第15話 九角武丸、宝物を取り戻す
「奪われた宝物はこの隠し港の何処かにあるのか………」
マジムンの隠し港に辿り着くと、クエストが更新されて隠し港の何処かにある宝物を取り戻せと言う内容になる。
そしてクエストラインルートは発生せず、チュートリアルの光の玉が言っていたように自分で探すタイプのクエストのようだ。
「武丸ちゃん、何処から探す?」
「闇雲に探しても時間かかりそうだし、取りあえずあの船からか探すぞ」
俺はそう言って、隠し港に停泊している一隻の海賊船を指差す。
「どうやっていく?」
「無論推して参る!」
俺はそう言うと海賊船を目指して駆け出す。
「ああん、せめてバフ受けてから~、武丸ちゃーん!」
ラウラも俺を追いかけるように走り出して、後からあれこれとバフをかけていく。
「侵入者だ!」
「旋風撃!」
海賊船が停泊している桟橋まで辿り着くと、何か作業しているモーションを繰り返す二人のマジムンの海賊達がこちらに反応して武器を抜く。
開幕を宣言するように範囲物理攻撃スキルでマジムンの海賊達にダメージを与え戦闘が開始される。
「食らえっ!」
「むっ!?」
二人組のマジムン海賊の片方がボーラーを投げてきて、俺の体に命中すると移動阻害と一定時間その場から動けなくなるバッドステータスが発生する。
「しねっ!」
「おっと!」
あくまでその場から足が動けないだけで、体は動くのでもう一人のマジムン海賊の攻撃を受け流して、カウンターのように平突きで反撃する。
「武丸ちゃん、矢!」
「あぶねっ!?」
ラウラの注意喚起と同時に俺はその場にしゃがみこむと、頭上を矢が通りすぎて背後の桟橋に突き刺さる。
「あそこか」
矢が飛んできた方角をみれば、海賊船の甲板から次の矢をつがえるマジムンの海賊がいた。
「ラウラ、弓のやつ任せた!」
「うん! 爆破!!」
弓で攻撃してくるマジムンはラウラに任せて、俺は目の前のマジムンの海賊二人と対峙する。
「バッシュ!」
「ぎゃあっ!?」
旋風撃のディレイタイムが終わってないので、単体物理攻撃スキルで一人片付ける。
「ハイジャンプ!」
「へー、そんなスキルがあるんだ」
残りのマジムンの海賊はスキル名を叫ぶと跳躍して俺の頭上を飛び越えて背後に回り込む。
俺は背後から襲ってきた相手に対して体を捻って振り向き様に袈裟斬りする旋と言う九角流兵法術の技で背後に回ったマジムンの海賊を倒す。
(そうそう、この感覚だったな!)
現実では動かない右腕も、仮想現実のゲームの中ならスムーズに動き、爺ちゃんから教わった技も使える。
「さあ、もっと斬らせろ!」
俺はそのままタラップをかけ登り、海賊船の甲板に踏み込むと、ラウラの攻撃を受けても生き残っている矢を放っていたマジムン達を斬り捨てていく。
「もう終わりか? まだ斬り足りないな」
「武丸ちゃん、辻斬りじゃないんだから」
弓持ちのマジムン達はヒットポイントが低く設定されていたのか、通常攻撃一発で倒れていく。
あまりの呆気なさに不服をのべると、追い付いてきたラウラが苦笑しながらツッコミをいれてくる。
「それよりも、この船に神社から盗まれた宝物があるみたいだよ」
「お? ほんとだ」
ラウラに言われてクエスト項目を確認すると、この海賊船の船長室に宝物があるので、船長を倒して宝物を取り戻せと言うクエスト内容にいつの間にか変更されていた。
「お、いい武器や防具があるじゃないか」
「こっちも使えるのあったよ」
倒したマジムンの海賊からドロップ品を回収すると、今使っている装備よりも性能のいい武器や防具が見つかる。
「ノーマルだが、刀種別の武器がドロップしたのはラッキーだな」
「私は大幣が手に入ったよ」
俺は備前太刀と呼ばれる打刀よりも性能のいい刀と鎖帷子の中装防具を手に入れる。
ラウラは大幣と呼ばれる神社の神主がもつ棒と軽装防具を手に入れ、お互い装備を更新する。
「よし、バフを頼む」
「はーい」
俺とラウラはバフをかけると船長室に入る。
「なんだ貴様らはっ!」
船長室にいたのは当世具足に身を包んだ男でマジムン海賊船長オルハとボスカラーネームで表示されていた。
「龍神の神社から奪った宝物を返して貰うぞ」
「ぬかせっ! 返り討ちにしてくれるわ!」
戦闘前の問答イベントを終えるとオルハは刀を抜く。その刀身には雷が纏っており、バチバチと放電していた。
「死ね!」
「がっ!?」
「きゃっ!?」
オルハがその刀を地面に突き刺すと、オルハを中心に十字の形に落雷が落ちる。
そんな攻撃をしてくると思っていなかった俺とラウラは落雷の直撃を受ける。
「っ~………油断した」
「ビックリした………バフかけてててよかったね」
突入前に防御系のバフをかけたお陰で、ダメージは軽傷で済んだ。
「バッシュ!」
「ぐっ!」
「マスヒール!」
反撃とばかりに俺はオルハとの間合いを積めて単体物理攻撃スキルで攻撃する。
ラウラは後方で範囲回復スキルを発動させて、先ほどの落雷によるダメージを癒す。
「バッシュ!」
「敵も戦士系スキル使うのかっ!?」
オルハも俺と同じくバッシュと言う単体物理攻撃スキルを使って物理と雷属性ダメージをがっつりと与えてくる。
「武丸ちゃん!? 治癒の光!!」
ラウラが慌てて俺に回復スキルを行い、オルハからのダメージをほぼ回復させる。
「もう一度バッシュ! 旋風撃!!」
「邪魔だっ! ノックバックストライク!!」
「うわっ!?」
単体、範囲物理攻撃スキルをコンボのように連続で使うと、オルハはノックバックと言う吹き飛ばし効果のある物理攻撃スキルで俺を吹き飛ばし、さらに壁にぶつかると追加ダメージがはいる。
(へえ、こんなスキルもあるんだ)
ダメージを受けた箇所から伝わる振動を感じながら、まだみたこともないスキルと強敵に心が踊る。
「もう一回バッシュ!」
「ぐううっ!!」
「治癒の光、ライフシード!!」
オルハは刀を八相に構えてかけよって来るので迎撃するように単体物理攻撃スキルをお見舞いし、ラウラは必死に俺のヒットポイントを回復続ける。
「死ねっ!」
「そいつは見切ったんだよ!」
オルハは再度刀を地面に刺して十字に落雷を落とそうとするが、範囲と向きがわかれば回避は容易い。
「バッシュ!」
横に烏跳びで落雷を回避すると単体物理攻撃スキルで袈裟斬りする。
「ぐっ………ばっ、バカな………っ!?」
その一撃が止めとなり、オルハは倒れる。
「うへっ、スタミナポイントヤバかった」
「私は枯渇しちゃった」
ふとスタミナポイントバーに視線を向けると、スキル一回分しかスタミナが残っていなかった。
「さて、ドロップ品は………あの雷纏った刀じゃないんだ」
オルハのドロップ品を確認すると若武者鎧の緑等級の肩と足、そして丸薬がドロップしただけで、ボスの刀とかはなかった。
「武丸ちゃん、これみて」
「龍神の首が折れて………いや、蓋になってたのか?」
船長室の一際豪華な机の上に、盗まれた宝物でる翡翠の龍神がおいてあった。
ただ、その翡翠の龍神の置物は首がとれており、胴体内部は空洞になっていた。
「中に何か入れてたのか?」
「どうなんだろう? あのアニコのお婆さんに聞いてみようよ」
「そうだな。取りあえずほかにも何かないか調べてみよう」
胴体の空洞を覗くが、中に何かあったのかわからない。
何か中には入っていたもののヒントになるものがないか船長室を物色すると、オルハの航海日誌を見つける。
「これは厄介だな」
「置物の中にあった骨ってなんだろう?」
航海日誌には嵐を起こして扶桑同盟の艦隊に被害を出させること、神社にある翡翠の龍神の内部に隠されてる骨を必ず回収することが書かれていた。
「取りあえずこの日誌と置物を持って戻ろうか」
「なんだか大きな陰謀に巻き込まれたっぽくてドキドキするね」
「まあな」
そんな話をしながら俺とラウラは馬に乗って龍神神社へと向かった。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:6レベル
クラス:ファイター8レベル
スタミナポイント:6レベル
パッシブスキル
刀マスタリー7レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ3レベル:単体物理ダメージ
旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:6レベル
クラス:魔法使い8レベル
マジックポイント:6レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光:8レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール:範囲HP回復
ライフシード:単体に一定時間HP自動回復
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