俺はVRMMOでもう一度剣を掴む！

第13話 九角武丸、さらに生産スキルを覚える。

「今度はリサイクルとモデルチェンジ、それから焼き付けと改良について順番に教えていくぞ」

　鍛冶場のドワーフに再度話しかけると鍛冶スキルの続きのクエストが始まる。

「リサイクルは不要になった武器や重装防具を素材に戻す。やり方はいたって簡単、溶鉱炉にいらないアイテムを投入するだけだ。試しに何かいれてみろ」

　俺はドワーフに言われるまま、溶鉱炉にこれまで手に入れて使わないアイテムを投入する。

　すると溶鉱炉が稼働して燃えるエフェクトが発生し、鉄のインゴットやよくわからないアイテムが戻ってくる。

「リサイクルすると素材や強化材料が手に入るぞ。次はモデルチェンジのやり方だ！　鉄床に触れてみろ。モデルチェンジと言う項目が現れただろ？」

　先程は製造しか項目がなかったのにモデルチェンジと言う項目が増えていた。

「こいつはお前が持っている装備の見た目と武器種類を変える。道中いい装備を手に入れても好みのデザインじゃなくて不満に思ったことはないか？」

「あるな」

「武丸ちゃんは刀特化だから、他の種別の武器を手に入れても困るもんね」

　ドワーフの説明を聞きながら、昨日手に入れたロングソードのことを思い出す。

「このスタイルチェンジを使えば見た目と装備の種別を変えられる。と言っても限度はある。例えば両手専用武器を片手武器には変えられないし、重鎧を軽鎧にはできない」

　ドワーフが注意事項を説明すると、ウィンドパネルでも例題を載せてスタイルチェンジで出きることと出来ないことを細かく説明する。

「試しにやってみろ。本来は有料だか、今回は特別に無料だ」

　先程作った鉄のナイフを刀にスタイルチェンジする。

　見た目は打刀だが、攻撃力などは鉄のナイフのままだった。

「スタイルチェンジの注意事項として、変更できるのはお前がレシピで覚えた装備か、実際に装備したことがある武器や防具のみだからな。次は焼き付けについて教えるぞ」

　スタイルチェンジのチュートリアルが終わると最後に纏めとしてスタイルチェンジの流れを説明したパネルが表示される。

「焼き付けは専用のアイテムが必要だが、武器や防具に最大で三つの特殊能力をつけられる。武器ならダメージやクリティカル率を強化したり、防具なら防御力上昇や特定の属性ダメージ軽減などな」

「生産もやれることが多そうだな」

「こいつをやるから試しにやってみろ」

　ドワーフが渡してくれたのは武器ならダメージ強化、防具なら防御力強化するクリスタルだった。

「これ成功率とかあるのか？」

　鉄床で焼き付けを行おうとすると成功率100％と表示される。

「最初の一つは100％だが二つ目から確率が下がる。鍛冶スキルによって成功率が変わるからな」

　俺の声に反応したようにドワーフが成功率について説明する。

「取りあえず武器ダメージを強化するか」

　ハンマーで焼けた金属を叩くモーションを行い、打刀にダメージ強化を付与する。

「特に変わった感じはしないね、武丸ちゃん」

「重さも前と変わらない気がする」

　特殊能力を付与したが特に見た目も重さも変わらない。

　軽く素振りしても前と同じように思える。

「取りあえずフィールドで試し斬りしてみたら？」

「食材届ける際にそうするか」

「次に改良だが、これは装備の等級を上げる。上の等級ほどレアなアイテムが大量にいるようになるし成功率も下がるが、失敗すれば次の改良成功率が10％アップする」

「さすがに改良は無料でお試しアイテムくれないのか」

　ドワーフは改良について説明してクエストが終わってしまう。

　改良アイテムももらえるかと思っていたが世の中はそんなに甘くないようだ。

「鍛冶のクエストはこれで終わりか。他のサブクエストも受けていくぞ」

「うん！」

　次に辿り着いたのは仕立て屋で、店内には和洋中様々な国の服が飾られていた。

「あーら、お客様？　いらっしゃいませー！」

「うわぁ………濃いなあ………」

「武丸ちゃん、私ちょっとあのキャラ苦手」

　マネキンの前で仮縫いをしていた店主が俺達に気づいて声をかけてくる。

　ラウラは店主の姿をみて俺の背後に隠れる。

　応対してきた店主はエルフだった。

　ただ、身長2mのゴリマッチョで、ドラァグクイーンみたいな化粧とラメ入りのピッチリラバースーツの上から歌劇団の人が着ていそうなフリルが分段に施された派手な衣装だった。

「ふっ、服飾に興味があって」

「んまっ！　そうなの？　お姉さんが手取り足取りねっとり教えてあげるわん！」

　ラメ入りのマスカラで強調された目力でこちらを見つめられて思わず後退りしてしまうが、話を続ける。

　クエスト内容は鍛冶とほぼ同じでフィールドで生地の材料となるコットンや、これまでの戦闘で手に入れた動物の皮を加工して防具を作る。

　リサイクルとモデルチェンジに改良、焼き付けが服飾では刺繍と言う名称になっており、俺は製造のチュートリアルで作ったハチマキに防御力上昇を付与する。

　そして、服飾には鍛冶にはなかった染色と言うシステムがあった。

「染色は装備の色を変えるのよ。同じデザインでも色合いをかえれば、貴方だけのオリジナル装備になるわ！　専用の設備と別途染色素材がいるけどね」

　エルフの店主は染色の素材は店売りやドロップ、一部のクエスト報酬や課金アイテムで手に入ると教えてくれる。

「濃いNPCだったなあ」

「次のクエストNPCは普通だといいな」

　服飾のサブエストを終えて、次のサブクエストに向かう。

「今度は木工かな？」

「なんだ、おめえら木工に興味あるっぺ？」

　たどり着いたのは街外れの製材所。

　サブクエストマークがある猿の獣人に話しかけると、独特のイントネーションで応答してくる。

「このゲームでは盾や弓は木工で作るのか」

　木工のサブクエストでチュートリアルを受ける。

　木工では魔法の杖、弓、盾、そしてハウジングコンテンツの家具が製造できる。

　原材料も他の生産職と同じくフィールドに点在する伐採できる木から手に入れて専用の設備で木の板に製材し、特殊能力を付与する行為は木工では彫刻と名称され、俺はチュートリアルで作った弓に、ラウラは魔法の杖扱いの神楽鈴に攻撃力上昇を付与する。

「あ、レベルアップしたな」

「生産系のサブクエストも経験値と報酬が出たもんね」

　木工のサブクエストが完了するとレベルアップのエフェクトが発生する。

　成長ポイントをスタミナに割り振り、スキルポイントでクリティカル率が上がる剣禅一如と言うパッシブスキルを覚える。

「次はアクセサリー系の生産スキルか？」

　次のサブクエスト目的地は宝飾品の店だった。

「いらっしゃいませ！」

「え？　子供？」

　店に入ると、小学校低学年の子供が応対してきて、俺は思わず驚いた声を漏らす。

「おや、リピリーと言う種族をみるのは初めてですか？　僕達はこれでも成人男性ですよ」

「武丸ちゃんはキャラ作成時に種族ちゃんと確認しなかった？」

「あー、もう人間でいくと頭から決めててちゃんと確認してなかったな」

　俺が驚いたことにリピリーと言う種族のNPC反応して、自分達の種族特徴を説明し、ラウラがキャラ作成時の種族選択でリピリーと言う種族が選べたと教えてくれる。

「えーっと、装飾に興味があるのだが」

「それはそれは、僕が責任をもって教えます」

　俺は気を取り直して装飾のサブクエストを開始する。

「装飾の原材料は金属です。鍛冶と材料が被るので気をつけてください」

「両方覚えてると便利そうだな」

「前のキャラの時知り合った人たちは大体そうだったよ」

　ラウラとそんな話をしながら、リピリーの店主からリサイクルやスタイルチェンジの説明を聞く。

　装飾の特殊能力を付与する名称は象嵌といい、元々アクセサリーは特殊能力がついてるアイテムなので他の生産スキルよりも成功率と必要材料が厳しかった。

「最後はこの露天か」

　ラウラを連れてやってきたのは露店商が立ち並ぶエリア。

「ロボット？」

「エターナルクエストオンラインの世界ではオートマンと言う機械文明の末裔設定だよ」

　サブクエストマークがついてるNPCを見つけるが、その外見は一言でいうと1960～1970年代のレトロSFに出てくるようなロボットだった。

「いらっしゃい！　転移石はいかが？」

「転移石？」

　オートマンと言うロボット種族に話しかけると、古めかしいスピーカ音声で応答してくる。

「転移石と言うのは設定した座標に即座に移動できるアイテムさ。ためしにやってみるかい？」

　オートマンの商人は捲し立てるような感じでクエストが始まり、手帳と一本の羽ペンと石を一つ渡してくる。

「転移する座標はこの手帳に専用のペンで書き込まないと登録されない。まずはペンでここの座標を書き込むんだ」

　オートマンの商人に促されてアイテム一覧でペンを使うと、手帳に【アコンの街】と言う文字が記入される。

「それじゃ少し離れた場所でこの石を地面に叩きつけるんだ。そうしたら一定時間転移ゲートが発生するから、それに飛び込めばここに戻れるよ」

　オートマンの商人の説明が終わると、街の外で石を使えとクエスト内容が更新されてクエストラインマーカーが発生する。

「この辺りで転移石を使えばいいんだな」

　街の外に出ると、俺は貰った転移石を地面に叩きつける。

「おー、面白いエフェクトだな」

　地面に転移石を叩きつけると、転移石が粉々になり、その粉が勝手に動き出して魔方陣を描く。

「うげっ、ゲートは10秒しか発動しないのか！」

　魔方陣が完成すると、数字が現れてカウントダウンを始める。

　慌てて魔方陣に飛び込むと、瞬きぐらいの瞬間で風景が街の外から露店通りに変わる。

「無事転移できたみたいだな。座標を登録するペンと転移石は俺達しか販売してないからな！」

　クエストが終了すると報酬としてペンと転移石を5個貰えた。　

「これでアコンの街で受けられるサブクエストは全部受けたな。食材届けてメインクエスト進めるか」

「レッツゴー！」

　またラウラを馬の後ろに乗せて俺は船員の元へと向かった。

──キャラクターデータ──

名前:九角武丸

種族:人間

キャラクターレベル:6レベル

クラス:ファイター8レベル

スタミナポイント:6レベル

パッシブスキル

刀マスタリー7レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス

豪腕:両手武器物理ダメージボーナス

獅子心:物理ダメージボーナス

剣禅一如:物理クリティカルボーナス

調薬:回復アイテムなどを作れる。

鍛冶:武器、重装防具製造可能

服飾:軽装防具製造可能

木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能

装飾:アクセサリー製造可能

アクティブスキル

バッシュ3レベル:単体物理ダメージ

旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ

名前:ラウラ

種族:人間

キャラクターレベル:6レベル

クラス:魔法使い8レベル

マジックポイント:6レベル

パッシブスキル

調薬:回復アイテムなどを作れる

鍛冶:武器、重装防具製造可能。

服飾:軽装防具製造可能

木工:魔法の杖、弓、盾、家具製造可能

装飾:アクセサリー製造可能

回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス

詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮

アクティブスキル

治癒の光:8レベル:単体HP回復

爆破:範囲魔法ダメージ

ブレス:単体魔法防御力ボーナス

守護結界:単体物理防御力ボーナス

魔力の刃:単体物理ダメージボーナス

マスヒール:範囲HP回復

ライフシード:単体に一定時間HP自動回復