択を増やしても
水無月
短編
「あ゛あ゛あ゛あ゛」
「いきなり叫んでどうした」
頭がいかれたのか友達Aが教室の窓を開けて叫ぶ。馬鹿かこいつ。
「この世界は…狂ってるんだぁ!」
「どっかの漫画で言われてそうなセリフだな」
なんか巨人が出てきそうな…あれで。
これ以上は言わないけど。
「やっぱりこの世───むぐっ」
「近所迷惑になるからやめろ」
こいつが叫ぶのを止めるために口を手で塞ぐ。
きったね。こいつの唾液ついたんだけど。
気にしたら負けだ。気にしないように
──ごめんやっぱ無理だわ。
一回手を洗いに行こう。
しきりなおして
「で?どうしたんだ?」
「いや、見てくれよこれ」
手に持った紙を俺に渡してくる。
「成績表がどうした?」
「開いて見てみろよ」
もしかしてこいつ成績が悪くて叫んでたのか?
だとしたら本当に迷惑なやつじゃん。
そうなる前にちゃんと勉強し───
「いやめちゃくちゃいいやんけ!!」
「え?うっさ。黙ってくんね?」
「お前が言うな!」
ますます叫んでた理由がわかんなくなったわ。
俺は目線で説明を促す。すると友人Aはあのうざったらしい口を開く。
「まぁ俺って頭がいいじゃん?」
自分で言うなよ。口に出そうになったが長引かせたくなかったため口を結ぶ。
「で、親からどんどん資格を取れって言われてるわけ。自分の強みとなる資格を」
なるほど、たしかにそれはめんどくさそうだ。試験を受けるのはかなりの負担になるもんな。
「まぁ、試験はめんどくさい。でもそれ以上に資格を取った後がめんどくさい」
「どうしてだ?」
強みが増えるならいいじゃないか。そう思った俺を見透かしたように友人Aは続ける。
「選択肢が増えるってことは後悔が多くなるってことでもある」
「お前は後悔せずに今までを過ごしてきたか?」
問われたことを頭の中で整理して答える。
「後悔のない人生なんてないだろうな」
「だろ?それみたいにBという選択肢を選んでもCを選べばよかったと後悔する。逆も然りだ」
こいつは選択肢が増えてもそれが救いになることはないと言いたいのだろう。
「一つに打ち込んだ人間と多方面に手を出した人間。どっちが成功しやすいかは圧倒的に前者だと思う」
まぁ確かにそうだと思う。てか真面目になったこいつってなんか怖いな。
「まぁ、親の言うことを聞いた方がいいと思うけどなー」
「まぁ結局はそうなんだよなぁ」
「で?お前は何の道を進みたいんだ?」
「俺はなぁ─────
択を増やしても 水無月 @askgo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます