第11話 九角武丸、馬を手に入れる


 クエストラインルートに従って船内に足を踏み入れる。


「意外と片付いてるな」

「リアル大航海時代みたいな不衛生とか再現しても誰も喜ばないよ、武丸ちゃん」


 おれば意外と整理整頓されてる船内に驚くが、ラウラが少しあきれた様子で突っ込みを入れてくる。


「さて、羅針盤はどこかな?」

「なっ!? 侵入者だ!」


 船室の一つを開けて中を覗くと、海賊が驚きながら剣を構える。


「旋風撃!」

「爆破!」


 俺は足早に部屋の中に踏み込むと、範囲攻撃スキルを使い、ラウラも範囲魔法攻撃スキルを放ち、海賊達に反撃の機会を与えることなく殲滅する。


「防具がドロップしたが、軽防具の頭か………」


 海賊達のドロップ品を漁っていると、防具が見つかるが、残念ながら俺の求める中タイプではない。


「ラウラ、デザインが微妙だが使うか?」

「うん!」


 軽防具メインのラウラに渡すと、ラウラは嬉しそうに装着する。


「ん? 見た目が変わらないな?」

「あ、ゲームシステムの項目で頭装備の非表示にしてるの。こんな風に」


 ラウラが頭防具を装着しても素顔のままなことを指摘すると、ラウラはシステム管理パネルを展開して頭装備の非表示をオンオフを繰り返して見せる。


「そんなシステムもあるのか」

「防具によっては性能よくてもデザインがちょっと………と言う意見はあるからね。こんな風に非表示したり、アバター衣装を優先して表示とかあるよ」

「アバター衣装?」


 俺はあまり聞きなれない単語を聞き返す。


「お洒落の為だけの衣装で、優先表示すればフルプレートの全身鎧着ていても見た目はドレスやスーツになるの」

「へー、どこで手に入るんだ?」

「ガチャからランダムか、特定のクエスト報酬で手に入るよ」

「ふーん、なんか俺好みのアバター衣装があると良いな」


 ラウラからアバター衣装について話を聞きながら俺は海賊船の船内を進んでいく。


「あとはこの部屋だけか」


 海賊船の最奥に辿り着くと、頑丈な扉があり、中に入る。


「なっ、侵入者だとっ!? 部下達はなにやってる!」


 部屋に踏み込むと、いかにも海賊の船長と言う出で立ちの男がいて、俺達が入ってきたことに驚いている。

 ボスであることを表すネームカラーで海賊船長と言う名前が表示されていた。


「武丸ちゃん、あそこに羅針盤があるよ」

「よし、ぶっ殺して羅針盤貰うか」

「ええいっ、小癪な! 返り討ちにして魚のエサにしてやる!」


 船長室の一際豪華な机の上に目的の羅針盤があり、海賊船長は羅針盤を懐にしまいこんでカトラスを抜く。


「しねえええ!!」

「せあっ!」


 海賊船長は上段からカトラスを振り下ろしてくるのを打刀の反りで受け流し、体勢が崩れた海賊船長の腕を斬る。


「嘗めるな!」

「うおっ!?」


 海賊船長は懐から単発ピストルを取り出して撃ってくる。

 弾丸は俺の肩に命中し、ダメージと振動が発生する。


「武丸ちゃん、回復するね! 治癒の光!!」

「サンキュー! バッシュ!!」


 ラウラからの回復魔法を浴びながらスキル攻撃を行う。


「やられるかっ! バッシュ!!」

「うおっ!?」


 海賊船長もバッシュスキルで反撃してきて、先ほどのピストルよりも大きなダメージと振動を感じる。


「旋風撃、バッシュ!!」

「ぐううう!!」

「治癒の光!」


 こちらも持っている攻撃スキルを連呼して反撃のダメージを与え、ラウラが必死に俺のダメージを回復してお互いにスタミナポイントかマジックポイントがつきるまでの我慢比べになる。


