次女・麻雪の話

 人生、楽しければそれでいい。そう思わない?


 そんな生き様を姉に責められたあたしは、衝動のままに家を飛び出し近所にあるゲームセンターに向かった。財布から100円玉をありったけ取り出し、片っ端から機械に突っ込んでゆく。やっぱりストレス溜まった時にはコレに限るわ。


 「麻雪、貴様は金を使い過ぎなんだ!」


 頭の中で姉の声が聞こえた。あー、やだやだ。リズムゲームの機械を思いっきり叩く。いけないいけない、こんなことしてたら追い出されちゃうわ。

 100円玉がなくなったのでゲームセンターを出る。


 ふと思い立って、隣にある書店に足を踏み入れる。気が付くと、参考書コーナーに立っていた。あたしにはもう必要ないのに。

 不意に、姉のことを思い出した。あたしの誕生日プレゼントには、いつも参考書をくれたっけ。思わず苦笑する。もっとお菓子とかアクセサリーとか、女の子っぽいものをくれればいいのに。でも、そこが姉さんらしいのよね。そういえば姉さんの誕生日、明日じゃなかったかしら?


 怒っているのもバカらしくなったあたしは、数学の参考書を手に取ると一目散にレジに向かった。うふふ、姉さんの驚く顔が目に浮かぶわ。


 やっぱり人生、楽しければそれでいいのよ。

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