第19話 九角武丸、会議は踊ってなにも進展しない。
銀次から晴嵐のエージェントと協力するように言われた俺達はアコンの街の中心部にある領主の館へと向かった。
「扶桑同盟の面々は弱腰すぎる! どうせ帝国とは戦争するんだ! やっちまおうぜカンショウ!」
「いいや駄目だバクヤ。戦争には大義名分が必要だ。それに我々は扶桑同盟の晴嵐代表としてきている。大義名分も無しに此方から攻め立ててみろ、蛮族の謗りを受ける」
領主の館前に行くと、二人の男女が言い争っていた。
男女二人とも古代中国の武将のような出で立ちで、二人とも京劇のような派手な白粉化粧をしている。
男性の方はカンショウと言う名前の偉丈夫で立派な黒髪の長髪に胸まで延びた髭をしており、青龍偃月刀をてに持っている。
女性の方はバクヤと言う名前で、髪を纏め結っており男装の麗人のような雰囲気があり、大きな弓矢を背負っていた。
「失礼、いいかな?」
「あ? 誰だてめぇ?」
「騒がしくて迷惑だったか? 申し訳ない」
クエストを進めようと声をかけると、バクヤはぞんざいな口調で此方をように振り向き、俺達を睨む。
カンショウはそんなバクヤを抑えるように一歩前に出て頭を下げる。
「俺達は銀次に言われて来たんだけど?」
「蘇芳の密偵とこの奴か。要らねえよ、俺らだけで解決する」
「勝手に決めるなバクヤ。協力感謝する、今は猫の手でもありがたい。状況は聞いているか?」
バクヤは唾を吐いて不服そうにそっぽ向き、カンショウはそんな態度のバクヤの頭を叩いて注意すると、此方に向かって抱拳礼をする。
「ああ、休憩が終わったら態度が変わったのだろ」
「あんな風に態度コロコロ変える奴は信用ならねえ。さっさとやっちまおうぜ」
「おまえは少し黙っていろ」
クエストを進めるために選択肢を読み上げていくと、バクヤとカンショウの性格がわかってくる。
「俺達は何をすれば良い?」
「領主の私室に忍び込んでほしい。会議が中断したあと、館の使用人に聞き回った結果、休憩を終えて私室から出てきた領主のシタツは青ざめて、慌てて会議室に走って戻った証言を得られた。そこに意見を変える何かがあると睨んでいる」
カンショウがそう言うと領主の私室に忍びこみ、心変わりの原因を探ると言うクエスト内容に更新され、なぜかクエストラインルートが複数発生する。
「なんだこれ?」
「これね、解決方法が複数あって好きなの選べるの」
行きなり増えた複数のクエストラインルートに戸惑っていると、ラウラがその意味を教えてくれる。
「どういう手段で忍び込めば良い?」
「正面からぶっ殺して進む!」
「少し黙ろうな。侵入方法はそちらの密偵の方が詳しいだろう。俺達もある程度は協力できる」
手段を聞く選択肢があったので読み上げてみるが、バクヤの意見は論外として、カンショウは銀次に聞いてみてはと言ってくる。
「わかった、聞いてくる」
「何か手段が見つかったら教えてくれ」
カンショウとバクヤとの会話を終えると、複数のクエストラインルートの一つが輝き、銀次がいる場所に伸びていると表示される。
ラウラを連れてクエストラインルートをたどっていけば、一階がオープンテラス風の酒場になっている場所に辿り着き、テーブルの一角で銀次が酒を飲んでいた。
「よお、何か進展があったか?」
「二人からあんたに領主の私室に忍び込む方法を聞けと言われた」
「ふむ………俺なら幾つか方法を考え付く。聞くかい?」
「教えてくれるか?」
「領主の兵士が愚痴ってたが、領主の娘はよく館を抜け出してるらしい。しかも厳しい監視をしているのに毎回だ。何処かに秘密の抜け道があるんだろうな」
銀次はツマミのピーナッツをポリポリ食べながら雑談のように話す。
「仮に抜け道が見つかったとしても、部外者は立ち入り禁止だ。中で見つかれば大問題だろうな。あんたらがスニーキングが得意で自信があるならそのまま忍び込めばいい。でも、自信がないなら怪しまれない格好をしろ」
銀次がスニーキングと言う単語を口にすると、スニーキングについて動画で解説するパネルが表示される。
「スキル発動みたいに口頭で言えばいいのか」
「ただ、走ったり激しい動きをするとスニーキングが解除されるし、金属製の重装備しているとばれやすいよ」
「盗賊クラスがあればスニーキングに色々ボーナスがあったのか………これは怪しまれない格好で行くのが無難だな」
動画でスニーキングのやり方を見ると今のクラス構成ではバレる確率の方が高い。
更に忍び込む場所によっては犯罪行為として罰金が発生し、衛兵NPCに追いかけられる可能性がある。
また犯罪者の間は一部のNPCを除いて売買不可能になり、犯罪者期間はバウンティクエストを受けたプレイヤーからPKされる可能性もある。
「これだけみてると、リスク高いな」
「不法侵入だけならリスク高いけど、このゲーム窃盗や強盗もできてそういった盗品を売って利益を得るシステムもあるから犯罪者プレイ楽しんでる人もいるよ」
スニーキングと犯罪行為に関する説明を受けて俺はリスクが高いと思ったが、ラウラが言うようにあえてそれを楽しむプレイヤーもいるようだ。
「スニーキングはリスクが高い。他に方法はないか?」
「なら川の近くの洗濯屋にいけ。館の使用人の制服はあそこで洗濯している。盗むか賄賂を払って横流しして貰えば、内部でうろついても怪しまれないだろう」
他の手段を聞くと、銀次は洗濯屋で館の使用人の制服を手に入れてこいと言ってくる。
「お前が忍び込むのは無しか?」
「無しだ。俺はここで酒を飲んでいるように見えるが別件で動いていて、ターゲットを見張っている。アドバイスは出来ても手は貸せない」
まあ、動けたらクエストにならないからな。
これで銀次との会話は終わりのようで、変装せずに抜け道に忍び込むか、変装して忍び込むかの二択になった。
「スニーキングに自信がないから、変装して忍び込むつもりだが、それでいいか?」
「うん、私も盗賊クラスがないし、スニーキングは苦手」
「最後に一言。流血沙汰は止めてくれ。領主の兵士やダントーイン帝国の人間と交戦したら擁護出来ない」
ラウラと軽く相談して、俺は制服がある洗濯屋に向かおうとすると、銀次から注意を受け、クエストオプションに【一度も交戦しない】と言う項目が表示される。
「なんだこれ?」
「これはクエストオプションと言って、達成するとボーナスが出るんだよ。失敗しても通常の報酬になるだけだから挑戦して損はないよ」
クエストオプションについてラウラに聞くと、ラウラが説明してくれる。
「なるほどね、失敗してもペナルティないなら悪くない」
「オプション内容によってはしんどいのもあるけどね。スニーキングで一度も見つからないとか」
そんな話をしながら俺達は川にある洗濯屋に向かう。
洗濯屋では大量の女性が川で衣服を洗い、棒で叩いて汚れを落としたり、踏んで脱水したりしている。
建物の近くには大量の洗濯物が干されて、風に靡いている。
「使用人の服はあそこか」
クエストラインルートを確認すると、大量の洗濯物が干されているエリアと、洗濯屋で働いてる女性スタッフの二つのルートに伸びている。
「洗濯物エリアが盗むルートで、スタッフが買収といった所か」
「どっちのルートでいく?」
「確認もかねて盗むルートで行ってみようか」
ラウラと一緒に洗濯物エリアに足を踏み入れると、またスニーキングの時のような動画説明パネルが表示される。
「窃盗する時は人目を気にしないといけないのか」
パネルの説明ではNPCの視界内で窃盗すると自動的に犯罪者になる。
スニーキングで隠れるか、NPCが背中を向けるなど窃盗行為を目撃出来ないように工夫する必要があると教えてくれる。
「盗んだアイテムは盗品扱いで、売却やトレードができず、衛兵に捕まると問答無用で全部没収。何処かにいる故買屋と言うベンダーNPCのみが盗品を買い取るのか………リスクありそうだし、買収するか」
窃盗の仕方など確認した俺は洗濯屋の女性スタッフに声をかける。
「何も聞かすにこの服を売ってくれないか?」
「この洗濯物を売ってくれって? 100Gなら売ってやるよ」
洗濯屋の女性スタッフに話しかけると、スタッフは値段を提示してくる。
「該当スキルがなくて選べない選択肢があるな」
「あ、それ一般スキルだね」
返答の選択肢が複数表示されるが、100Gで買う以外に値切りや説得に脅迫スキルがあれば選べる選択肢があり、ラウラがそれは一般スキル通してえくれる。
「一般スキル?」
「ステータス画面のスキル一覧見てみて」
「これか」
ラウラに言われてステータス画面のスキル一覧を確認するとズラリと並ぶクラススキルのかなり下の方に一般スキルと言う物があった。
説得や脅迫以外にも移動力のあがるスプリントやフィールド上の生産材料を見つけたり、採取量を増やすスキル等があった。
「とりあえず100Gで買おう」
「ありがとうね」
俺とラウラがそれぞれ100G出して使用人の服を手に入れる。
「あとは領主の娘が使っていた抜け道を探すだけだな」
俺達は抜け道を探すクエストラインルートを辿っていった。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:8レベル
クラス:ファイター11レベル
スタミナポイント:8レベル
パッシブスキル
刀マスタリー8レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ3レベル:単体物理ダメージ
旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ
アサルトダッシュ:敵に突撃する単体物理ダメージ
ノックバックストライク:対象を吹き飛ばす単体物理ダメージ、吹き飛ばした先に障害物などがあると追加ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:8レベル
クラス:魔法使い11レベル
マジックポイント:8レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光8レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール2レベル:範囲HP回復
ライフシード2レベル:単体に一定時間HP自動回復
サモンモンスター:味方モンスターを召喚して戦わせる。
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