第23話 九角武丸、10レベル特典に戸惑う


 レアエネミーの以津真天を倒すと、ドロップ品に交換時間制限なるものが表示されており、これまでのドロップ品にはなかった表示に戸惑う。


「ああ、レアエネミーやレイドボスがドロップする装備品はRMT対策として装備したり、交換時間が過ぎると持ち主に所有権が帰順するようになってるんだよ」

「RMT?」


 ゼノビアが知らない単語を口にして俺は聞き返す。


「ん? あんたMMOも初めてなのかい? リアルマネートレードと言って、ゲーム内のアイテムやお金をリアルのお金で購入する行為さ」

「それって課金では?」

「うんにゃ、運営を通さない個人同士のやり取りさ。まだパソコンのブラウザ画面でキャラクター動かしてた時代はRMTが横行してまともにプレイできなかったもんよ」

「あん時は業者が狩場独占したり、詐欺が横行してたねえ」


 アリスがRMTと昔のMMOについて説明すると、ゼノビアが当時を思い出したのかしみじみとした様子で葉巻を吸う。


「最初は交換時間はなくてドロップしたら即帰順だったけど、装備の種類とかいらないやつあるだろ? 店売りや解体しかないのは困るとユーザーから多く意見が寄せられて、一定時間の間は他のプレイヤーと交換出来るようになったんだ」

「へえー、そんな出来事があったんですね」


 ゼノビアは葉巻の煙をはきながら交換時間ができた経由を教えてくれる。


「ところで武丸は何を手に入れたんだい?」

「以津真天の頬面と言うアクセサリーですね。なんか特殊能力ついてます」

「へえ、悪くないじゃん」


 俺が以津真天から手に入れたのは【以津真天の頬面】というアクセサリーで、特殊能力として装備すると以津真天の怨霊弾と言う地面に当たるとダメージゾーンをつくるスキルが頬面の口から吐けるようになる。

 デメリットは一度発動すると、ディレイ時間がかなり長いので連続で使えないくらいか。


 因みにあの怨霊弾を受けると、スキルダメージと命中したキャラにスリップダメージが入るようになっている。


「あと、祟り勿怪と言うモンスターのアクセサリー装備があると両方の装備スキルのディレイ時間が短くなるらしいと書いてるな」


 更に祟り勿怪の大袖と言う肩防具とセットになっており、両方装備すると装備に追加されているスキルのディレイ時間が短くなると説明には書いてあった。


「祟り勿怪は聞いたことないね?」

「多分以津真天と同じレアエネミーじゃないかな?」


 ゼノビアとアリスに祟り勿怪について聞くが二人とも知らないのか首をかしげる。


「取りあえず、こっちの目的も終わったし、約束通りあんた達のクエスト手伝うよ」

「あ、その前にレベルアップ処理させてください」


 以津真天を倒してレベルアップしたので、ステータス画面を表示すると、運営から10レベル到達プレゼントが届いてるメッセージがあった。


「10レベル到達プレゼントの量が凄いな………」

「武丸は今のキャラが初キャラか? 運営が今やってる新規プレイヤーサポートイベントで、10レベルごとに追加でプレゼント貰えるぞ」

「こうやって新規が来てくれるとゲームが活発になるからねえ」


 運営からのプレゼント量に目を白黒させてると、ゼノビアが今やってるイベントを教えてくれ、アリスが懐かしそうにしみじみと呟く。


「5レベルごとの特典とは別で?」

「ああ、5レベルごとの特典と、今回の新規プレイヤー歓迎イベントの10レベル特典別々で貰えるぞ」

「ちょっと、特典の量が多いので少し待ってもらって大丈夫ですか?」

「あいよ」


 俺はゼノビア達に一声かけて成長処理を行っていく。


 スキルと能力ポイントが4点も貰え、10レベル達成プレゼントとしてヒットポイント、スタミナポイント、マジックポイントが一定時間二倍になる課金料理に、3種類の回復ポーションを10本分、死んだ時にその場で復活できる課金アイテムと一定時間経験値が50%アップするスクロールなどを取得していく。


「おー、装備も貰えるんだ」


 料理やポーションなど一般アイテムを取得して処理していくと、今度は全身の武器防具が貰えるようで、プレゼント一覧表から欲しい装備を選んでいく。


 武器は備前の太刀(10レベル)、そして防具は中装一覧から選んでいく。


「お? このプレゼントで貰える防具、六ケ所同じ装備するとセット効果あるのか」


 10レベル特典で貰える駆け出しの中鎧(10レベル)と言う防具は頭、肩、腕、胴、腰、足の全てに同じ名称の防具を装備をすると、ヒットポイントやスタミナポイント、物理攻撃力、クリティカル率が上昇、戦士系のアクティブスキルの消費スタミナポイントとディレイ時間が減少するとかなりいいセット効果に思える。


「このゲーム、カンストまでは装備の入れ替えはげしいからねえ」

「ですね」

「おや、ラウラちゃんは初心者じゃないのかい?」

「はい、武丸ちゃんと一緒に遊ぶためにために新しく作りました!」

「それじゃあ、あたしらがあれこれお節介焼いてあれこれ口出しするのは野暮かねえ?」


 装備も取得して処理していると、ラウラがゼノビアとアリスの会話に参加して盛り上がっていた。


「ん? ラウラ、バッシュスキルを5レベルにしたらスキル派生先を選べと出たんだが?」

「武丸ちゃん、アクティブスキルは5レベルまであげると追加効果選べるんだよ」


 スキルポイントが4ポイントも貰えたので、バッシュスキルを一気に3から5に上げると派生としてバッシュスキルにノックバック効果かスタン効果のどちらかを付与できるようになった。


「私の治癒の光は一定の確率で回復と一緒にバッドステータス解除だよ。もうひとつは対象を中心に小規模の範囲回復」

「スキルごとに派生先内容が決まってるんだ?」

「ああ、あたしのスナイプショットは有効距離延長をつけてる。もう片方はクリティカル率上昇」

「私のファイヤーアローは炎上と言うスリップダメージ追加さ。もう一個のほうは純粋にダメージアップ」


 派生スキルについて話をすると、ラウラ達が自分のスキルをどのように派生させたか説明してくれる。


「うん? ダメージ量アップって、元々スキルレベル上げればダメージ上がるのでは?」

「わかりやすく言えば、レベルアップによる追加ダメージが10なら、派生でダメージアップ選んだら15刻みでダメージが上がると思ったらいいよ」

「なるほど。取りあえずバッシュはスタン効果を着けます」


 アリスからスキル派生のダメージアップの内訳を聞きながら、残りのスキルポイントで旋風撃も5レベルにする。

 すると、スキルの派生先が攻撃範囲拡大か、範囲は今のままでダメージアップかの二択が表示されたので、俺は範囲拡大を選択する。


「ふう………最後にアルティメットスキルを選べるけど………これも種類多いな」


 10レベルに到達すると、ゼノビア達が以津真天に止めを刺した時に使っていたアルティメットスキルを一つ選べるようになる。

 ただ、単体大ダメージだったり、範囲ダメージだったり、一定時間動けなくなるが無敵だったり、防御を捨てて火力大幅上昇など、種類が多い。


「こればかりは戦闘スタイルによるから、下手に勧められない」

「まあ、スキルのやり直しは何時でも出きるからあれこれ試してみるのも手かもよ」

「私は大復活と言う、範囲蘇生のアルティメットスキルにしたよ、武丸ちゃん」


 俺がアルティメットスキルをどれにするか悩んでいるとゼノビアとアリスは懐かしそうに話し合い、ラウラは自分が選んだアルティメットスキルを教える。


「取りあえず、フェイタルブロウと言うのにします」

「確か自動命中で、クリティカル扱いの相手の防御無視だっけ?」

「それです。お待たせしました」

「なに、そんなに待ってないさ」

「それじゃあ先に進みましょうか」


 アルティメットスキルを選んで俺の10レベルアップ処理は完了し、誘拐された領主の娘を探して折れたマストを伝って次の沈没船に移動する。


「侵入者だ!」

「殺せっ!」


 次の沈没船の甲板にはマジムンの海賊達がいて、こちらを認識すると武器を抜いて襲ってくる。


「すいません、ちょっとスキルの威力とか確認させてもらっていいですか?」

「あいよ」


 ゼノビア達が応戦しようと武器を構えるが、俺はスキルの試し撃ちのために待ったをかける。


「さて、それじゃあ試させてもらうぜ!」


 俺は太刀を抜いてマジムンの海賊達に立ち向かうように走り出した。





──キャラクターデータ──


名前:九角武丸

種族:人間

キャラクターレベル:10レベル

クラス:ファイター13レベル

スタミナポイント:13レベル


パッシブスキル

刀マスタリー8レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス


豪腕:両手武器物理ダメージボーナス


獅子心:物理ダメージボーナス


剣禅一如:物理クリティカルボーナス


調薬:回復アイテムなどを作れる。


鍛冶:武器、重装防具製造可能


服飾:軽装防具製造可能


木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能


装飾:アクセサリー製造可能


アクティブスキル

バッシュ5レベル:単体物理ダメージ


旋風撃5レベル:範囲物理ダメージ


アサルトダッシュ2レベル:敵に突撃する単体物理ダメージ


ノックバックストライク:対象を吹き飛ばす単体物理ダメージ、吹き飛ばした先に障害物などがあると追加ダメージ


アルティメットスキル

フェイタルブロウ:クリティカル扱いで対象単体に防御無視で大ダメージを与える。



名前:ラウラ

種族:人間

キャラクターレベル:10レベル

クラス:魔法使い13レベル

マジックポイント:13レベル


パッシブスキル

調薬:回復アイテムなどを作れる


鍛冶:武器、重装防具製造可能。


服飾:軽装防具製造可能


木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能


装飾:アクセサリー製造可能


回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス


詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮


アクティブスキル

治癒の光10レベル:単体HP回復


爆破2レベル:範囲魔法ダメージ


ブレス2レベル:単体魔法防御力ボーナス


守護結界2レベル:単体物理防御力ボーナス


魔力の刃2レベル:単体物理ダメージボーナス


マスヒール2レベル:範囲HP回復


ライフシード2レベル:単体に一定時間HP自動回復


サモンモンスター2レベル:味方モンスターを召喚して戦わせる。


アルティメットスキル

大復活:範囲内の戦闘不能になったプレイヤー全員を復活させる。


ゼノビア

種族:エルフ

ギルド:フレッシュ! シルバーガールズ!!

キャラクターレベル:50レベル

クラス:ガンナー52レベル

スタミナポイント:65レベル


スキル:たくさん



名前:アリス・キテラ

種族:人間

ギルド:フレッシュ! シルバーガールズ!!

キャラクターレベル:50レベル

クラス:魔法使い53レベル

マジックポイント:65レベル


スキル:いっぱい

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