第27話 九角武丸、アンカグワー復活を阻止する その1
「旋風撃!」
「爆破!」
密売人の洞窟にいた龍神神社のヌル達を助けるために俺とラウラは範囲攻撃スキルで囲んでいるマジムンの海賊達を攻撃する。
「うう………殺してくれぇ………」
「くるしぃ………痛い………」
攻撃を受けたマジムンの海賊達は呻き声をあげながら助けを求めるようにこちらに向かってくる。
「その者達はアンカグワーによって生きながらアンデッド化させられています! 倒して解放してあげてください!!」
ヌルの見習いの一人がマジムンの海賊を指差して叫ぶ。
「わかった! バッシュ!!」
「ああ………ありがとう………」
マジムンの海賊にダメージを与えてヒットポイントを0にすると、全身が灰になって崩れ落ちていく。
「いてえよお、助けてくれぇ!」
「やりにくいにな! 旋風撃!!」
声優さんの演技力がいいのか、助けを求めるマジムンの海賊達の声に翻弄されそうになる。
石の狛犬達もマジムンの海賊達の足首に噛みついて転倒させたりしてダメージを与えていく。
「爆破!」
ラウラは魔法の杖の切っ先をマジムンの海賊達に向けてエネルギーの爆発で範囲ダメージを与えていく。
「ノックバックストライク! これでラスト!」
「アンマークートー マブヤーマブヤー!」
最後のマジムンの海賊を吹き飛ばして倒すと、ずっと目を閉じて念仏を唱えていたヌルが目を見開いて呪文を叫ぶ。
「ぐっ!?」
「きゃ!?」
すると、黒い蛇のようなトーテムが破裂して、トーテムがあった場所から暴風が吹き出し、洞窟内を荒れ狂い、吹き飛ばされそうになる。
そして同時に【要救助者を救う】が完了する。
「なんだ………今のは」
「アンカグワーに生け贄を捧げるための儀式トーテムを破壊しました。恐らく先ほどの暴風はアンカグワーからの抵抗です」
龍神神社のヌルことアニコは見習い達に支えられながら立ち上がる。
「アンカグワーと言うとこの島を荒らした悪龍だったか?」
「はい、邪悪なネクロマンサーが二つに砕いたアンカグワーの骨を一つにして復活させようとしているのです。海賊達はその目的も知らずに利用され、最後は生け贄に………」
ヌルのアニコはこの島で起きている出来事を話してくれる。
「でも、トーテムを破壊したし、復活しないよね?」
「残念ながらここのトーテムを破壊するだけでは復活を遅らせることはできても阻止そのものは難しいかと………」
ラウラが破壊されたトーテムの残骸を指差して話しかけると、ヌルのアニコは首を横に振って否定する。
「復活は阻止できないのか」
「この洞窟に設置されたのは復活に必要なパイプラインの一つです。大元を断たぬ限りは………うっ!? ゴホッ、ゴホゴホ!!」
「ヌル様! これ以上は命に関わります!!」
ヌルのアニコは話してる最中胸を押さえたかと思うと咳き込み血を吐く。
見習い達が駆け寄り、トーテムを破壊する行為がヌルの体にかなり負担になってることを喋る。
「残りは俺がやろう。やり方を教えてくれ」
「恐らくこの洞窟を抜けた先に儀式を行ってる場所があるはずです。これをトーテムにぶつければ阻止できるはずです」
ヌルのアニコはゼェゼェと濁った呼吸を繰り返しながら懐からクエストで取り戻した翡翠の龍神像を取り出すと念仏を唱える。
すると翡翠の龍神像は輝きを増し、龍の咆哮のようなものが聞こえた。
「龍神様の霊気を込めました。これを………」
息も絶え絶えになりながら俺に像を渡してくるヌルのアニコ。
俺は像を受けとると、洞窟の出口を目指して駆け出す。
「ぐっ!?」
「きゃっ!?」
道中マジムンの海賊達が襲ってきたが返り討ちにして洞窟を抜け出すと、立ってるのがやっとのほどの激しい暴風雨が襲いかかってくる。
「た、武丸ちゃん、あそこに誰かいるよ!」
「すぐそこなのに風がきつくて動きにくいな」
目も開けるのに苦労する暴風と雨の中、嵐の中心部と思われる場所には祭壇と魔方陣があり、魔方陣の中心部には龍の骨が並べられ、空からは龍の形をした雷雲が骨に降り立とうとしている。
祭壇の前ではネクロマンサーみたいな衣装をまとったウルトルが儀式を行っていた。
クエストは【アンカグワーが復活する前に儀式を妨害せよ】と言う内容になり、クエストラインルートは儀式の中心部に向かって伸びていく。
「ぐうう………」
「かっ、風が移動阻害効果持ってて動きにくい………」
「ギャンッ!!」
急いで魔方陣に向かおうとするが、暴風雨に阻まれて満足に動けず、ランダムに落ちてくる落雷が石の狛犬に命中してダメージを与える。
落雷が落ちる前に、ここに落ちるマークが表示されるが、狛犬達を操作しているAIはそこまで優秀じゃないのか、召喚者であるラウラに追従するので、時折落雷エリアに突っ込む。
「さすがに馬も呼び出せないか」
何とか移動速度と距離を稼ごうとフサリア馬を呼び出そうとするが、ここでは呼び出せませんとシステム側から拒否される。
必死に落雷を避けて、暴風雨に逆らうようにある程度進むと、【クエストアイテムを使いますか?】と言うウィンドが表示される。
「もちろん!」
俺は必死に腕を伸ばしてYESのパネルにタッチすると、翡翠の龍神像が懐から飛び出し、光の登り龍となって自分の骨に降り立とうとしていた黒龍の雷雲とぶつかり、天に押し返していく。
光と闇の二匹の龍が空に広がる黒雲に到達すると爆発が起こり、先ほどまで荒れ狂っていた暴風雨が吹き飛び、空では光の龍と闇の龍が争いあっている。
「派手なイベントだな………」
「おのれっ! またしても貴様が邪魔をするかっ!!」
空で戦う光と闇の龍に見とれていると、儀式を妨害されたウルトルが怒髪天といった感じの怒り顔で唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。
「ウルトル! マジムンの海賊まで犠牲にして何を企んでいる!」
「しれたことよ! この地に封印されし悪龍アンカグワーを復活させ、偉大なる闇の魔王シディアス様の贄にするためよ!」
このまま戦闘が始まるかと思ったが、会話イベントが始まる。
「魔王シディアス?」
「かつてこの世界を絶望に染め上げた偉大なる魔王様だっ! 我らは偉大なる闇の魔王シディアス様を崇拝するアンギスだ!」
ウルトルは先ほどまでの怒りなど何処か彼方に消えていったのか、両手を広げて片ひざを付いて独特なポーズで祈りを捧げる。
「その崇高な行いを何度も邪魔をした貴様は万死に値する! 偉大なる闇の魔王シディアス様! この痴れ者に罰をお与えください!!」
ウルトルは杖を掲げて叫ぶが何も起こらない。
「………うぐっ!? お、おごっ………しっ、シディアス様!? 違います! 私ではなく、この者! この者にです! シディアス様ああああ!!!」
ウルトルは急速に苦しみだすと、身体中の肉が腐って溶け始め白骨化していく。
腐り落ちた肉は泡立ちながらブクブクと膨れ上がり、腐肉の王と言うボスネームの見上げるほどの肉塊の巨人となる。
腐肉の王の右腕は拳の代わりにモーニングスターのような棘のある鉄球になっており、左腕は青紫色の炎を轟々と燃やす松明になっていた。
「うわぁ………グロいな」
「このゲーム一応R15だから」
ボス登場の演出をみていた俺は思わず感想を漏らすと、ラウラが苦笑しながらR15ゲームだと呟く。
「ともかく、こいつを倒すのがクエストの目的だし、バフを頼む!」
「うん、任せて!」
ラウラからバフを貰うと俺は太刀を抜いて構える。
「九角流兵法術門下生、九角武丸推して参る!」
俺は腐肉の王に向かって駆け出した。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:10レベル
クラス:ファイター13レベル
スタミナポイント:13レベル
パッシブスキル
刀マスタリー8レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ5レベル:単体物理ダメージ
旋風撃5レベル:範囲物理ダメージ
アサルトダッシュ2レベル:敵に突撃する単体物理ダメージ
ノックバックストライク2レベル:対象を吹き飛ばす単体物理ダメージ、吹き飛ばした先に障害物などがあると追加ダメージ
アルティメットスキル
フェイタルブロウ:クリティカル扱いで対象単体に防御無視で大ダメージを与える。
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:10レベル
クラス:魔法使い13レベル
マジックポイント:13レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光10レベル:単体HP回復
爆破2レベル:範囲魔法ダメージ
ブレス2レベル:単体魔法防御力ボーナス
守護結界2レベル:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃2レベル:単体物理ダメージボーナス
マスヒール2レベル:範囲HP回復
ライフシード3レベル:単体に一定時間HP自動回復
サモンモンスター2レベル:味方モンスターを召喚して戦わせる。
アルティメットスキル
大復活:範囲内の戦闘不能になったプレイヤー全員を復活させる。
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