第15話 契約書にサイン、無事契約終了

『確か反応したのは、1匹だったはずだが?』


 と、母さんと父さんが話している最中、姉さんが騒ぎ出した。外で待つのではなく、モコモコを見ていたかったんだろう姉さん。母さんにモコモコいる? 一緒に帰れる? と騒ぎ始めて。そんな姉さんを父さんが抱き上げて、俺の側にいるモコモコを姉さんに見せてくれる。


『モコモコ、いっぱい!!』


『いっぱいじゃないくて2匹よ。2匹からはいっぱいになっちゃうのよね』


『まぁ、そのうちそれは自然と言えるようになるさ。と、それは今は置いておいて、何でモコモコが2匹になっているんだ? しかも完璧のグレンヴィルに懐いているし』


 母さんがここまでの事を父さんに話す。俺はその間、2匹のモコモコの囲まれてニコニコ。椅子の上に立たせてもらって、モコモコを見ている姉さんもニコニコ。そんな2人でニコニコしているうちに、母さんの話しが終わった。


『そんなことになっていたんだな。2匹がグレンヴィルの取り合いをしたって?』


『たぶんそうだと思うわ。かなり長い話し合いだったわよ。それでグレンヴィルが何かぶつぶつ言ったら、何故か話し合いをやめたの』


『まぁ、グレンヴィルを選んでもらえて良かったが、2匹もいっぺんに大丈夫なのか?』


 父さんがお店の人に色々話しを聞く。話しの流れから、2匹のモコモコと一緒に帰れるみたいだけど。まさか1度に2匹になるとは思っていなかったようで。

 まぁ、最初から一緒に連れて帰える事を考えていれば、連れて帰ることに対しては問題ないだろうけど。でも普通はこういう時1匹だろうからね。


 モコモコ同士が喧嘩しないか、その喧嘩のせいで僕と姉さんが怪我をしないか。他にも何か問題行動を起こさないか。心配で色々質問したんだ。それから他にも。


 俺の新しい家族、父さん達にもモコモコがいて。姉さんと姉さんのモコモコ、ルーちゃん。父さんのモコモコ、ブルー。母さんのモコモコ、フェリーが。そして他にも誰かのモコモコがいるらしく。急に2匹増やしても大丈夫なのか、それも聞いていた。


 まさかモコモコが、姉さんのルーちゃん以外に、まだまだ居るとは。元々モコモコがいっぱいの俺の新しい家。このまま問題なくモコモコ2匹と一緒に帰ることができれば、俺の新しい家は、更にモコモコだらけに。

 モコモコ……、たぶん抱きしめられれば、もふもふも。ここへ来てすぐにもふもふパラダイスになれるなんて。


『大丈夫です。本人達は話し合い、そしてちゃんと納得して、群れに入れてくれるでしょう。そしてそれについては、それ以降喧嘩することはありません。それにこの子達は団体でも個々でも、それほど気にしませんから。すでに家にモコモコがいても大丈夫です』


『そうか!! それならばせっかくグレンヴィルを選んでくれたんだ。2匹一緒に連れて帰ろう』


『いっしょかえる? やったぁ!!』


「ばぶぅ!!」


『あら、グランヴィル、分かっているみたいね。返事をしたわ』


『はは、それにしても一気に2匹か。私は大きな生き物は、仕事で慣れているんだが。小さい方は私ではなく、フロイドの方が理解しているからな』


『キュリス様の専門はドラゴンですからね』


『ああ。この前も数頭保護したんだが……』


 ちょっと待ってくれ! 今なんて言った!? ドラゴンって言ったのか!? この世界にはドラゴンがいるのか? しかも保護したって? それは是非とも見てみたい!!


 俺は父さんに見せてアピールをする。しかし父さんが分かるわけもなく。俺のことを分かってくれる姉さんも、流石に全部は分かってもらえず。結局ドラゴンを見せてアピールは失敗に終わってしまった。


 仕方がない。もう少し自分の事をアピールできるようになったら、ドラゴンを見せてもらおう。もしかしたら、暮らしているうちに自然と見られるかもしれないし。なにしろ保護するぐらいだからな。


『さてと、じゃあ帰るか』


『では、ちょっとお待ちを』


 建物からお店の人が出て行き、すぐに戻ってくると。その手には籠が。籠の中には毛布が敷いてあった。


『こちらサービスです。先程のように、お腹の上でバタバタされても困りますからね』


『ふふ、そうね』


『そういえば蹴りを入れていたって? 本当に大丈夫なのか? 喧嘩はしないんじゃ』


『あれは喧嘩というよりも、大好きな人を取りあっているだけよ。そのうち自分の居場所が決まれば落ち着くわ。ブルーとフェリーの時と同じよう』


『そうか、それなら良いんだが』


『では向こうで手続きを』


 母さんが俺を抱き上げて、姉さんを父さんが抱き上げた。そしてモコモコ2匹は、最初俺のお腹に乗ろうとしたけど。母さんに家まで少し歩くから籠に乗ってくれる? と言われて、ちょっと何かを考えた後に、ちゃんと籠に乗ってくれた。モコモコ、言葉が分かるのか? 


 こうして俺達は建物を出て、最初に来た時に入った建物へ移動。父さんが契約書にサインをしてお金を払い、俺とモコモコ達の契約は無事終了した。

 お金だが、とても綺麗な模様が彫られた、水色と黄緑とオレンジの、丸いコインのような物を出していた。それと黄色の四角い物も。


 これはこの世界に共通のお金なのか、それともこの国で使用できるお金なのか。バカ神が言っていた通り、悩まなくても良いことも多いが、それでもやっぱり違うところもある。これから動けるようになったら、色々調べないとな。


『では、これで契約完了です。この子達のことを、よろしくお願いします』


『ああ、家族として大切にするよ。何かあれば聞きにくる』


『いつでもどうぞ。それと治癒師が見つからない時、薬が必要ならばここへ。一応薬はきらさないようにしていますので』


『助かる。じゃあ行こうか』


『パパ、あたしがもつ!!』


『ダメだぞ、ケニーシャ。この子達は家族になったばかりだから、この子達が大好きな、グレンヴィルの側がいさせてあげような』


『あなた、私の腕に』


 父さんが母さんの腕に、モコモコが入っている籠をかける。俺からは見えないが、近くから2匹の鳴き声が聞こえた。


      *********


いつも応援ありがとうございます。

次回、夕方17時、夜20時に更新します。

よろしくお願いします。

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