第12話 九角武丸、アコンの街へ行き、生産スキルを覚える


「武丸ちゃん、お待たせ!」

「俺も今来たところだ」


 翌日、学校を終えて夕食を済ませた俺はエターナルクエストオンラインの中でラウラと合流する。


「取りあえず目的地のアコンの街まで行くか」

「折角だから馬に乗って行こうよ」


 クエストとマップを確認しながら次の目的地であるアコンの街までのルートを確認すると、ラウラから提案される。


「徒歩で行くには少し遠いし、そうだな」


 俺はシステムから5レベル達成プレゼントでもらった葦毛の馬を召喚する。

 何もない空間に魔方陣が現れると、魔方陣からニュッと生えてくるように葦毛の馬が現れた。


「ブルルッ」

「本物の馬をちゃんとみたことないが、かなりリアルだな」

「何でもスタッフの中に拘る人がいてわざわざ馬にモーションキャプチャーつけたなんて噂があったよ」

「ガチ過ぎるな」


 召喚された葦毛の馬は本当に生きてるかのように草を食べたり、うろうろしたりする。


「名前を決めたり、装備を着けたり、スキルも覚えるのか?」

「うん、ペットにも色々出きるよ」


 葦毛の馬のステータス画面を確認すると、名称を変更したり、鞍など装備をつけられる項目がある。


「よし、それじゃあ………ラウラは召喚しないのか?」

「武丸ちゃん、ペットの種類にもよるけど複数人騎乗できるんだよ」


 馬に乗るのは初めてなのに、問題なく鞍に座り手綱を握る。

 出発しようかとラウラを見ると、馬を召喚しておらず、さも当然のように俺の馬に同乗して抱きついてくる。


「仕方ないな、しっかり捕まってろよ」

「うん!」


 ラウラを乗せて俺は馬の腹を蹴って駆け出す。

 パカラッパカラッとリズミカルな馬の足音と揺れ、通り過ぎ去る自然の風景と顔に当たる風がとても気持ちよかった。


「変わった家が多いな」


 アコンの街に辿り着くと道は整備された石畳で、昔テレビでみた沖縄の古民家や歴史的建造物みたいな家が立ち並ぶ異国情緒のある街並みだった。

 

「幾つかサブクエストをくれるNPCがあちこちにいるみたいだな」

「メインとサブ、どっちからする?」

「取りあえずメインから済ますか」


 馬に乗って街並みを散歩していると、ミニマップのあちこちにサブクエストのマークが表示されている。

 興味が惹かれるが、まずはメインから終わらせたい。


「あんたが明智殿が言っていた現地の協力者かい?」


 クエストラインマーカーに沿って移動していると、川を渡る桟橋で江戸時代の町人風の出立をした男性NPCの頭に勢力クエストマークの黒星が表示されていた。


「貴方は?」

「俺の事は銀次と呼んでくれ。小銭稼ぎに扶桑同盟のメッセンジャーとかやってるのさ」


 銀次は袖の中に腕を隠して軽薄そうな笑みを浮かべて自己紹介する。


「扶桑同盟の船の補給物資を売ってくれないとか?」

「この島は表向きは中立を唱っているが、実際は様々な勢力の補給中継地点として丁度よい場所でな、色々と横やりが入るし、島の領主はあれこれ配慮が必要なんだよ。今回の発端はダントーイン帝国側が扶桑同盟が自分達の海域を侵略してると主張してな、補給は戦争の利敵行為と見なすと言って補給を受けさせないように妨害してるんだ」


 銀次に状況を聞くと、俺やラウラではどうしようも出来ない政治的な話をしてくれる。


「それで、俺達にどうしろと?」

「簡単さ、味方を増やす。今この島にコレリア王国の遺跡調査団が来ていて、ちょっとトラブルに巻き込まれてる。あと地元の宗教団体でも何か問題が起きているらしいぞ」


 銀次は独り言のように状況を呟くと【遺跡調査団に協力する】と【地元宗教の様子を伺う】と言う勢力クエストが発生する。


「それじゃあ何か進展があったら来てくれ、俺はちょいと一杯引っ掻けてくるよ」


 銀次はそう言うとそそくさと立ち去っていく。


「メインクエストは遺跡と宗教の問題か………」


 マップでクエストの目的地を確認すると、それぞれの目的地は島の東西に別れている。


「どちらも遠いね」

「まずはここのサブクエストを済ませるか。取りあえず船員に頼まれてた食材から購入するか」


 距離的な問題からメインクエストは一旦保留して街で受けられるサブクエストから済ませることにし、まずは食材を売っているNPCベンダーの元へ向かう。


「購入するのは鶏肉と小麦と酵母がそれぞれ一つだったな」

「うん、それであってるよ」


 必要な材料を購入すると、船のコック長の所に持っていくと言うクエスト内容に変わる。


「うーん、戻る前に他のサブクエストも受けておくか」

「往復めんどくさいもんね」


 現在地から近いサブクエストをくれるNPCの元に向かうと、そこは鍛冶場だった。


「あんた! 鍛冶に興味ないか?」

「ドワーフか?」


 サブクエストをくれるNPCはスキンヘッドに髭飾りを無数につけた髭もじゃずんぐりマッチョのドワーフだった。


「興味はあるな」

「よし、やり方を教えてやる!」


 酒焼けしたような声でガハハと笑いながらドワーフは鍛冶のやり方と言うクエストをくれる。


「まずは原材料である鉱石を一人10個集めてこい。ここから北の山あいに鉱脈があるぞ」


 ドワーフがそう言うと、鉱石を集める0/10と言うクエストが始まり、ミニマップにマーカーが表示される。


「ラウラ、つるはしとか買わなくてもいいのか?」

「そこは大丈夫、モーションで勝手につるはし出てくるよ」


 クエストで採掘してこいと言われるが、採掘道具なんて持っていないし、店で売ってないのでラウラに質問する。


「因みに課金アイテムやガチャでモーションを変えるアイテムもあるよ」

「ほー、例えば?」

「採掘ならつるはしの変わりに拳で鉱石割ったりとか」

「すごい豪快だな」


 そんな話をしながら俺はラウラを乗せて鉱脈があるエリアに向かうと、ポップアップする岩の塊につるはしで採掘しているプレイヤー達が何人かいた。


 ポップアップする岩に視線を向けると鉱脈岩と表示され、パネルには採掘しますかY/Nと言うテキストが書かれている。


 採掘すると鉄鉱石が数個手に入る。

 これを繰り返して目標数集めると、あのドワーフの元へ戻れとクエスト内容が変わる。


「早速集めてきたようだな! 原材料の鉱石を溶鉱炉でインゴットに変えてみろ」


 ドワーフが指差す方向にはピザの石窯みたいなオブジェクトがあり、そこに鉱石を投入すると数秒で鉄のインゴットに変換される。


「鉱石のなかには高品質なんて名称がつく時がある。そいつをインゴットにかえれば高品質な装備を作れるぞ」


 鉄のインゴットを作り上げるとドワーフは高品質品の話をする。


「次に装備の作り方だが、設計図が必要だ。こいつをやろう。使ってみろ」


 ドワーフはそう言って一枚の羊皮紙を渡してくる。


「ナイフの設計図?」

「設計図は店売りやドロップ、デイリー生産クエストなどで手に入るぞ」


 ナイフの設計図を使うと、ステータス画面にレシピ帳と言う項目が現れ、覚えたレシピ一覧にナイフが表示される。


「レシピは覚えたか? あそこの鉄床で早速作ってみろ」


 ドワーフに言われるままに鉄床に向かうと、現在作れる一覧からナイフと必要材料が表示される。


 説明を受けながら生産ボタンを押すと、調薬の時のように体が勝手に動き、ハンマーを持って金属を叩くモーションを始め、鉄のナイフを完成させる。


「以上で鍛冶は終わりだ! な、簡単だっただろ?」


 鉄のナイフを完成させるとクエストクリア扱いになり、雀の涙程度の経験値と報酬と鍛冶スキルを覚える。


「武丸ちゃん、クエストまだ続きあるみたいだよ?」


 ラウラに肩を叩かれて、ドワーフの方に振り向くと、まだサブクエストのマークが表示されていた。






──キャラクターデータ──


名前:九角武丸

種族:人間

キャラクターレベル:5レベル

クラス:ファイター7レベル

スタミナポイント:5レベル


パッシブスキル

刀マスタリー7レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス

豪腕:両手武器物理ダメージボーナス

獅子心:物理ダメージボーナス

調薬:回復アイテムなどを作れる。

鍛冶:武器、重装防具製造可能


アクティブスキル

バッシュ3レベル:単体物理ダメージ

旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ



名前:ラウラ

種族:人間

キャラクターレベル:5レベル

クラス:魔法使い7レベル

マジックポイント:5レベル


パッシブスキル

調薬:回復アイテムなどを作れる

鍛冶:武器、重装防具製造可能。

回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス

詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮


アクティブスキル

治癒の光:7レベル:単体HP回復

爆破:範囲魔法ダメージ

ブレス:単体魔法防御力ボーナス

守護結界:単体物理防御力ボーナス

魔力の刃:単体物理ダメージボーナス

マスヒール:範囲HP回復

ライフシード:単体に一定時間HP自動回復

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