猫語
みつぼし
第1話
猫がしゃべってる。いや、正確には猫たちがしゃべってる。何を言ってるかわからないかもしれない、けど僕も何が起きているか分からなかった。
「あー、あそこの家はいいよね。エサいっぱいくれる。」
「角の家はだめだ。猫嫌いのばあさんが住んでる。」
「最近キャットフードしか食べてないよ。」
まるで近所のおばさんたちが集まってうわさ話しているようだ。自分の頭がおかしくなったわけじゃないよな、話が通じるかこちらからも話しかけてみよう。
「ねえ、君たちはどうしてしゃべれるの?」
三匹の猫は一斉にこちらを見た。
「なんだあいつ、おかしなこと聞いてきて。」
じっとこちらを見た後、一番体の大きい猫が言った。話は通じてるみたいだ。本当に猫としゃべれるようになったんだ。
「だって猫がしゃべるのはおかしなことじゃないか。」
僕はそう言ったが三匹とも冷ややかな目でこちらを見ていた。
「しゃべれるに決まってるだろ。おい、ほっといて行こうぜ。きっとどこかで頭でも打ったんだ。」
さっきと同じく一番体のでかい猫がそう言って歩きだすと、残りの二匹もこちらをじろりと見た後、でかい猫について行った。
なんだつまらないな。せっかく猫としゃべれるようになったのに。そうだ、家に帰ってお母さんに話そう。
僕は誰かに話さずにはいられなかった。またふざけたことを言って。というお母さんの顔が浮かぶ。そう言われたらどこか適当なところで猫を拾ってきて話すところを見せればきっと信じてくれる。もしかしたら腰を抜かしちゃうかもな。
僕は驚いたお母さんの顔を想像しながら家間で走って帰った。心なしか体も軽く感じる。
「ねえお母さん、僕猫としゃべれるようになったんだよ。すごいでしょ。」
家に着くやいなや、外で洗たくをしていたお母さんに得意気に言った。あれ、お母さんはこんなに背が高かったっけ。
「あらあらめずらしいわね。うちの子がいつも意地悪するから猫が家に来ることなんてないのに。」
猫語 みつぼし @mitsuboshi-t
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます