女神ポンコッツの祝福 数字からの解放

独身サラリーマンの場合

今日はいつもよりは少し遅い出勤予定で、出勤準備をしていたら、脳内に声が響いてきた。

窓下の通行人が服を残して消えたのを目撃して、全てを理解した。

(つまり、数字を使ったら駄目なんだ。

こんな状況なのに出社してる場合か?

上司に電話で問い合わせた方がいいのか?

いや、電話を掛けるって、数字を扱うって事だろう。仮に短縮ダイヤルを利用するにしてもアウトな可能性がある。

それ以前に、もう上司が存在していない線もあり得る。

そうだよな、会社に行くか行かないかの相談が出来るに相手がいないんだな。

行かないんなら無断欠勤をするしか無いわけだ。

仮に行くとしても、ああそうだ、ガソリンを給油しないとだ。

でもガソリンスタンドで何リットルって指定は出来ないから、満タンで伝えるしかないか。

店員さんは会計〇〇円でって言ったら死ぬから、金額が伝えられない。下手したら数字を指差すのも駄目かも知れない。

仮に金額を示すのはセーフだとして、１万渡してお釣りが発生、4230です、店員さんが言ったらアウト。

これ、会計出来ないじゃん。

そもそもお店って営業してるのか?

お金が扱えないんだから、開店できないだろう。

まぁガソリンに関しては、セルフの所で、電子マネーを使えば何となるか。

問題はその後だな。

出社して、タイムカードを押しても平気なのかどうなのか。

怖いな、そんな事に命は掛けたないし。押すべきではないな。

その後も問題は続くな、名前と社員番号はセットで記入する様式だからな。でも事情が事情だから、社員番号は勘弁してもらおう。

人員数は記入しない訳にはいかないし、休憩時間の記入も必要だしな。

第一、タイムカード押して無いんだから、給料発生しないんじゃないのか?　そうだよな、キチンと出社していましたって、証拠がないんだから。

それに世の中の仕事って殆どが数字が絡むだろ。誰も何にも出来ないんじゃないのか。

いや、待てよ。数字を数字で表さずに色で表現したらどうだろうか?

1は赤、2は青、3は黒、クロワッサンって具合だ。4が黄色で5は緑。こんな感じで表せるんじゃないのか。

そうしたら、

上司が『よしラインマーカーセットを買ってこい』

俺が『はい、何セット買えば宜しいのでしょうか?』

上司が『２０セット』

上司が消滅。

こうなる危険性が高いな。恐ろしい、恐ろしい罠だ。意図せずに強力な罠が完成してた。

ソレ以前に、給料が出るかどうかも怪しいよな。給料って金額だからイコール数字だもんな。

かと言って俺だけが無断欠勤する訳にもいかないしな。

会社に行くしかないか、今後の事は会社で相談すればいいか)

時間を確認する為に時計に目をやった。

「ヤバイ、もうこんな時間だ。予定よりも5分」

サラリーマンはこの世にサヨナラした。