『本』と一緒に行った僕の異世界はハードモード〜転生先はファンタジーな世界のはずなのに、ギルドに行っても魔法すら使えるようにさせてくれません〜
れあるん
プロローグ
「……ヒロミ。……
どこからともなく、少女の声が僕の名前が呼ぶ。僕がおそらく怪訝な表情をしながら聞き流していると、再び同じ声が僕を呼んだ。
「こっちを見て。私はあなたの後ろにいるから」
声の指示に従い後ろに身体を向けると、そこには何やらたくさん置かれた長机と椅子に座る少女──おそらく僕に声をかけた本人であろう──がいた。
しかし、その少女の周りは宇宙空間を思わせるように何もない。──いや、さっきから僕の目には、少女と長机諸々以外には何も映っていなかった。
そのせいか、少女の姿がはっきりとよくわかる。メガネをかけセーラー服を着た短髪のいかにも文学少女というようなその少女は、左手で何かの紙を押さえながらこちらを向いている。
「……あの、ここは一体?」
とりあえず僕は目の前の少女に気になることを問いかけてみる。
「一般的にいえば、死後の世界。あなたは死んだから、今ここにいるの」
いきなりおかしなことを言い出しちゃったよ、この子……。しかも至って真面目な表情でそんなことを言われたものだから、僕もつい聞いた瞬間「うん」と相槌を打ってしまった。
「いや、おかしくない? なんで僕死んでるの? なんで君はここにいるの? 仮に僕が死んでたとして、君は何者なの?」
精一杯の疑問を目の前の少女に投げかける。荒唐無稽な何某かを言われ、僕はこうする以外に何もできない。
「一、私はあなたの行く末を通達するため、ここにいる。二、あなたの死因はハイラックスに轢かれたこと。三、私は神様の一種」
唐突かつ淡々と無茶苦茶なことを言ってくる少女。
行く末がどうとかハイラックスがなんだとかもわからないが、目の前のどう考えても中高生な服を着た子が神様だと言うのは一番に意味不明だ。
……これは夢だ。この変な空間もおかしいし、きっと夢に違いない。
「ちょっと、いくらなんでもそんなはず──」
「あなた、もしかして覚えていないのかしら」
突然真剣な表情でそう言われて、僕は思わず口を閉じる。……そうだ、最後の記憶を辿ってみれば何かがわかるはずだ。
そう思い、僕は今までのことを少しずつ思い出し始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます