第18話 九角武丸、ブラックサレナと別れる
「いやはや助かったよ、礼を言わせてくれ」
俺達が今いるのは調査団のキャンプで、遺跡の祭壇で生け贄にされそうになっていた教授が意識を取り戻し、俺達に礼を言って頭を下げる。
「あのウルトルと言う新人が今回のアンデッド発生の原因なんですか?」
「ああ、気絶させられる前に彼は自分が死霊魔術師で、マジムンの海賊と協力していたと」
ブラックサレナが教授が生け贄にされた状況を聞くと、教授は逃げ遅れたウルトルを助けにいこうとして捕まり、正体を聞かされたと説明する。
「しかし、まさかウルトルがあんな大それたことをしでかすとは………」
「学院にいた時はそんな素振りすら見えなかったのに………」
助かった調査員達が真相を聞かされて信じられないと言う顔で仲間達と話し合っている。
「確かに少々壁を作っている人だとは思いましたが、まさか死霊魔術師だったなんて」
「それに彼が遺跡から骨を持ち出した理由が気になる。アコンの街に注意喚起も含めて我々も口添えに協力しよう。それとは別にこれは命を助けてくれたお礼だ」
ユリアから事情を聞いた教授は扶桑同盟の補給に協力することを約束して、クエストが完了し、経験値とお金、そしてマジックポイントが増える学者の指輪と言うアクセサリーを貰う。
「さて、アコンの街に戻って………っと、夕食の呼び出しだ」
「こっちも来たよ」
コレリア王国の遺跡調査団クエストを終えると、銀次に状況を報告すると言う新たなクエストが発生するが、家族からの呼び出しコールがきたとシステムから知らされる。
「そういえばそんな時間ですね」
「すまないがチームはここまでと言うことで」
「はい、お疲れさまでした。あ、よろしければフレンド登録いいですか?」
「べつにいいよ」
「私も」
ブラックサレナにチーム解散することを伝え、フレンド登録をする。
「また何処かで出会えたら宜しくお願いします。僕はこのままもう少しクエスト進めていきますね。お疲れさまでした」
ブラックサレナはそう言うと、転移石を割ってアコンの街へと転移する。
「さて、この指輪どうしようかな」
「あ、武丸ちゃん、その指輪使わないなら私にちょうだい。その代わり骨の王からドロップしたの渡すから」
クエスト報酬で貰った学者の指輪、物理メインの俺には必要がないのでもて余しておると、ラウラが交換を提案してくる。
「そっちは何をドロップしたんだ? 俺は重装の靴だった」
「私はこの煙管。効果はスタミナアップ」
ラウラはそう言って助六煙管と呼ばれるデザインの煙管を見せる。
「このゲームでは煙管はアクセサリーなんだ。まあスタミナアップするなら助かるし」
「じゃあ、交換!」
ラウラはそう言って左手を差し出してくる。
「左手は現実で結婚する時にな。今はこっちで我慢しろ。ほれ」
「仕方ないなぁ~」
俺はラウラの右手を掴むと薬指にクエストで貰った学者の指輪を填めてあげる。
ラウラは口では不満そうな声を出すが、頬は赤く、笑みが我慢できずに零れている。
「それじゃあ、俺達もアコンの街に飛んでログアウトするぞ」
「あ、今回は私が石使うね」
お互いにアイテムを交換しあうと、ラウラが転移石を割ってアコンの街へ転移する。
「んじゃ、一旦お疲れ」
「はい、お疲れさまでした」
アコンの街に転移すると俺とラウラはログアウトする。
「ふう………」
動かない右腕を揉んでマッサージしながらVR 機器から降りる。
「武丸ー、ご飯よー! ログアウトしたー?」
「してるよー、母さん」
階下から母親の呼ぶ声が聞こえ、返事をしながら階段を下りる。
「それじゃあ、配膳の準備しておくから、武丸はラウラちゃん迎えにいきなさい」
「別に隣なんだから、直ぐに来るだろ?」
「武丸、あんたわかってないわね。そう言う小さな積み重ねが夫婦円満の秘訣よ。いいから行きなさい」
階段を下りてリビングダイニングに向かうと母親はラウラを迎えにいけと言う。
直ぐ隣だしご飯がてきたら勝手に来ると思っていると、母親はダメだこいつと言う顔でため息ついてダメ出ししてくる。
「ヘイヘイ」
「返事は、はいを一回よ!」
「はーい」
母親とのやりとりをしながら外に出て直ぐ隣のラウラの家のインターホンを押す。
「ラウラー、飯だぞー」
「はーい、今行くー!」
着替えて準備を終えていたのか、直ぐに出てきて俺の手を握り、我が家へと戻る。
家に戻れば夕食の準備は終えており、俺とラウラ以外はもう席についてる。
「いつもすいません」
「いいのよ、一人分ぐらい手間じゃないし、ちゃんと親御さんから貴女の食費は頂いてるし」
ラウラがいつものようにお礼をいうと、母親が声をかける。
ラウラの両親は共働きで家にいることは少なく、小さいころからの近所付き合いもあって一緒に食事をしている。
「さ、席について。せっかくのご飯が冷めたらもったいないでしょ」
「はい」
家族全員が席についたのを確認すると、じいちゃんが箸を取る。
「では頂きます」
「頂きます」
じいちゃんが箸をつけて、俺達も食事を始める。
「武丸、ゲームの戦闘はどうだ?」
「んー、結構リアルだけど………ゲームモンスター相手だとフェイトとか気当てが通用しないね」
「ほう?」
食事中、じいちゃんがゲームの戦闘について質問してくる。
「PVPはまだ未経験だけど、プログラム相手ならフェイトとか崩しとかするよりは一撃いれた方がいいかな?」
「なるほどな………そのPVPとやらを経験したらまた話してくれるか?」
「ん? じいちゃんもVRMMOに興味あるの?」
「ん? まあ、少しな………わしの知り合いが認知症予防に始めて孫娘と遊んでると聞いての。あと九角流兵法術をVRMMOに活かして新しい門下生呼び込めないかと思ってのう」
じいちゃんはそう言ってお茶を啜る。
「確かにうちの武術がVRMMOにも有効なら、VRMMO部門作って門下生募集するのもいいですね、お義父さん」
父親も話しに加わって新しい部門を作る算段を話し始める。
「とりあえず武丸や、もう少しプレイして感想聞かせてくれ」
「ん、わかった」
「私も協力します、総師範」
そんな話で盛り上がりながら夕食の時間は過ぎていく。
「さて、もう一回ログインするかな」
夕食を終えてラウラを家まで送り、就寝時間までの間もエターナルクエストオンラインで遊ぼうとログインする。
「あ、武丸ちゃん!」
「待たせたか?」
エターナルクエストオンラインにログインすると、ラウラが先にきていた。
「ううん、私も今来たところ。あそこに銀次さんいるから報告しに行こうか」
ラウラが指差す方向に遊び人風に着流しを着た銀次が佇んでいた。
「よう、上手くやってくれたようだな。良い話と悪い話があるんだが、どっちから聞きたい?」
「良い話から」
「おまえ達の尽力のお陰で龍神神社とコレリア王国の遺跡調査団二つの勢力からも補給に協力するように声明を出して、領主こシタツは補給に同意した。喜べ、俺の雇い主からおまえ達に報酬が出たぞ」
銀次がそう言うとクエストが完了して、経験値とお金、そして魔法の杖を貰った。
「で、悪い話は?」
「だがダントーイン帝国はまだ反対していて、一旦休憩に入った。休憩が終わって会議が再開すると、領主のシタツは一転して補給を拒否した」
「は? 何でだ?」
「残念ながら理由はわからん。ダントーイン帝国が同意するまで一切の補給も港の使用も禁止と言われて、会議は一旦中断して後日に持ち越しだ」
銀次は大袈裟にため息をついてお手上げだとポーズを決める。
「どうしようもないのか?」
「勿論どうにかするために動いている。おまえ達は扶桑同盟の晴嵐側のエージェントの二人に接触して仕事を手伝ってくれないか?」
銀次がそう言うと新たなクエストが始まった。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:8レベル
クラス:ファイター11レベル
スタミナポイント:8レベル
パッシブスキル
刀マスタリー8レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ3レベル:単体物理ダメージ
旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ
アサルトダッシュ:敵に突撃する単体物理ダメージ
ノックバックストライク:対象を吹き飛ばす単体物理ダメージ、吹き飛ばした先に障害物などがあると追加ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:8レベル
クラス:魔法使い11レベル
マジックポイント:8レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光8レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール2レベル:範囲HP回復
ライフシード2レベル:単体に一定時間HP自動回復
サモンモンスター:味方モンスターを召喚して戦わせる。
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