第20話 九角武丸、領主の心変わりの真相を知る
「ここは領主の館の裏側か?」
「マップを確認したらそうなってるね」
クエストラインルートに沿って移動すると領主の館の裏側に辿り着く。
「ここにその抜け道があるのか?」
周囲を見回しても領主の館を囲む壁があるぐらいで抜け道を示すようなものはない。
「とりあえずぐるっと回ってみるか」
「うん」
俺とラウラは手を繋ぎながら領主の館の裏側を散策する。
「ん? ここの壁………蔦で隠れてるけど穴が空いてるな」
壁沿いに歩いていると壁の一部が崩れて穴が空いてるのを蔦でごまかしてる部分を見つけた。
「武丸ちゃん、ここから領主の館内部に入れるみたいだよ」
ラウラが屈んで穴を潜り抜けると、壁の向こうから話しかけてくる。
「よっと、ここは裏庭か? とっ、ここからは不法侵入エリアか」
俺も壁の穴をくぐって敷地内に入ると、システムから不法侵入エリアに入りましたと告知される。
「使用人の服に着替えて探索を続けよう」
「うん!」
俺とラウラは洗濯屋で手に入れた使用人の服に着替えると、変装に関する説明パネルが表示される。
「此方から怪しい行動をしたり、監視者と言う特殊なNPCに近づかない限りは攻撃や通報はされないのか」
「その監視者が近くにいる時は服装にあった作業エモーションをすればやり過ごせるんだね」
説明パネルではどうやったら正体がバレるかの注意書と、頭上に瞳マークのついた監視者と言うNPCは自分を中心に前方扇形に監視スキルを常に使用しており、作業エモーション以外の行動をしていると正体を見破ると教えてくれる。
「とにかく、屋敷の内部に潜入するか」
「正面玄関は監視者がいるから裏口かな?」
まずは館敷地内をぐるりと廻る。
正面玄関には監視者NPCが二名いて、玄関を通ろうとすると監視エリアに入ってしまうようになっている。
「こっちは厨房か」
使用人用と思われる勝手口から館内に入ると、そこは厨房だった。
「武丸ちゃん、ここで作業エモーション出来るみたい」
「こっちもだ。こうやってやり過ごすんだな」
ラウラは釜戸にかけられた鍋の中身をかき混ぜるエモーションを始める。
俺は洗い場で皿を洗うエモーションを試す。
「作業エモーションはこれくらいにして、私室を探すか」
「クエストラインルートは二階に伸びてるね」
ある程度作業エモーションを確認すれば領主の私室がある上の階を目指す。
「げっ、監視者だ!!」
「武丸ちゃん! こっちに作業エモーション出来るとこあるよ!!」
二階に上がると運悪く此方に向かってくる監視者NPCがいた。
ラウラが言うように咄嗟に作業エモーションを始めれば、監視者は此方を怪しむ様子もなく通りすぎていく。
「ふう………焦った」
「ちょと驚いたね」
ラウラは窓を拭くエモーションを、俺ははたきで調度品の埃を落とすエモーションで監視者をやり過ごす。
「戻ってこないうちに進もうか」
「うん!」
道中何度か監視者との巡回にぶつかるが、作業エモーションでやり過ごす。
「ここが領主の私室か?」
クエストラインルートに沿って移動すると、一際豪華なドアに辿りつく。
「鍵がかかっているな」
ドアを開けようとすると、鍵がかかって開けられない。
鍵がかかってるのを認識すると、またクエストラインルートが複数に分岐する。
「スペアキーを手に入れるか、別ルートを見つけるか、ロックピックと言う鍵開けツールを見つけて開けるかの三卓か」
「説得や脅迫持ってたら鍵を持ってる使用人にお願いして開けさせられたね」
クエストジャーナルを確認すると、ドアを開けるのに複数の解決方法があることが書いてあった。
「俺らができるのはスペアを探すか、別ルートを探すかだな」
「別ルートだと隣の部屋を調べたらいいみたいだね」
「なら、そっちから試してみるか」
領主の私室の隣にあたる部屋は運良く鍵が空いており、忍び込める。
「家族の部屋か?」
「内装的にそんな感じだね」
隣の部屋は領主の家族の部屋っぽい。
「あー、なるほど。窓の外から領主の私室に忍び込めと」
クエストラインルートは窓に続いており、窓を開けて外を覗くと、隣の領主の私室までアスレチックしながら忍び込むルートのようだ。
「足場があるが、移動するだけでスタミナが減るな」
「私だとギリギリかも?」
窓から外に出で出っ張りや蔦などを足場にして領主の私室へと向かう。
「窓の鍵は空いててよかったな」
「空いてなかったら私スタミナ切れで落ちてたかも」
窓から領主の私室に入り込むと、俺とラウラは領主が心変わりした原因を探す。
「これか」
領主の実務用の机の上には一枚の動物の皮で作った手紙がおいてあった。
「どうやら領主の娘さんがマジムンの海賊に拐われたようだな」
手紙の内容は脅迫状で、マジムンが娘を誘拐し、無事に返してほしかったら数日の間扶桑同盟に補給を許可するなと言う内容だった。
「うーん? 補給妨害だけか?」
「どうしたの?」
「いや、海賊なら金品の要求とかしそうなのに、扶桑同盟の補給妨害だけなのが気になってな。そういうストーリーなのかもしれないが………」
「これだけだとマジムンになんの利益もないように思えるね」
俺は脅迫文を指差して違和感をラウラに話す。
「時間を稼ぎたいとか、扶桑同盟を足止めしたいとか?」
「何のためにというのがなあ………ともかく、クエストが更新されて、この手紙をカンショウとバクヤに渡せばいいみたいだ。さっさと脱出しよう」
マジムンからの脅迫文を見つけたことで、クエストが更新されたので、俺達は手紙を持って領主の館を脱出する。
「使用人の服のお陰で問題なく出れたな」
「監視者さえ気を付ければよかっただけだもんね」
壁の抜け穴から脱出すると、そのままクエスト報告対象であるカンショウとバクヤの元に向かう。
「君達か、何か掴めたか?」
「領主の私室でこれを見つけた」
クエストアイテムであるマジムンの脅迫文をカンショウに渡す。
「そういうことか………」
「んだよ、拐われて脅迫されてるとあの場で訴えればよかったのに。そしたら海賊ぶっ殺してつれてきてやるのによ」
脅迫文を読んだカンショウとバクヤは領主の心変わりに納得する。
「言えなかったとしたら?」
「あ? どう言うことだ、カンショウ?」
「おそらくマジムンの監視役があの場にいた可能性が高い。だから言えなかったのかもしれない」
「そうとれるか………」
カンショウとバクヤの二人が会話を始めて、議会にマジムンの間者がいたと言い始める。
「とりあえず、良く見つけてくれた。これはお礼だ」
「ありがたく受け取れよ」
これで一旦クエスト終了となり、経験値と報酬、そして槍か弓どちらかが貰えて、俺達は9レベルになる。
「俺達は議会にマジムンの監視役がいなかったか調べる。そっちは拐われた娘さんを救出してくれないか?」
「そうは言われても場所が」
「そこは俺に任せてくれよ。こんな特徴的な物で脅迫文を作ってくれたお陰で仕事が楽に出きる。」
レベルアップ処理を行いながら話を聞いていると、新たなクエストとしてカンショウからマジムンの海賊に誘拐された領主の娘を助けろと言われ、場所がわからないと台詞を読み上げるとバクヤがニヤリと笑う。
「急急如律令 !」
バクヤが懐から文字が書かれた黄色いお札を取り出すと、印を組んだりしながら呪文を唱えて、お札を脅迫文に張り付ける。
すると脅迫文が変化していき、一匹の蛇に変化していく。
「こいつを追いかけていきな。持ち主のとこまでお前らを案内してくれる」
バクヤがそう言うと、クエストが【蛇を追いかけてマジムンのアジトから拐われた人質を助ける】と言う内容に更新された。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:9レベル
クラス:ファイター12レベル
スタミナポイント:9レベル
パッシブスキル
刀マスタリー8レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ3レベル:単体物理ダメージ
旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ
アサルトダッシュ2レベル:敵に突撃する単体物理ダメージ
ノックバックストライク:対象を吹き飛ばす単体物理ダメージ、吹き飛ばした先に障害物などがあると追加ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:9レベル
クラス:魔法使い12レベル
マジックポイント:9レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光8レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃2レベル:単体物理ダメージボーナス
マスヒール2レベル:範囲HP回復
ライフシード2レベル:単体に一定時間HP自動回復
サモンモンスター:味方モンスターを召喚して戦わせる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます