第29話 我が道を行くモコモコと、モコモコダンス

 ハイハイに成功した日。それはそれは盛大なパーティーを開いてもらった。そう、俺の食事も、いつもの離乳食を、少しパワーアップしてもらえたんだ。

 いつもは薄味のお粥のような物。パーティーの時は、海鮮風の味のするお粥のような物に、パワーアップしてもらったんだ! ……パワーアップはパワーアップだ。


 そして父さん達には、大きな大きなケーキが用意され。俺のパーティーなのに父さん達の方が楽しんでいたんじゃないかな。そしてモコモコ達も。

 モコモコ達も今回は、大きなステーキを用意してもらっていた。俺の体よりも大きなステーキで、それお残さず完食すると、喜びのダンスを踊り。


 行動としての進化はハイハイまで完了したけれど。情報も随時更新している。その中にはモコモコのことも。モコモコは楽しい、嬉しい、テンションが上がると、1匹だろうが、複数一緒だろうが、その場でダンスをする。


 こう片足を交互にあげてリズムをとったり、あの短い足で上手にスキップしたり、コロコロ転がったり。表現は様々だけど、みんな本当に楽しそうにダンスをするんだ。歌付きで。鳴きながらダンスをするんだよ。


 俺が最初にそれを見たのは、あの寝返りを初めてした日の夜。今回みたいなパーティーを開いてもらっただろ? その後俺の部屋を戻ってから、俺はもう1度寝返りができるかとやってみたんだ。そうしたらなんと、連続3回も寝返りができて。


 その時俺のモコモコ達とフェリーが、全員で今みたいな動きを。俺は最初それを見た時、何か特別なことでも始まるのかと思ってしまった。

 その時は全員でクルクル円を描いて回っていたからな。こう魔法を使って、何かを出現させようとしているんじゃって。


 そうしたら母さんが説明してくれて、モコモコ達のダンス好きが判明いしたんだ。俺は最初の頃は寝ることが仕事ってことで、ちょくちょく寝ていたからな。俺が知らなかっただけで、モコモコ達は何回も踊っていたらしい。


 そんなダンス好きのモコモコ達。モコモコ達の食事についても色々分かった。モコモコ達は雑食だった。この国にはもちろん地球とは違うけど、果物も野菜も、魚もお肉もあって。モコモコ達はその全てを食べる。


 そして1回の食事の量は、自分の体の大きさの2倍だ。あの小さな体のどこに入るのかと思うが、それでも毎回完食している。

 そして完食の後は、移動以外はお腹を出して全員が寝るっていう。ただ丸いせいで、何回もコロコロ転がっているけれど。そこがまた可愛い。


 後は気候が良い日には、フラフラその辺を歩いていたり、みんなで遊んでいても、その最中に突然寝始めるっていう。最初に廊下を移動していて動かなくなった時には慌てた。声をかけても反応がなかったしな。


 でもそんな慌てる俺に、母さんは大丈夫よと言って、モコモコの前でパチンと手を鳴らした。

 するとムクリと起き上がるモコモコ。そしてしょぼしょぼ顔のまま周りを見渡し、その後いけないいけない、とそう見えるように笑うと、また俺たちの後をついてきた。


 基本モコモコ達は自分の気持ちに素直で、遊びたいと思えばいつでも遊び始め、寝たいと思ったら、どんなに動いていてもその場で寝る。

 と、まぁ、色々とビックリすることが多いけど、こんなふうに我が道を行くのがモコモコ達なのだ。


『そういえば、今回はどれくらいかかりそうなの?』


『ああ、今回はこの間よりも早く帰ってこられるだろう。場所も前回よりも近いからな』


『今度は保護されるような子が、いないと良いのだけれど』


『どうだろうな。必ず1匹はいるからな。それに他の種族関係じゃなくても、普通に生活していて、怪我をする時もある』


 ゆっくりする部屋で、パーティー後のお茶を父さん達が飲んでいると、そんな話しを始めた。


『この間は酷かったが、それでも全員回復に向かっている。後20日もすれば自然に帰せるだろう。その時は前の場所ではなく、別の場所へ行ってもらおうと思う』


『それが良いわね。あそこは危険よ』


『前もあそこであったからな』


『まったく嫌になるわね』


 父さんはこの国の色々を任されている、この国では結構偉い人らしい。その中には傷ついた生き物達の保護も含まれているみたいで。時々何処かへ行って、生き物を保護してくるんだ。


 そして、その生き物達は怪我が治るまで、モコモコと出会った農場みたいな場所で治療してあげて。完璧に治ると元の場所へ戻す。元の場所に戻れない場合は、他の場所へ連れて行ってあげるらしい。


 俺は最初は首は座っていなかったし、寝返りができてからも、みんなで散歩で庭に出るか、買い物以外は、外に出なかったからな。母さんが心配して、もう少ししっかりするまでは、買い物以外は庭までだって言ってさ。


 だからまだ父さんの仕事を見に行った事はないけど。姉さんは何度も父さんの仕事を見ているらしくて、父さんの見送りと、父さんが保護した魔獣を見たいって、よく言っている。


『そうだわ! 今度の調査。グレンヴィルもハイハイができるまでになったし、お見送りに連れて行ってあげようかしら』


『良いのか?』


『ハイハイができるほど、体がしっかりしてきたのなら大丈夫よ』


 母さんが俺の所へ来て俺を抱き上げる。


『グレンヴィル、今度みんな一緒に、パパのお見送りに行きましょう。行ってらっしゃいをするのよ』


 なんとハイハイのおかげで、今度の父さんの見送りに行けることになった。初めての見送りだ、元気に見送らないと。


『もしかしたらグレンヴィルは驚くかもしれないわね。そして泣くかも。パパが消えたって』


『はは、どうだろうな』


 え? 驚く? 泣く? ただの見送りだよな?


『それか理解できないで終わる可能性もあるわね』


『パパはキラキラ、ひらひら。みんなもキラキラ、ひらひら』


 そう言う姉さん。洋服がキラキラ、ひらひらは分かってるよ。それに消えるって何だ?

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