第52話 再び国境へ
空から落下してきた塊が起こした城の破壊と地形操作による防御壁の動き。
混合回復薬をぐいっと飲んだパンナは、スノゥに説明を始めた。
「姫さま、あれはですね、空から星を落としたわけです。でも、燃え尽きてしまう。だから、大きめの星を落とし、その後ろにいい感じの距離を保った別の星があって、燃えにくくします。最後に硬い星を大きめの星を追い抜く速度で落下させ、硬い星で地中深くまで破壊させ、大きめの星で散弾として広範囲に燃やし、残りの星でとどめを刺すってわけです」
「バヴァ、よくやってくれました」
「姫さま、これってすごく小規模なんですよ」
「どういうことです?」
「以前、元の体の時、詠唱途中にエルドラド大佐から攻撃を受けました。なので、詠唱をかなり省略したのです」
「正式に詠唱したら、どうなるのですか?」
「えぇ、詠唱の長さは3倍ほどあり、破壊規模は、王国と周囲の山々は軽く消し去られたでしょう」
「・・・以前、唱えていたならば、あなたはどうなっていたの?」
「魔人化したエルドラド大佐に太刀打ち不可能なことが分かったので、全てを道連れ?巻き添え?にして、共に滅ぶ覚悟でした」
「・・・わぉ」
スノゥがとても目を丸くして、パンナの方を見ていた。
「パンナ様、一旦地上に降りて、城へ接近しましょうか?」
「そうじゃな、ゆっくり高さを戻しておくれ」
モヒートは、地形操作で高台を元に戻した。三人は、集会所の前を通ると、ドストルが驚きの表情で見ていた。
「ドストルさん、我々に何かとお世話をしてくれて、ありがとうございました。出発の時が来ました」
「パンナちゃん、君たちは何者なんだい?」
「我々パンナとモヒートは、エルドラド大佐に命を奪われ、転生した者です。もう一人は、王国の数代前の姫。それではっ!」
ドストルが、口元を手で押さえ、愕然としていた。三人は、それに対して気にも止めず、城の方に向かった。
庶民街を抜けて、城下の屋敷が並ぶ地区に入ってきた所で、パンナがスノゥに確認した。
「姫さま、お体大丈夫ですか?培養体とは言え、久しぶりの外での行動、いかがでしょう?」
「えぇ、バヴァ、こんな状況だけど、体を動かせるということに感動と
「それなら、何よりです」
三人は、一旦、革袋に入った水を飲み、呼吸を整える。そして、城が近くなったことで、パンナがモヒートに言った。
「モヒートよ、安全な距離を保っているこの場所で、土壁を下げてみてはくれないか?」
「了解しました。巨大すぎるので、下げる時に土煙が出ると思います。なので、この距離がボクらも土煙から隠れられるので良いでしょう」
モヒートは、土壁の方向に両手をかざし、同時に二つの土壁を地中に戻していく。ゴゴゴゴという地鳴りの音と共に、少し土煙が上がった。その後、土煙が落ち着くのを待って、また三人は城の方へ歩き出した。
「あの丸いやつ、何でしょうね?」
「キラキラ反射しておるな。警戒しつつ近づくぞ」
パンナとモヒートが、臨戦態勢で接近する。その場所は、城門があった場所で、門の根元だけが、かろうじて残っていた。
「なんと・・・」
パンナが把握した状況は、シャボン玉がいくつも重なったような外見、キラキラと光を反射する球形の層が幾重にも重なる中に、長い黒髪の大柄な女性が片膝をついていた。
「エルドラド大佐が、あの流星落下を間近で耐えおったか。関わると面倒じゃ、一気に通り過ぎるぞ」
「地下に潜りますか?」
「何されるか分からん、あの防御態勢を崩す前に去る!」
パンナとモヒートは、状況確認した後、三人は駆け抜ける。通り過ぎて、少し離れた時に叫ばれた。
「ヴァーさん、どこ行くんだ!闘わねぇのか!」
球形の防御を解き、立ち上がったエルドラド大佐。激しい戦闘と防御の跡が服装の破れ具合でよく分かる。二人なら、いや三人だから闘えるのではないか?そう考えるパンナだが、魔人化したエルドラド大佐の戦闘力は未知数。いや、負けるのは確実だろう。
「何言ってんだい!お前さんの今の姿、傷の回復は済んでいるのだろう?人ではなくなったお前さんが、我々と闘って何を奪う!」
パンナの回答を聞いて、ニヤッと笑うエルドラド大佐。そのやり取りを見て、モヒートは、瞳が煌めきだし、
「おい、ガラクタ!やる気だな!打ってみろ!一発、打ってみろよ!」
腰を落とし重心を低くするエルドラド大佐に対して、モヒートは、眉間にシワを寄せ、歯を食いしばり、いつでも仕掛ける状態。
そこへ一歩前に出たのは、スノゥだった。
「あなた、いい加減にしなさい!」
スノゥがエルドラド大佐に向かって指を指し叫んだ。すると、晴れていた空なのに、エルドラド大佐の真上に黒い雲が現れ、目の眩むまばゆい閃光と共に、エルドラド大佐に向かって
「え゛、何?何なの?」
「スノゥ姫、いつから・・・それを?」
「いや、モヒート、私は魔法使えないわよ」
「姫さま、もしかして、気象操作を体得されたのでは?」
「・・・あなたたち二人の体細胞を取り込んだから? はっ、今のうちに国境へ!」
三人は、エルドラド大佐が倒れているうちに、と国境検問所へ走った。
緩やかに登る坂道を進み、息を切らして、どうにか辿り着くと、1体の衛兵が国境検問所に立っていた。
「国境を越えることは、誰であろうと許可されていない」
「まだ言うか、そんな事を!」
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