「バッシュ!」

「ぐっ………む、無念………グフッ」


 バッシュスキルでダメージを与えると、それが止めとなったのか遂に海賊船長は倒れる。


「ふう……ボスの鉄鼠より強かったかも」

「でも、お陰でレベルアップできたよ」


 海賊船長を倒して得た経験値で5レベルにレベルアップする。


「ん? システムから5レベル達成プレゼント?」


 レベルアップ処理をしていると、システムから5レベル達成プレゼントと言うタイトルのアイテムが付与されたメールが送られてくる。


「あ、それは5レベルごとにシステム側から色々アイテムが送られてくるんだよ」


 唐突に送られてきたプレゼントメールに戸惑っていると、ラウラが達成ボーナスがあると教えてくれる。


「ほー、いたせりつくせりだな。プレゼントの中身は葦毛の馬? なんだこれ?」

「あ、5レベルで貰えるのは移動用の騎乗ペットだよ。クエストによっては大陸の端から端まで移動したりするから」


 メールに付属されてるアイテムを受けとると、葦毛の馬を手に入れたとメッセージが表示される。


 どんなアイテムかとアイテムボックスで確認すると、ラウラが言うようにフィールドで呼び出せる騎乗ペットと説明文がある。


「因みにペットは騎乗、戦闘、鑑賞の3つで、クエストや店売り、あとガチャで手に入るよ」

「戦闘用ペットまでいるのか」

「いないよりはまし程度の強さだけどね」


 戦闘用ペットに興味を持つが、ラウラは苦笑ぎみに戦闘用ペットについて説明する。


「あれ? 成長ポイントとスキルポイントがいつもより一点おおいぞ?」

「それはね武丸ちゃん、このゲームは5レベルごとに追加でスキルポイントが+1されるの」

「バグじゃないならありがたいな」


 レベルアップ処理をしようとステータス画面を表示すると何故かポイントが二点もあって驚くが、話を聞いていたラウラがゲームシステムからのボーナスと教えてくれる。

 俺はスタミナポイントに割り振り、刀マスタリーを7レベル、バッシュを3レベルにする。


「ドロップ品はクエストアイテムの羅針盤と………お、若武者の兜の緑等級だ!」


 レベルアップ処理を終えて海賊船長から若武者の兜と言う中装頭防具を手に入れ、早速装備する。


「ラウラは何が手に入った?」

「私は巫女の浄衣と言う軽装備胴体防具と緋色の袴。全部揃えたらセットボーナスがあるの」


 ラウラは何を手に入れたか聞くと、ラウラは聞きなれない単語を口にする。


「セットボーナス?」

「うん、特定の武器や防具には同じシリーズ揃えるとヒットポイントが増えたり、攻撃力が上がったりするボーナスがあるの。揃えれば揃えるほど強いよ」


 俺が聞き返すると、ラウラはセットボーナスについて教えてくれる。


「等級やらセットボーナスやら覚えることが多いな」

「今はカンストまでレベルアップだけ目指せばいいかな? それまではセット装備揃えても、すぐ上の装備に切り替えるし。でもわからなかったらいつで私に聞いてね、武丸ちゃん!」


 ラウラはそう言って上機嫌に腕を組んでくる。


「便りにしてるよ、ラウラ。それじゃクエスト報告に行こうか」

「うん!」


 クエスト報告のために船内から外に出ると、明智達は海賊達を全員倒していた。


「お主達無事だったか? 羅針盤はと舵輪は?」

「両方確保済みだ」


 海賊船からおりると、明智達が駆け寄り声をかけてくる。


「よかった。これなら本来の任務に戻れる」

「本来の任務とは?」


 会話を続けると、会話選択肢が現れたので、任務について質問してみる。


「我々は扶桑同盟の蘇芳国の者でな、蘇芳国の新たな王、芦名義輝様の追加警備兵として式典会場であるニラカイナの島に向かう途中、嵐にあってこの島で立ち往生していた」


 明智官兵衛は自分達が誰に仕えているのか、何のための艦隊なのか教えてくれる。


「ともかく、舵輪と羅針盤を船に届けてくれ。拙者は他に生存者がいないかもう少し部下達と調べる」


 明智達はそう言うとまた海岸へ生存者を探しに向かう。

 俺達は明智と別れて船に戻ることにした。


「あんた達か! 部品は見つかったか?」

「これでいいか?」

「あの海賊船から盗んだのか、奪ったのか? お前達思ったよりも度胸があるな!」


 柴犬の獣人船員にクエストアイテムを渡すとクエストクリア扱いになり、報酬とスキルポイントが貰える。


 俺は旋風撃を3レベルに上げて話を続ける。


「これで出発出来るのか?」

「あー………それなんだが………まだ問題が幾つかある」

「どんな問題だ?」

「まず、水や食料の補給のためにアコンの街に買い出しに行ったのだが、俺にはよくわからなかったが政治的な問題で扶桑同盟には売れないと言われて、補給が滞ってる」


 柴犬の船員から話を聞くと、俸給物資を売れない理由を街まで調べてくると言う新たなクエストが発生する。


「あと、あれこれトラブルが起きて船長の機嫌が悪い。アコンの街まで行くならついでに食材を買ってきてくれないか? 船長の好物作って少しでも機嫌をよくしたいんだ」


 更にサブクエストとして調理クエストというのが始まった。


「よし、このままアコンと言う街まで………っと、寝る時間か」

「あ、もうそんな時間なんだ。武丸ちゃんといると時間が短く感じちゃうな」


 メインとサブクエストの目的地であるアコンの街に向かおうとすると、ログイン前に設定していたアラームが鳴り響く。


「続きはまた明日だな」

「ログインする時は連絡してね。それじゃあ武丸ちゃん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


 俺とラウラはログアウトした。






──キャラクターデータ──


名前:九角武丸

種族:人間

キャラクターレベル:5レベル

クラス:ファイター7レベル

スタミナポイント:5レベル


パッシブスキル

刀マスタリー7レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス

豪腕:両手武器物理ダメージボーナス

獅子心:物理ダメージボーナス

調薬:回復アイテムなどを作れる。


アクティブスキル

バッシュ3レベル:単体物理ダメージ

旋風撃3レベル:範囲物理ダメージ



名前:ラウラ

種族:人間

キャラクターレベル:5レベル

クラス:魔法使い7レベル

マジックポイント:5レベル


パッシブスキル

調薬:回復アイテムなどを作れる

回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス

詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮


アクティブスキル

治癒の光:7レベル:単体HP回復

爆破:範囲魔法ダメージ

ブレス:単体魔法防御力ボーナス

守護結界:単体物理防御力ボーナス

魔力の刃:単体物理ダメージボーナス

マスヒール:範囲HP回復

ライフシード:単体に一定時間HP自動回復

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