第30話 父さんの海の調査と母さんの心配
『準備はしっかりね』
『分かっている』
『忘れ物はない?』
『ああ、大丈夫だ』
『何かあった時のために、色々持っていかないとダメよ』
『全部確認した』
ソファーに座って、父さんと母さんのやり取りを見る俺と姉さん。ジト目で、俺達みたいに父さん達を見ているモコモコ達。
と、フェリーが、はぁと大きくため息のような息を吐き、ゆっくりする部屋に置いてある、モコモコ達用のクッションへ歩き出すと、それに他のモコモコも続き。みんなでクッションに乗ると何かを話し始めた。きっとまたやってるよ、みたいな事を話しているんだろう。
あのやれやれって顔。そんなに見ていない俺だってそう思うんだから、前からいるモコモコ達も、俺のモコモコ達もそう思うだろう。
父さんが少しの間、家を空ける仕事へ行くのが明日に迫り。それの準備をしているんだけど。父さんはもちろん少し前から準備を始めていて、今日は最終確認をしている感じかな。でも母さんが。
心配性の母さん。父さんがあの白い丸から荷物を出してチェックしていたら、母さんのチャックが始まっちゃって。それでかれこれ1時間くらい、今みたいに母さんの質問と確認が止まらないんだ。
まぁ これから、海の中の調査に行くんだから、心配なのは分かるけど。でも父さん達は人間の俺と違って、息吹のパルがいらない、海に生きる者達なんだから。それだけでも安心のはず。そう、父さん達は海の中でも息をできるんだ。
水に中でも陸でも関係なく呼吸ができるなんて、良いようなぁ。俺は息吹のパルが絶対に必要なのに。あ、そうそう、俺は今日はブローチを2つしてるんだ。
あの俺達を彫刻した、石をはめ込んだブローチが届いて、今日はそのブローチと息吹のパルがついているブローチを、どっちも付けている。
俺達の彫刻はとっても素敵にできていて、ちゃんと俺がいるのが分かるんだよ。今の俺の1番の宝物だ。付けていない時は、俺の部屋の棚に、透明なケースに入れて飾ってある。2番目の宝物と一緒に。
2番目の宝物はウォーターホースに貰った立て髪だ。水でできている綺麗な立て髪。普通に持って遊んでも、水が何かに付くってことも、水がなくなって立て髪が消えるってこともなく。とっても不思議な立て髪だけど、それでもお遊んでない時は、ちゃんとケースに入れて飾ってあるんだ。
それから父さんのあの、色々な物をいくらでもしまえる白い丸。あれはやっぱり空間魔法らしい。ただ父さんの場合は容量が大きいから、たくさん何でも入るらみたいなんだけど。人によっては小さくて、ほとんど入れられない人もいるって。
魔力の量と、後はその人がどれだけ練習するかによるらしい。魔力量が少なくても、努力によって、父さんくらいまでとはいかないものの、結構使えるようになる。何事も努力だな。
それで話は戻るけど、いよいよ明日は、俺の初めてのお見送りだ。俺も動きの方は進化したけど、言葉の方も進化してるんだ。最初は『ばぶ』や『あう』だったけど、この頃は『たぁ!』やら『とう!!』やら。他にも頭文字を言えるようになってきた。
ウチでは父さん母さんは、パパ、ママと呼ばせているらしく、俺もそれに合わせて、呼ぶ時は父さん母さん呼びじゃなくて、パパ、ママにすることに。まぁ、いきなり子供が父さん母さんじゃな。成長してそれなりの歳になったら変えようと思う。けど今はパパ、ママだ。
で、パパの『ぱ』と、ママの『ま』が言えるようになった。だから父さん達を呼ぶ時は『ぱぁ』と『まぁ』に。姉さんは『ねぇね』と言わせたいらしく、だから今のところ『ねぇ』だ。
そして自分のことは、父さん達は俺に僕と言わせたいらしい。俺は今まで俺できたんだけどな。いや、小学生の時は僕だったか?
今更僕? と思ったけど、これもその時に合わせて変えていこうと思って、当分の間は自分のことは僕と言うことにした。今のところは僕じゃなくて、グレンヴィルの『ぐぅ』だが。
明日は何回も父さんのことを呼んで、見送りをしよう。俺が父さんを呼ぶと、いつも父さんは嬉しそうにするんだ。だからいってらっしゃいの『い』と、パパをいっぱい言ってあげよう。
『私のことは大丈夫だから、家のことを頼むな』
『任せて。貴方が戻ってくるまで、ここは私が守るわよ。敵がくれば吹き飛ばしてやるわ』
『あ、ああ。頼むな。その敵を吹き飛ばすついでに、家も吹き飛ばさないと良いけど』
最後の方はボソッと話した父さん。母さんは荷物のチェックで聞いていなかったみたいだけど、俺はしっかり聞いていた。敵を吹き飛ばすついでに、家も吹き飛ばす? まさかまさかそんなこと。父さん、言い過ぎだよ。うん、言い過ぎなんだよな?
そういえば父さんも母さんも、どれくらいの魔法が使えるんだろう? 普通に使っているのはちょくちょく見るけど、あれは絶対に本気じゃないだろうし。本気で魔法を使ったら? 父さんは魔力量が多いいって話だし、結構な魔法を使えるんじゃ。
じゃあ母さんは? 前に風魔法と水魔法が得意って言っていたっけ。他も使えるけど、その2つが特に得意と。時々水魔法で魔獣を作って、俺と姉さんに見せてくれる。
『後は、グレンヴィルが驚いて、パニックにならないと良いけど、それに考えすぎて熱を出さないか心配だわ』
『まぁ、こればかりは、反応を見るしかないからな。案外喜ぶかもしれないぞ』
『それなら良いけど』
この間から父さんの見守りで、ちょくちょく俺を心配してくる母さん。ただの見送りなのに、本当に何でそこまで心配するんだろう。
なんて考えていた俺。でもいざ父さんを見え送りに行った時に、あんなに驚くことがあるとは思わなかった。驚くと言うか、衝撃というか。まさかって感じのことが起こったんだ。
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お読みいただきありがとうございます。
次回、午後17時、夜20時更新します。
よろしくお願いします。
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