第61話 シードラゴンの攻撃
ついにシードラゴンが来た。花火のようなパンパンパンッ!! という音。俺はまだ違いを教えてもらっていないけど。この前のパンパンパンッ!! という音は、結界を張れっていう合図だったらしい。俺には同じの思えるんだが。
『ねぇ、アトウット、きたっておしらせ?』
『そうですよ。あれはシードラゴンが、ここへ着いたというお知らせです』
『あたし、あってた!! まいがいない!!」
『お嬢様、ご成長されましたね』
間違いない!! じゃなくて、間違ってなかったって事か。俺はまだ違いが分からないからな。さすが姉さんだ。
そしてモコモコ達と小さいフルフル達といえば、窓に向かって攻撃の姿勢を見せていた。小さい手足でパンチやキックを繰り出し、しっぽでも攻撃をする。フルフルは小さいクチバシで突く仕草も。
俺はもちろん、それが攻撃の態勢だって分かっているし、本人達は真剣だとしっかりと理解しているけど。やっぱりその姿は可愛い。
ただ海に入れば、その攻撃は相当らしいからな。きっとそれを見たら可愛いなんて言っていられなくなるんだろうな。
と、花火の音がしてから数分。ガガガガガガガッ!! といきなり家全体が揺れて、床に座っていた俺は思わず後ろにひっくり返りそうに。
そんな俺をすぐに抱き上げて、モコモコ達の方へ移動すると、モコモコ達もまとめて抱き上げたユースタスさん。その後は部屋の何も置いていない場所へ移動して、揺れが収まるのを待つ。
それから反対側を見れば、アトウットさんが姉さんを抱っこして、同じようにしゃがんでいた。姉さんの様子は、見た感じはか怖がってはおらず、静かに何も言わずに、アトウットさんにしっかりとくっ付いていた。
リズは……。リズ、いつの間にそんな格好を? さっきまでいつものメイド服を着ていたと思うんだけど?
リズは母さんと同じような戦闘服に、いつの間にか着替えていて。手には大きな槍? のような物を持っていた。しかもその表情は、やっぱりさっきと同じ、ニヤニヤとしていて。
『リズ、あなたのやるべき事を忘れぬように』
『分かってますぅ。絶対に坊っちゃま、お嬢様からは離れません~。そして戦闘は任せてくださいぃ』
ん? 戦闘は任せてください? 俺達を守ってくれるって事を、戦闘って言っているのか? でも、なんか言い方が。それにそんなニヤニヤ顔で言われても。
『あなたは元々、最前線の戦闘部隊に所属していましたからね、安心して任せられますが。その槍でしっかりお守りするように』
『は~いぃ』
「ん? その姿に、その真っ青な槍。何処かで見た事があると思ったが。お前あの時の、海賊を全滅させた者か」
ん? 海賊を全滅?
「確かその時、最大の規模を誇っていたディノールという海賊を1人で制圧した女がいたと。が、やりすぎて、それの対処にあたっていた者達にも、色々と被害が及んだと聞いたが」
『あれはぁ、私のせいじゃなくてぇ。私の話しをきちんと聞かずぅ、側に寄ってきて怪我をした馬鹿な連中がぁ、私にやられたって、文句を言ってきただけですぅ』
『その後の海賊の処理も、大変だったと聞いているが?』
『私は自分の仕事をしっかりしましたぁ。片付けが下手だった人達の文句はしりません~』
『リズ、あの後のことをしっかりと覚えていますか? 奥様にもう1度……』
『わわっ!! 分かってますよぅ』
リズが慌てて、槍を引っ込める。リズ、リズは見かけによらず戦闘能力が凄そうだぞ。それから俺がさっき感じた違和感は、気のせいじゃない? もしかしてリズ、戦闘に関しては、結構危ない人だったりして。
そんな会話を、揺れが続いているのに、そしてその揺れと一緒に、ド~ンッ!! バ~ンッ!! と爆発音も聞こえてきたのに、普通にしていたユースタスさん達。なんかあんまり緊張感がないな。
と、ようやく揺れがおさまると、姉さんをリズに任せて、屋敷の確認のために、部屋から出て行ったアトウットさん。ただ出て行った時のアトウットさんの姿は見えなかった。魔法で素早く移動したらしい。
俺達といえば、姉さんが外の様子を見たいと、モコモコ達や小さいフルフル達もそれに続いて。俺も様子を見たかったから、見たいアピールをしたら。ユースタスさんが窓まで連れて行ってくれた。
外を見れば、いつもと変わらない光景が広がっていて、何も起きていないように感じたけど。でも確かに今俺達は攻撃を受けて。
ジッと結界の方を見る。今日は魚の姿になっている人はいない、みんな人の姿のままだ。ん? なんか動きが。よくよく見てみると、所々で変な動きをしている人達が。
「始まったな。まぁ、あれくらいなら問題はないだろう。すでにこちらの攻撃で、かなり片付けられているしな」
変な動きに見える人達は、敵に攻撃している人達らしい。遠くから見たら変な動きに見えたんだよ。敵とはもちろんシードラゴンだ。それにしてもその敵のシードラゴンの姿は?
それにユースタスさんの、すでにこちらの攻撃で、かなり片付けられているって。シードラゴンに対してかなり攻撃できているってことか? それにしては変な言い回しだけど。
俺は後から知ったけど、その時の俺はまだ、シードラゴンだけが攻撃してきたと思っていたから、ユースタスさんの言葉が不思議だった。
そしてそんなシードラゴンが何処にいるのか、結局分からず聞くことに。
「ち、ど?」
「ち、ど? 何だ?」
『おそらくシードラゴンはどこ? とおっしゃっているのでは?』
俺に見えないなスピードで、お屋敷の確認をしに行ったアトウットさんが、もう確認から帰ってきた。
「何か問題は?」
『何もありません』
「そうか」
良かった、問題はなかったみたいだ。で、俺の言ったことだけど、そうそう、アトウットさんの言った通りだよ。シードラゴンはどこって聞いたんだよ。
「シードラゴンはどこと聞いたのか?」
『『ち』がシードラゴンの『シ』で、『ど』はどこ? の『ど』だと』
「ああ、なるほど」
アトウットさんが正解!!
「シードラゴンは向こうだ」
ユースタスさんが、俺が見ていた方とは全然違う方を指差す。あっち? ユースタスさんが指した方は、お屋敷から離れている場所で、俺は目を細めてジッとその方角を見つめた。
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