第14話 俺の言葉が通じた? モコモコ達に話し合い終了

 だが俺も攻撃を受けるのは。どれだけ強力な攻撃なのか、怪我はしたいないな。この世界に来て、すぐに殺されそうになった俺。それ以上に大変なことはないが、それでもなるべく痛いお思いはしたくない。


 それにあんなに可愛かったモコモコ達に、攻撃なんてされたら。せっかくの最初のモコモコ達との出会いを、最悪なものにしたくない。どうせなら俺は、まったり姿のモコモコと帰りたいんだ。


 どうなるか分からないけど、いや、まず言葉すら話せないけど、ここはモコモコ達に訴えてみるか? 俺の気持ちが伝わるかもしれないし。それでダメなら、母さんにサッ!! と助けてもらえると嬉しいんだけど。


 俺は意を決して、モコモコ達に話しかけてみることにした。頼む攻撃しないでくれよ。


「ばぶぅ、あにょお、あぶぅ、あ~」


『ぷぴ?』


『ぷう?』


 俺が話しかけると、それぞれの怖い顔で俺の方をバッ!! と見てきたモコモコ達。こ、怖い! が、怯んでいる暇じゃない。何とか話を聞いてもらわないとってことで。


『グレンヴィル!?』


『シェリアーナ様! 今動かれてはいけません!』


 なぁ、何で喧嘩してるんだ? いや話し合いか? そろそろ話し合いを終えてくれると嬉しいんだけど。俺ちょっと今お尻がさぁ。お尻が綺麗になったら泣きやむし。

 それでその綺麗になって気分が良いまま、モコモコと一緒に帰りたいんだけど。だからそろそろ話し合いは終わりにしないか?


 なんて事を、一生懸命モコモコ達に伝えた。ばぶばぶと。俺が話している間、静かに俺を見ていたモコモコ達。良かった、ここまでは攻撃を受けなかった。後はこのまま話し合いを終えてもらって、可愛いモコモコに戻ってくれれば。


 と、最初のモコモコが、小さいモコモコの方へ向き直って。思わずビクッとする俺。が、別に攻撃されることはなく、その間に小さいモコモコも、最初のモコモコの方を見た。

 少しの間お互いを見やる2匹。先ほどまで繰り広げられていた、喧嘩のような話し合いは止まっている。


 そして本当は数分くらいなんだろうけど、何十分にも感じた沈黙を破ったのは、最初のモコモコだった。


『ぷぴ、ぷぴぴ、ぷぴぴぴぴ』


『ぷう!! ぷうぷう、ぷっうぅ!!』


 最初のモコモコが話すと、何度も小さいモコモコが頷く。すると最初のモコモコが大きな大きなため息を吐いた。それから小さい前足を前に伸ばして。すると小さいモコモコも前をを出し。お互いがお互いの手に触れたんだ。まるで握手をするような感じだ。

 そしてモコモコ達の表情は、今までの険悪なものではなく、キリッとした表情をしていて。それからお互いに大きく頷き合い。

 

 それが終わると、一気にあの可愛い、まったり顔のモコモコに戻り、俺の顔の所まで来て、最初の時のように、俺に寄り添ってくれた。


 これは俺の話しを分かってくれたのか? それとも何を言っているか分からなかったけど、俺が話し合いを邪魔したことで気が逸れて、仕方がないって話し合いを終わらせたか。どっちにしても俺も母さんも、攻撃されなくて良かった。


『これは……、色々あるけれど、先にグレンヴィルね。たぶんトイレね』


『では向こうの台をお使いください』


 母さんが俺を抱き上げようとすると、俺のお腹の上に、2匹のモコモコが乗ってきた。が、乗ったは良いが、自分が乗りたいポジションがあるのか、お互いにもう少し向こうへ行けと、短い足でちょいちょい相手を牽制し。


『ごめんなさいね。今からグレンヴィルを綺麗にするのよ。すぐに戻ってくるから、待っていてくれるかしら』


 母さんがそう言うと、母さんの方を見た後、俺の方を見てきた2匹。俺はなんとか頷こうと思ったが、それはできず。とりあえず手を振ってみることに。すると2匹はお互いを見合った後、俺のお腹から降りてくれた。


 そうして抱き上げられた俺。移動する時にテーブル上を見れば、2匹がさっきみたいに、足で蹴り合いをしていて。お互いに蹴りが届いていないが……。か、可愛い!!


『あら、トイレだと思ったのだけど、違った? 泣きそうだったのに。まぁ見れば分かるわね。それに、何でそんな変な笑い方をしているの? あなたの笑い顔、独特よね』


 いや母さん。俺はただ笑っているだけなんだけど。鏡あるかな? もしあれば後で確認してみよう。


 こうして台の上で、お尻を綺麗にしてもらった俺は、スッキリさっぱりして2匹の元へ戻った。と、その時ちょうど、外から父さんの声が。


『シェリアーナ、そろそろ大丈夫かな? どうだい? 上手く行った? ケニーシャがそろそろ限界そうだ!!』


 おお、そうだった、父さんと姉さんを待たせているんだった。あんまりモコモコが可愛くて、それから怖い一面も見て忘れていたよ。と、結局俺は、モコモコを連れて帰って良いのか悪いのか。


『ええ、終わったわ! もう大丈夫よね』


『はい、まさかの結果でしたが。これだけ懐いているのなら問題ありません』


 ドアが開く音がして、すぐに中へ入ってくる足音が。それから何かブツブツ言っている姉さんの声も。どうも待っているのに飽きてしまったらしく、早く帰りたいと文句を言っているらしい。それからルーちゃんと遊びたいと。


 さっきまで分からなかったが、おそらくルーちゃんはモコモコで。きっと姉さんも生まれた時に、モコモコと出会って、今は家族として過ごしているんだろう。


『ほら、ケニーシャ、もう帰るから。それで結果は?』


『それが、ちょっと予想外のことが起きて』


『予想外?』


『これを見て』


 父さんが俺とモコモコ達を覗き込んできた。


『これは、まさか……。2匹もか!?』

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