第28話 寝返りに続いてのハイハイ
そして寝返りからまた少し経って、今度はついにこの日が。俺の部屋にはもちろん俺のモコモコ達と、父さん、母さん、姉さんに父さん達のモコモコ達。
そしていつも一緒にいてくれるリズだけではなく、リズとほぼ変わらずに、一緒にいられる時は一緒にいてくれる、アトウットさん、アンディーさん、カータレットさんが集まっている。というか、この前の寝返りを見たメンバーが集まっている。
そんなみんなが集まる中心にいるのは俺。ついに俺に、この時が来たんだ。いや、くるはずなんだ。
初めての寝返りができて以降、俺はあの後も練習を続けて、寝返りは簡単にできるようになった。それからは寝ているだけではなく、座ることも簡単にできるようになって。
ただ赤ん坊で頭が重いせいか、時々後ろに転げそうになることはあったけど。その時はいつもそれを察知した俺のモコモコ達が、俺の後ろに回って、俺を助けてくれて。
寝返りとお座り。それができるようになれば、次はハイハイだと。今度はハイハイの練習を始めた。そして今日の今、ついに俺はハイハイができそうに。
それに気づいたのはもちろん、俺と一緒にいてくれるリズだ。この前の寝返り同様、相変わらずの独特な喋り方で、父さん達を呼んだリズ。ハイハイができるかもと聞いて、仕事中のはずのアトウットさん達を呼ぶ父さん。
アンディーさんとカータレットさんなんか、書類の山と、掃除用具を抱えて駆けつけてくれて。ここでやっぱりハイハイができないなんて、駆けつけてくれたみんなに、申し訳が立たない。
『グレンヴィル頑張るんだ!』
『そこよ! しっかり!』
『あたし、おうえん!! おうたうたう!』
『ケニーシャ、今はダメだ!?』
うん、姉さん、今はあの歌はやめて欲しい。
『坊っちゃま、もう少しですぞ』
『もう一息です』
『もう少しですよ』
『頑張ってくださぃ~』
うん、リズも応援してくれるのは嬉しいんだけど、頑張れだけで、今は止めてくれ。その言い方はちょっと力が抜ける。
『ぷぴ!!』
『ぷう!!』
『ピピピ!!』
『プププ!!』
『ピュピュ!!』
俺のモコモコ達、そしてフェリー達も応援ありがとう!! みんなの応援に、さらに力が入る。
今の俺の状態は、べたっと伏せをした状態から、頭は下げたまま、少しだけ腰を上げた状態だ。この状態の方が大変じゃないかと思うだろうけど、力を入れたらこうなったんだよ。まぁ、最後はハイハイの格好になって、1歩でも進めれば良いんだ。
よし、次は腕に力を入れて。腕に力を入れると、少しずつではあるけれど、グググググッ!! 上半身が上がってきた気が。力を入れるのに目を瞑っていたから、そっと目を開ける俺。感じた通り、少しだけ上半身が持ち上がっていた。けど。
べしゃ! と体が崩れる。くそぉ~、あそこまでいけたのに。俺が悔しがっていると、父さん達も悔しがって、後少しだったのにとか、もう少しだけ我慢できればとか。色々口にしていた。そしてモコモコ達もため息を。
実はモコモコ達は、感情をよく表に出す生き物だった。嬉しい時、悲しい時、楽しい時、怒っている時。同じ感情でも度合いを変えて感情を出すから、その時のモコモコも気持ちがよく分かるんだ。
この前なんか、何か気に入らないことがあったらしく、人のように『けっ!』みたいな仕草をしていて。それには流石にビックリした。可愛い姿に見合わない『けっ!』だったから。
と、それは良いんだけど、俺は再びハイハイを開始する。
『偉いぞグレンヴィル! 自分でできると思うのなら、何回でも挑戦するんだ!』
『みんないっぱい失敗するのよ。そしてどんどん成長していくの。さぁ、頑張って!!』
『グレンヴィル、がんばれ! ⚪︎△◻︎*⭐︎~♪』
父さんが急いで姉さんの口を塞ぐ。うん、姉さん、もう少しだけ、その歌は我慢してくれ。でもそうだ、俺だって1回で諦めるわけはない。次こそは成功させて進化するんだ!!
力を入れれば、またお尻だけ先に上がる。でもここまでは成功だ。問題は次だ。今度は体が持ち上がった感じがしても、目を開けずに最後まで、完璧に上がったと思うまで、力を抜かずに頑張るぞ。
さっきみたいに腕に力を入れる。そして体が持ち上がる感覚が。我慢だ我慢、今は我慢だ。まだまだ先は長い。気を抜かずに。グググッ! グググッ!!
この時俺は気づいていなかった。俺が力を入れている最中、父さん達も力が入っちゃって、声に出す応援が止まっていたことに。みんな真っ赤な顔をして、心で応援してくれていたんだ。
これはもっと後で。俺がバカ神と再び会話ができた時に、バカ神に教えてもらった。そんなに応援してくれてたなんて。それを聞いて俺が嬉しかった事は言うまでもない。
が、この時の俺は知るよしもなく。体を持ち上げることに集中していた。でもそのおかげで、さっきよりも体が上がったような気が。
それからも俺は気を抜かずに、もうこれ以上体は上がらないと思う所まで体を持ち上げて。
「あう?」
俺はそっと目を上げた。そして自分の体を見て、周りを見て。ハイハイの格好をしてる……。してるよな? 確かに俺は、潰れずにハイハイの格好をしていた。
ドキドキのまま1歩を踏み出す。気をつけながら、先ずは右手を前にちょっとだけ出して、次は左足を。左手を出して、右足を前に出す。
そうしてなんとか1歩、進んむことができた俺。そこでべしゃっと潰れてしまったが、ついに俺は、自分で1歩を踏み出したんだ。
俺が潰れた瞬間、部屋の中が一気に賑やかに。父さんは俺を抱き上げる、高い高いをしてくれて。母さんは俺をギュッと抱きしめてくれ。姉さんはいつもより大きな声で歌をいたってくれた。
モコモコ達は俺の周りを走り回って喜んでくれ、アトウットさん達もそれぞれお祝いの言葉を。
みんながこんなに喜んでくれて、俺はハイハイできた事も嬉しかったけど、みんなもことも嬉しくて、自然と笑ってしまう。
地球の時の、これくらいの歳の時の、俺の記憶はないけれど。前の父さん達もこうだったら良いなと思いながら、俺は2回目の進化を果たしたんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます