第9話 九角武丸、生存者を見つける。
「誰か助けてくれーっ!」
遭難者の探索を浜辺で行っていると、助けを求める声が聞こえてくる。
「どっちだ?」
「武丸ちゃん、あっち!」
ラウラが声の方向を指差し、声がした方向へと駆け出す。
「襲われてるよ」
「助太刀致す! バッシュ!!」
声がした方向に向かうと、屍人に囲まれた武者鎧姿のNPCが必死に刀を振り回していた。
屍人の一体の背後をバッシュスキルで斬りつけるとクリティカルの文字が表示されて一撃で屍人を倒す。
「えいっ!」
ラウラも参加して一気に形勢は逆転し、屍人を一掃する。
「助かった、礼を申す。見かけぬ顔だが扶桑艦隊の者か?」
襲われていたのは江川宗次郎と言う名前のNPCで脇腹を押さえながらどかっとその場に座り込む。
「俺達は明智官兵衛と言う人から捜索を頼まれたこの島の住人だ」
「明智様も生きておられるのか! それは良かった! ………いてて」
俺は選択肢を読み上げてクエストを進めていく。
明智の名前を出すと江川は喜ぶが、脇腹を押さえて苦悶の表情を浮かべる。
「何処か怪我したのですか?」
「うむ………嵐あって波に足をとられて船に叩きつけられた時に骨をやったようで……この怪我がなければ屍人の十や二十、敵でもないと言うのに………情けない」
「ならこれをどうぞ。明智さんが用意してくれた蛍甘露の湿布です」
「忝ない。怪我がましになれば明智様に合流する。お主達はすまぬが他の仲間を探してほしい」
ラウラがクエストアイテムの蛍甘露の湿布を渡すと、江川は患部に湿布を張り付けて、他のメンバーを探してくれといい、クエストタスクが進行する。
その後も屍人を倒したりしながら生存者を助け、蛍甘露の湿布を渡していく。
「実は副官の佐馬殿が近くの洞窟避難しようと安全か確認しにいって戻ってこないんだ。俺はこの足で動けない。申し訳ないが様子を見に行ってくれないか?」
漂流者の最後の一人を助けると新たなクエストタスクが発生し、佐馬と言う副官を探しに洞窟に向かうことになった。
「この洞窟か。波に削られて出来たタイプの洞窟だな」
「地理的に満潮になると水没しそう」
クエストラインルートに沿って移動すると、浜辺の端部分に切り立った崖に出来た洞窟にたどり着く。
「なんだ………これは………」
「ただの天然洞窟じゃないね」
洞窟入り口は天然の洞窟に見えたが、入り口から見えないエリアに足を踏み入れると、邪悪な宗教の隠し神殿のような内装に変わっていく。
「龍か?」
壁には宗教的な壁画が彫られており、巨大な黒い龍を崇拝するような絵が刻まれている。
「骨?」
「あ、武丸ちゃんあそこ!」
さらに洞窟を進むと主神を祀る本殿作りのようなエリアにたどり着く。
辺りの床には動物や人の骨が乱雑に積み上げられて小高い山になっていた。
俺が骨に気を取られているとラウラが何か発見したのか、俺の肩を叩いて話しかけてくる。
「あれは………副官の人か?」
「他にも人がいっぱい死んでる………」
儀式を行う広間のようなエリアには磔にされた死体が無数にあった。
「どうやら、ボスのお出ましのようだ」
死体を確認したのかトリガーとなったのか、骨の山の一つが振動し始め、ガラガラと音を立てて骨を崩しながら、巨大な黒い鱗の蛇が現れる。
「アンカグワーの落とし子とか大袈裟な名前だな! バッシュ!!」
「シャアー!!」
先手必勝とばかりにスキルで攻撃する。
スキル攻撃を受けたアカングワーの落とし子は悲鳴のような声をあげて蜷局をまくと、尻尾で扇状に範囲攻撃してくる。
「ぐっ!?」
「きゃっ!?」
巨体による範囲攻撃に回避しきれなかった俺とラウラはダメージを受ける。
(痛みはないが、攻撃が当たった場所に強震動のマッサージ器押し当てられた感触がしたな)
「武丸ちゃん、回復するね! 治癒の光!!」
「回復したら、あいつの攻撃範囲から離れてくれ」
ラウラは神楽鈴を鳴らすと、神楽鈴から緑色の光を放つ螺旋のエフェクトが発生する。
エフェクトに俺の体が触れるとヒットポイントが回復していく。
「旋風撃! バッシュ!!」
まずはラウラからヘイトを外すためにスキル攻撃を連打する。
「シャアアアーッ」
「うぐっ!」
アンカグワーの落とし子はダメージを受けながらも強引に俺に体当たりしてダメージとノックバックを与える。
「ふふっ………あはははははっ!!」
「たっ、武丸ちゃん?」
俺はアンカグワーの落とし子との戦いが楽しくて仕方ない。
動かなかった右腕をもどかしく思い、折角じいちゃんから習った武術も現代では役立てにくい。
でも、この電脳世界なら俺の右腕は動くし、じいちゃんから習った武術も役立てる。
