。


 石の出来始めは、結構さっさと大きくなるんだけど、大きくなるにつれて、その生成スピードは遅くなっていって。大きなシースを作るには何年もかかるらしい。


 それで、小さいうちはすぐに成長するって言っただろう? そういう小さな物は、一般家庭の人達が使うらしい。

 そして大きいものは、特別な場所や人々が集まる場所に飾られて。後は偉い人達が所持しているんだ。うちにも玄関に大きなシースが置いてある。


 今は、手鏡サイズのシースをリズが、俺の前に持ってきてくれた。シースに映った俺の顔は……。

 目がすごく細くなっていて、眉間に皺がより、口を少し開いてへの字になっていた。シードラゴンが分からなくて、かなりイライラしていたらしい。


 俺は思わず顔をモミモミする。それを見たモコモコ達と小さいフルフルが、一緒に俺の顔をモミモミしてくれた。が、みんなの表情がちょっとブスッとしているような?


『ぷぴ』


『ぷう』


『くう』


 何か言いながらモミモミするみんな。そして俺の顔が元に戻れば、納得したようの頷き合い、窓の方へ戻って行った。 


『坊っちゃまの表情が嫌だったのでしょう。元の可愛らしさ表情に戻り納得されたようですね』


 え? それでブスッとしてたのか? まぁ、俺も自分があんな表情をしているとは思わなかったけど、みんなが嫌がるほどだったか? 今度から気をつけるか。と、それは置いておいて、今はシードラゴンだ。本当にどこに居るって?


「ちー、ない!」


「いや、しっかりと見えているぞ」


「うぅ~」


 ついつい苛ついて唸り声を上げてしまった。


『もしや坊っちゃま、お気づきになられていないのでは?』


「いや、あれだけハッキリと見えているんだぞ。それはないだろう」


『しかしあの色合いは……。坊っちゃま、シードラゴンはハッキリと見えておりますよ。色は白です。よろしいですか、結界よりも濃い白です。と、説明をして、お分かりになるかどうか』


 え? 白? 本に載っていた青じゃなくて? モコモコ達と小さなフルフルのおかげで、表情が戻った俺。あまり睨まないように、でもじっと向こうを見る。青じゃなくて白。結界よりも濃い白?


 と、俺はある変化に気づいた。同じところばかり見ていた俺はふと、ちょっと右の方を見たんだよ。そうしたらある部分から結界の白い色が薄い部分と濃い部分に分かれていて。あれか? と思いながら今度はそこをじっと見る俺。


 すると本当に一瞬だったんだけど、濃い方の白に、背びれみたいな物が見えたんだ。


「ちゃあ!!」


「ん? 分かったのか?」


「ちー、ちゃ!!」


 アトウットさんは濃い白がシードラゴンだって、その濃い方の白色に背びれみたいな物が見えたってことは、あれがシードラゴンで間違いないんだよな。


「ちー!!」


『お分かりになられたのか、それともとりあえず、分かったとおっしゃられているのか……。ですが、そうですね、それがシードラゴンですよ』


 そうかそうか。あれがシードラゴンか。あれじゃあ、間違いじゃなかったけれど、ユースタスさんの指差しだけじゃダメだった。俺は色は絵本と同じ青色だと思っていたしな。

 それにしても、いくら結界の方が色が薄いって言ったって、そんなに違いがないかったからな。いやぁ、分かって良かった。でも……。


 俺は濃い白い部分を辿っていく。俺が気づいた部分から、ユースタスさんが教えてくれた場所。そこも通り過ぎてもっと左に。結局まだ濃い白は続いていたけど、窓で見えなくなってしまった。


 シードラゴン、どれだけ大きいんだよ。これは確かにルスよりも大きいな。こんな大きなシードラゴンを、みんなが、父さんと母さんが相手をしているなんて。


 シードラゴンは分かったけど、今度はちょっと不安になった。父さんも母さんも大丈夫かって。

 あれだけ大きなシードラゴンをルスがいるとはいえ、相手をするのは、かなりかなり大変だろう。どうか大きな怪我をせずに、シードラゴンを倒すか、追い返せれば良いけど。

 

 大体なんでシードラゴンはここに来たんだよ。

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