第8話 エピローグ

 今日は三月十七日金曜日、桜小学校の卒業式だ。

 結局、僕の「カラオケランデブー」作戦は大成功だったと言える。あれ以来ケイが事故にあうようなことは起こっていない。ケイもすごく明るくなった。長かった髪もバッサリと切った。ショートカットになったケイは、すごくかわいく見えた(内緒だけど)。

あの一件の後、学校で先生にこってり怒られたり、少しの間僕とけいの関係をみんなに怪しまれたりしちゃったこともあったけど、今となってはどうでもいいことだ。

たっちゃんとリー君、プリンスには僕がこっそり事情を説明した。みんな驚いたり、感心したりしていたけど、なによりけいの生還を心から喜んでいた。あれ以来、ケイを含めた僕達五人は親友になった。

ライムちゃんは相変わらずだけど、僕達には何も言ってこなくなった。もちろんケイにも。ダイキとは別れたらしい。

ちなみに、例のカラオケ屋さんはあの日を最後に閉店してしまった。ケイはすごく残念がってたけど、正直安心した。もうあんな思いはしたくない。タイムスリップの楽しい思い出をありがとう。ついでに歌もすごくうまくなったしね。

「仰げば尊し」を歌った後、僕たちの終業式は終わった。僕たちは地元の公立中学校に、ケイは有名私立中学校に特待生として入学することになっている。これでケイとはしばらくお別れだ。彼女は自分の夢に向かって突き進んでいる。

それでも、実は一か月に一度は会う約束をしている。作った物を見てほしいそうだ。僕もケイがどんなすごい発明品を持ってくるのか今から楽しみだ。

「何ぼーっとしてるの、コウ。みんなで最後にカラオケ行くんでしょ?」

「ごめん。行こっか。」

「うん。」

「よしゃ、めっちゃ歌うで。」

「僕の美しい歌声を聞かせてあげるよ!」

 温かい春風が僕たちの背中を押すようにビューと吹いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る