なによりこの戦闘の緊張感と斬った張ったが楽しくて仕方ない。
「さあ、とことんやろうぜ!!」
「シャアアアーッ!!」
アンカグワーの落とし子は骨の山を崩しながら突進してくる。
それを二寸五分の踏み込みで避けて、アンカグワーの落とし子の胴体を斬りつける。
「シャギャアアアーッ!?」
「バッシュ!!」
胴体を斬りつけて怯んだアンカグワーの落とし子に追い討ちとばかりにスキル攻撃を行う。
「シャアアアーッ!」
「うぐっ!」
アンカグワーの落とし子も負けじと尻尾でノックバック攻撃を行い、俺を吹き飛ばす。
「武丸ちゃん、いま回復するね!」
「助かる!」
ヒットポイントがかなり減っていたが、ラウラの回復スキルを受けてヒットポイントを満タンにすると俺はまたアンカグワーの落とし子に向かって走る。
「バッシュ!!」
「ギャアアアアア!!」
俺は打刀を上段に構えて跳躍し、アンカグワーの落とし子の頭部にスキル攻撃を行う。
そこが弱点だったのか、それとも偶然か、スキル攻撃はクリティカルヒットとなりアンカグワーの落とし子に止めを刺す。
「お、レベルアップしたな」
「武丸ちゃん、おつかれー! 格好良かったよ!!」
アンカグワーの落とし子を倒すとレベルアップのエフェクトが発生する。
「ドロップ品は………西洋剣のロングソードかあ………性能はいいけど好みじゃねぇなあ」
「ドロップは完全ランダムだからねぇ」
アンカグワーの落とし子からドロップしたのはロングソード。
今持っている打刀よりほんの少し性能がいいが、性能よりもロマンを優先したいのでアイテムボックスの肥やし行きだ。
スタミナポイントにボーナスポイントを割り振り、刀マスタリーのスキルレベルを上げる。
「取りあえず、死体を確認しないと………死体の割には人形っぽいな」
「別のゲームだけど、リアルに作りすぎて色々問題があってね。R18ゴア作品でもない限りはこんな感じのオブラートに包んだような表現だよ」
生け贄の儀式の被害者の死体を確認すると、いかにも作り物ですと言う感じの死体だった。
死体を確認するとパネルが表示され、副官の佐馬であることをテキストメッセージで教えてくれる。
「宗教的シンボルを鋭利な刃物で体に切り刻まれて失血による死亡か」
「他の死体も似た感じだよ」
「何か儀式が行われていたってことだけはわかったな。クエストタスクが更新されたし、報告に行くか」
全員の死体を確認すると、クエスト内容が明智官兵衛に報告するにタスクが更新される。
「お主達もここにいたか!」
洞窟を出ると、入り口前に明智官兵衛とクエストで救った漂流者達がいた。
「部下達から聞いたぞ! 斥候としては優秀じゃな! お主達、我らの大殿様のために働かぬか? ところで佐馬の奴はどこじゃ?」
明智官兵衛は俺達を絶賛してスカウトする。
そして人を探すようにキョロキョロと周囲を見回したり、洞窟の中を覗き込もうとする。
「残念ながら洞窟の奥で死んでるのを見つけた。邪教の生け贄にされた」
「………すまぬが聞き間違えたようだ。もう一度言ってくれぬか?」
「佐馬は何者かによって邪教の生け贄にされて死んだ」
「………今の状況では対処できない。合流する前に比較的無事な扶桑同盟の船があった。君達は船員に注意喚起してくれないか? 我々は佐馬を運び出す。仲間を見つけてくれて感謝する」
ここで一旦勢力クエストが完了し、経験値とお金、そしてスキルポイントをもらう。
無事な船の船員に注意喚起すると言う新たな勢力クエストが発生した。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:4レベル
クラス:ファイター6レベル
スタミナポイント:3レベル
パッシブスキル
刀マスタリー6レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
アクティブスキル
バッシュ2レベル:単体物理ダメージ
旋風撃2レベル:範囲物理ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:4レベル
クラス:魔法使い6レベル
マジックポイント:3レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
詠唱時間短縮:魔法スキルの発動時間短縮
アクティブスキル
治癒の光:5レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール:範囲HP回復
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