第14話 九角武丸、宗教団体のトラブルに首を突っ込む
「戻ってきたか! 船の調理場まで持っていってくれ」
アコンの街で食材を購入し、船員に届けると調理クエストが更新され、食材を調理場まで運ぶクエストになる。
船はキャラック船タイプで暁丸という船名が刻まれている。
「この船の船員は獣人達ばかりだな」
船上や船内では猫に犬に猿など様々な種別の獣人達が働いており、通るのも一苦労だ。
「またつまみ食いにきや………誰だあんた?」
調理場に入ると、コック帽を被った虎の獣人が牙を剥き出しに怒鳴りかける。
「外にいた船員から船長の好物の食材を買ってきてくれと言われて」
「そいつは助かる! メインは俺が作るから、前菜のこれとこれをそこで作ってくれ」
俺達はさも当たり前のように調理を手伝わされる流れで調理スキルを覚えさせられる。
「前菜が鳥の丸焼きとマーチェと言うお酒って………」
「あそこの調理器具で作れるみたい」
調理場にあった鍋に近づくと、調理をしますかとパネルが表示される。
「鍋でシチューをかき回すエモーションで鳥の丸焼きが出きるんだ……」
「そこはゲームだらか………」
調理を開始すると鍋でシチューをかき回すエモーションが発動し、エモーションが終わると料理が完成する。
俺のツッコミがちな呟きに、ラウラが苦笑しながらフォローをいれてくる。
「鳥の丸焼きは一定時間HPの最大値が増えて、マーチェと言うお酒は一定時間HP自動回復か」
「レイド討伐やPVPになるとこういったバフ料理がすごく重要だよ」
出来上がった料理の効果を確認すると、前衛系の俺には嬉しい効果の料理だった。
「おう、出来上がったか? 助かったよ。それじゃあ俺は料理を船長とこまで運んでいくよ」
料理を作って納品するとサブクエストは終了して俺達は調理スキルを覚え、コックは料理を持って何処かへと消えていった。
「クエストはこれで終わりか………それじゃあメインクエストやっていくか」
「どっちからする?」
「ここからだと宗教団体の方が近いな」
あっという間に調理のサブクエストは終了し、調理場に残された俺達はワールドマップを確認してメインクエストの一つ、宗教団体で起きている問題を確認しにいく。
道中所々に散在する生産素材を採取しながら目的地に向かうと、海が見える高台に日本の神社のような建物と鳥居の門が見えてくる。
「ここでは東洋の龍を奉っているのかな?」
馬を降りて境内に足を踏み入れると、狛犬の代わりに龍を模した向い合わせの石像が鳥居の入り口から本殿までズラリと並んでいた。
本殿前ではこの神社の関係者と思われる独特の白い衣装をまとった女性達が同じデザインの赤い衣装を纏った老婆に何か訴えている。
老婆の頭上にはアニコと言う名前が表示されており、女性達は巫で一纏めされていた。
「おや、参拝ですかな?」
近づくと、アニコはこちらに気づいたように声をかけてきて、白い衣装の巫達も黙礼して老アニコの背後に下がる。
「遭難した扶桑同盟の船がアコンの街で補給を受けようとしているのですが、ダントーイン帝国の妨害を受けて補給出来ずに困っています」
幾つか返答の選択肢があったので、その中の一つを読み上げる。
「ふむ………助けてあげたいのは山々ですが、こちらも少々立て込んでいまして………」
アニコは申し訳なさそうに頭を下げる。
「ところで貴方は?」
「私は龍神様のお世話をしておりますヌルのアニコと申します。後にいる者もヌルの見習い達です」
取りあえずアニコを含む女性達が何者なのかをきく選択肢を読み上げると、アニコは聞きなれない用語の役職を名乗る。
「何かトラブルでも?」
「………お恥ずかしい話ですが、賊に入られ本殿に奉ってあった宝物を奪われました。取り戻そうにも我らは戦う術がなく困り果てておりました」
この神社で起きている問題が何かと聞くと、ヌルのアニコは賊が入ったと伝えてくる。
「ならば、俺達が宝物を取り返すから、無事取り戻せたら補給を受けられるように口添えしてくれないか」
「………わかりもうした。どこまで我らの声が届くかわかりませぬが、協力しましょう。賊は今海辺にある洞窟にいます。どうか取り戻してください」
協力を申し出る選択肢を読み上げると、クエストが更新され、目的地である洞窟までのクエストラインルートが表示される。
「ところで宝物はどんな形の物で?」
「龍神様の姿を型どった翡翠の御神体です」
出発前に盗まれた宝物がなんなのか聞くと、アニコは翡翠でてきた龍神の置物と答える。
「それだけですか?」
「はい、金品には一切てをつけず、それだけを」
「置物だけなんてなんか怪しいね、武丸ちゃん」
「まあ、取り戻せばわかるだろ」
俺とラウラは馬にのって件の洞窟まで向かう。
洞窟の入り口にはマジムンの海賊が見張りに立っていた。
どうやら神社に侵入したのはマジムン達のようだ。
「仕掛けるぞ」
「バフかけるね」
ラウラからバフスキルを貰った俺は見張りに向かって駆け出す。
ある程度近づくとマジムンの見張り達も敵対反応を見せて武器を構えてこちらに向かってくる。
「旋風撃!」
「ぐわっ!?」
「ぎゃっ!?」
範囲物理攻撃スキルの旋風撃で二人同時に攻撃すると、運良くクリティカルが発生して一撃で見張りのマジムン達を倒す。
「よし、先に進むぞ」
「あ、待って! 装備変えるから」
見張りからドロップ品を手に入れて洞窟に突入しようとすると、ラウラ側のドロップでいい装備が出たのか、装備の入れ換えを始める。
「お、巫女シリーズか」
「うん、草履がでた」
靴のグラフィックが変わったのを見てらラウラに声をかけると、ラウラは軽く脚を上げて靴装備を見せつけてくる。
「お待たせ」
「んじゃ、行くか」
俺とラウラは洞窟に足を踏み入れる。
洞窟は鍾乳洞になっており、クエストでなければ観光によさそうな場所だった。
「侵入者だ!」
「おっと、見つかったか」
特にスニーキングも何もせずに通路のど真ん中を抜き身の刀片手に進んでいたので見つかるのも当たり前だ。
「む? 敵は弓と魔法使いと戦士か」
洞窟内で出会ったマジムンは三人、一人はカトラス、一人はロングボウ、最後の一人は魔法使いのような杖を持っていた。
「バッシュ!」
「があっ!? かっ、回復を!」
先手必勝と単体物理スキルで攻撃するが、クリティカルは発生せず、カトラスを持ったマジムン戦士が魔法使いに向かって叫ぶ、
「すぐに回復してやる」
「させないっ!」
マジムン魔法使いは光の光線をダメージを受けたマジムン戦士に当てて傷を治そうとする。
そうはさせじとラウラが炎の弾を飛ばして妨害する。
「しねっ!」
「きゃっ!?」
「ラウラ!? 野郎!」
弓を持ったマジムンがラウラに向かって矢を放ち、ラウラはダメージを受ける。
ラウラが傷ついたことに俺は頭に血が上りマジムン戦士と魔法使いを無視して強引に弓持ちマジムンに攻撃を仕掛けようとする。
「バッシュ!」
それを妨害するようにマジムン戦士と魔法使いが攻撃してくるが、無視して単体物理攻撃スキルを発動させて弓マジムンの首を斬り飛ばすように刀を振るうとクリティカルヒットとなり弓マジムンを倒す。
「武丸ちゃん!」
「助かる! 旋風撃!!」
ラウラから回復スキルを受けた俺は即座に範囲物理攻撃スキルを発動させてマジムン戦士と魔法使いにダメージを与える。
「それっ!」
ラウラもそれに続くように範囲魔法攻撃スキルを動作で発動させてマジムン達に止めをさす。
「ラウラ、怪我は!?」
「武丸ちゃん落ち着いて、これはゲームだよ。ヒットポイントは減っても現実の私は傷は負わないから」
戦闘を終えた俺はラウラに駆け寄ると、矢が刺さった部分を探す。
ラウラはそんな俺を落ち着かせるように抱き締めてゲームだと言い聞かせる。
「あ………すまん、そうだったな」
「んふふ、気にしてないよ。それだけ私を心配してくれたってことだもんね。ほら、早くクエスト進めようよ」
俺は気恥ずかしくなって頭をかきながら謝罪する。
ラウラはなぜか上機嫌な感じでニコニコと笑みを溢しながら洞窟の奥へ進む。
「お、おい! まだ敵がいるかもしれないからあんまり先いくなよ」
俺もラウラに追い付くために後を追いかける。
「これは………」
「海賊の隠し港かな?」
鍾乳洞を進んだ先は入江になっており、簡易の桟橋など港として最低限の設備が整えられている。
その隠し港には一隻の船が停泊しており、帆にはマジムンのマークがペイントされていた。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:6レベル
クラス:ファイター8レベル
スタミナポイント:6レベル
パッシブスキル
刀マスタリー7レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
剣禅一如:物理クリティカルボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
鍛冶:武器、重装防具製造可能
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
アクティブスキル
バッシュ3レベル:単体物理ダメージ
旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:6レベル
クラス:魔法使い8レベル
マジックポイント:6レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
鍛冶:武器、重装防具製造可能。
服飾:軽装防具製造可能
木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能
装飾:アクセサリー製造可能
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光:8レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール:範囲HP回復
ライフシード:単体に一定時間HP自動回復
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます