第36話 事件発生?

『ちょっと行ってくるから、この子達のことをお願いね』


『は~い!! 坊っちゃまのことは、私がしっかりとお守りしますぅ』


『こちらのことはお任せください』


『なるべく早く帰ってくるつもりだけれど、もしブレンデン様から連絡が来たら、すぐに伝えにきて』


『かしこまりました』


『他のこともお任せください』


 俺は今、カータレットさんに抱っこしてもらい、そして姉さんはリズと手を繋いで、母さんに行ってらっしゃいをしているところだ。昨日の午後、俺が昼寝から覚めると、何故か屋敷の中がザワザワしていて。


 しかもいつも自由に遊んでいる姉さんが、俺の部屋で遊んだり、廊下で遊んだり、玄関ホールで遊んだりと。

 まぁ、同じ場所に長くいない姐さんが、何故かその時は俺の部屋で遊んでいないって、母さんに言われたらしく。言いつけ通りずっと俺の部屋にいてた。


 これは姉さんが、俺の隣で遊んでいる時に、早く外で遊びたいとか、お風呂で泳ぎたいとか。ブツブツ言っていて、それで分かったんだけど。


 どうも何かあったらしく、そのせいで屋敷の中がざわついていて。そして今日になったら、母さんは父さんと同じように、海へ調査しに行く事に。父さんとは別の調査に行くって事だった。


『こんなに魔獣や魚達が騒いでいるのは久しぶりだわ。それに何か変な気配もしている気がするし。あの人がいない今、私が行かないと。街の守りはいつも通りに、それからその時に応じて、何かあればすぐに避難を。グレンヴィルに息吹のパルを忘れないで』


『常に3つほど、身につけておきます。そして私共も、必ず2人体制でグレンヴィル坊っちゃま、ケニーシャお嬢様についております』


『ケニーシャ、みんなの言うことをよく聞いて、大人しく待っているのよ。ママはすぐに帰ってくるわ』


『は~い!! ママ、おみやげ!』


『はいはい。何もなければ、何かお土産を持ってくるわ』


 姉さん、母さんは決して遊びに行くわけじゃないんだよ。まぁ、いつも通りの姉さん、俺としてはちょっと安心する。

 何しろここへ来て、初めてのよく分からない出来事が起きてるんだ。緊張するなって方が無理がある。


『それじゃあ、行ってくるわね』


 母さんが順番に姉さんと俺にキスをすると、馬車ではなく風魔法を使って、海への出入り口まで飛んでいってしまった。

 風魔法を変化させると、こうしたことも出来るようになるらしい。ただ、かなりのコントロール能力が必要らしくて、初心者には絶対に無理。上級者でもかなり難しいと。


 母さんは風魔法のエキスパートで、だから簡単に使っているように見えるけど、実はそうじゃない。


『さぁ、中に入りましょう。どこで遊びましょうか』


 アトウットさんに聞かれて、姉さんが答える。お風呂!! と。俺の家に市民ホールにあるような、大きな大きな、大浴場みたいなお風呂があるんだ。


 もちろん俺はまだ入れないけれど、ここへ来て少し経って、家の中を見学させてもらった時に、その大浴場を見てとても感動した。そして早く大きくなって、お風呂に入りたいと思った。泳ぎたいとも。


 大浴場には、モコモコ専用もお風呂も用意されていて。姉さんはそのモコモコお風呂で遊びたいって言っているんだ。俺も大賛成だ。何故なら俺は、まだそのモコモコ専用お風呂でモコモコ達が遊んでいるのを、見たことがなかったからだ。


 赤ちゃんの寝ているだけだった俺に、大浴場なんか関係ないからな。行くこともなく。モコモコ達は時々遊びに行っていたが、俺は自分の部屋で留守番をしていた。


 そして、さぁ、座れるようになったぞと思ったら。今度はちょうど、大浴場のメンテナンスの時期だからと、メンテナンスが終わるまで、立ち入り禁止に。それでまた見ることができず。だからまだ見てないんだよ。


『では準備をしますので、それまでグレンヴィル坊っちゃまのお部屋でお待ちを。リズ頼みます』


『は~い!』


『は~いではなく、はい! です』


 俺の部屋へ行く前に、カータレットさんが姉さんの部屋により、濡れても良い服を持ってきた。そして俺の部屋で俺と一緒に洋風を着替えて。

 俺が着替えると、息吹のパルのブローチを付けてもらった。今の俺は、息吹のパル付きアクセサリー。ネックレスと、イヤリングと、ブローチを付けている。


 準備してから少しして、リズが俺達を呼びにきた。一緒に行くのはアトウットさんとリズだ。アンディーさんとカータレットさんは仕事に戻る。他には数人使用人さんとメイドさんがついてきてくれた。


『しゅっぱつ!!』


 姉さんの掛け声と共に、姉さんを先頭に、フェリー、ブルー、ルーちゃん、俺のモコモコ2匹が並んで。俺はリズに抱っこしてもらい、最後尾を大浴場へ向かう。

 大浴場にはついたら、モコモコ用の遊び道具が入っている木のバケツを姉さんが持って、いざモコモコお風呂へ。


 モコモコのお風呂は、地球でいうところのビニールプールの広さを2倍にした感じだ。深さは少し深いかな。姉さんも魚になれるなら、もっと深くても良いんじゃないかと思ったけど。人の姿のまま遊ぶことも考えて、あまり深くはしていないらしい。


 これは助かる。俺が大きくなって、泳ぐ練習をしないで、いきなり泳げるとは思えないからな。泳げるようになるまでの間は、このくらいの深さがちょうどだろう。


『みんな、なんであそぶ?』


『ぴぴぴ!』


『プププ?』


『ぴゅぴゅぅ!!』


『ぷぴぃ!』


『ぷぅ?』


 モコモコ達の話し合いの結果、最初はボールで遊ぶことが決まった。でもその前にひと泳ぎするらしく。お風呂に入るための台が、大きい物と小さい物が用意されているけど。大きい方にみんなで1列に並んだモコモコ達。


 さぁ、初めてだ。モコモコ達が泳ぐ姿を見るのは。一体どれくらい泳げるのか、見るのが楽しみだ。


      *********


お読みいただき、ありがとうございます。

夕方17時、夜20時更新します。

また、10万文字まで掲載しましたら、

次からはストックの関係で2話更新にさせていただきます。

その時にご連絡いたしました。

よろしくお願いします。

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