第8話 九角武丸、クエストを報告する。
「さてボスも倒したし、大鼠退治は報告したら終わりだな」
「隠してあるお酒は………よりによってあそこかあ」
ボスの鉄鼠を倒したことで大鼠退治のサブクエストは依頼人に報告するだけになった。
もう一つのサブクエストである隠されたお酒だが、ラウラが隠し場所をみつけた。
あの農民が隠した場所は鉄鼠の巣の真下だった。
巣を撤去して地面を掘ればとっくり瓶に入った酒が出てくる。
「取りあえず破損はないな」
「武丸ちゃん、これの報告どうするの?」
「そうだなあ………なかったことにするか」
「おっけー、じゃあ戻ろうか」
俺達は瓶をアイテムボックスに収納してまずはお酒の回収依頼をしてきた農家に向かう。
「よかった無事だったんですね!」
戸を開けて家の中に入ると、土間や囲炉裏がある時代劇などに出てくる簡素な農家の内装だった。
家主である農夫が俺達が入ってきたのに反応するように話始める。
「残念ながら酒は大鼠にやられてた」
「あ………そうですか………ありがとうございます」
酒がないと嘘を付くと農夫はがっくりと肩を落とし、意気消沈した声を漏らす。
「あんた、これを機会に酒をやめたらどうだい?」
「……ああ、そうだな」
無かったと嘘をついてくれと頼んできた奥さんがここぞとばかりに禁酒を勧めてくるが、農夫は上の空な感じで空返事をする。
(ゲームとはいえ、良心が………)
農夫がっかり感に少しばかり心を痛めながらもクエストが完了したのを確認する。
「経験値とお金と、あのお酒の般若湯が報酬か」
「飲むと現実時間で2時間ヒットポイント、マジックポイント、スタミナポイントが増加するね」
「何処かで使いどころがあるといいな。さて、もう一つのサブクエストも報告しにいくか」
「うん!」
クエスト報酬を確認した俺達は大鼠退治を依頼した農民のもとへ向かう。
「これはまた………たまげた」
討伐の証である鉄鼠の首を渡すと農民は驚いたリアクションをする。
「これでもう畑も荒らされない! こいつはお礼だ! 持っていってくれ!」
クエストクリア報酬の経験値で3レベルになり、現物報酬として打刀を貰った。
「ん? この打刀、名前が緑色だな」
「武丸ちゃん、アイテムには等級があってね、緑はノーマルより一段階上のアイテムだよ」
「確かに鉄鼠からドロップしたノーマルの打 刀より色々数値が上だな」
俺はレベルアップ処理をしてスタミナにポイントを割り振り、旋風撃のレベルを上げる。
「ノーマルの打刀はどうするかな?」
「基本は店売りか、解体して生産材料にするかだね。私は解体をお勧めするよ」
サブクエストの報酬で性能のいい武器を貰えたお陰で鉄鼠からドロップしたノーマルの打刀は一度も使われること無くお役御免となり、処分に困っているとラウラが使わないアイテムの処分の仕方を教えてくれる。
「大抵のプレイヤーは要らないアイテムは解体して素材にして、生産メインのプレイヤーに売ったりしてるよ」
「なら俺もそうするか」
「あ、アイテムに【美術品】ってのがついてたら解体するより売るほうがいいよ、通常よりも高く売れるから」
「鉄鼠のやつは何も書いないな」
「なら解体だね。クエストが終わったらどこで出来るか教えるね」
ラウラから生産の話を聞きながら残りの配達先に薬を届ける。
「残りの配達先にはサブクエスト無かったな」
「それじゃあ薬師に報告しにいこうよ」
サブクエストは結局大鼠退治と般若湯の回収だけだった。
「薬だけでなくて村を悩ました大鼠も倒してくれるとはな。ほれ、蛍甘露の湿布じゃ。あとこいつもやろう」
薬師に配達の報告をすると、本来の目的であったクエストアイテムである蛍甘露の湿布とクエストクリアの経験値とお金とスキルポイント、そして別途追加報酬でヒットポイントを回復させる丸薬と薬師の籠手と言う防具を貰う。
「この籠手、軽中重の三種類から一つ選べるのがいいな」
「ノーマル品質だけど装備したら回復アイテムの効果50%アップはいいね」
報酬のスキルポイントを刀マスタリーに割り振る。
「おろ、クエスト終わったら薬師さんサブクエストマークが浮かんだぞ?」
「どんなサブクエスト貰えるか聞いてみようよ」
勢力クエストを完了させると、薬師の頭上にサブクエストマークが表示されクエスト内容を聞いてみる。
「お前ら、調薬に興味ないか?」
「調薬とは?」
「水と薬草から薬を作るスキルだ。自前で傷を治せる薬とか作れるぞ」
サブクエスト内容を確認すると、薬師は調薬の仕方を教えようとする。
「興味はあるな」
「まずは原材料となる水と薬草をみつけるところから始めよう。湧き水と薬草の群生地を地図に印をした。そこまでいってまずは原材料を採取してこい」
調薬スキルに興味があると答えると薬師は原材料が採取できるエリアを教え、湧き水と蛍甘露を採取と言うクエストタスクが表示される。
「それじゃあ行ってくるか」
「うん!」
俺とラウラは地図に表記されたエリアに向かう。
そこは森との境界線で地下水が湧いており、蛍甘露の群生地があった。
「普通に水も蛍甘露も採取できたな」
「必要数集めたし、戻ろうよ」
調薬スキルに必要な原材料を採取すると俺とラウラは薬師の元に戻る。
「材料集めてきたな。まずは薬草を薬研ですり潰し、湧き水を加える。やってみろ」
薬師は調薬の仕方を説明し、薬研といわれる時代劇などで薬草をすり潰す道具がおいてあるテーブルを指差す。
テーブルに近づくと、パネルがポップアップして、材料の投入口が表示される。
そこに必要なアイテムを投入すると、体が勝手に動いて薬研で薬草をすり潰すモーションを行う。
「できたな」
「調薬スキルレベル、生産道具、投入する素材で完成する丸薬の効果が変わってくる」
丸薬を作るとクエスト終了となり、調薬スキルツリーを覚える。
「これは一種のクラスか?」
スキルツリーを確認すると戦士クラスのように調薬に関する様々なスキルがある。
より上位の薬を作ったり、ミニマップに調薬に必要な材料が表示されたりなどなど。
「スキルポイントが全然足りない気がするな」
「レベル上げとスキルポイントを貰えるクエストをクリアしていくしかないね」
「取りあえずこの村で受けられるクエストはもうないみたいだから、明智のところに戻るぞ」
「はーい」
クエスト報告対象である明智官兵衛がいる浜辺に戻ると、明智官兵衛の回りに複数の人間の死体があり、返り血を浴びた明智官兵衛が刀を構えて周囲を警戒していた。
「何かあったのか?」
「む? おお、お主らか! 軽く浜辺を探索して漂流者を探していたら、マジムンのやつらが襲って来てな」
明智官兵衛は俺達が薬師のクエストを受けている間に起きたことを説明する。
「マジムン?」
「この扶桑同盟の海域を荒らす海賊集団だ。体の何処かに蛇の刺青をしているのが特徴だ」
俺がマジムンについて質問すると明智官兵衛はマジムンがどんな集団でどんな身体特徴を持っているか説明する。
改めて死体を確認すれば確かにどの死体にも蛇と思われるシンボルの刺青をしていた。
「やつらが単体で動くとは思えぬ。すまぬがその湿布をもって生存者の救助をしてくれぬか? わしはもう少し探索してマジムンが何故ここにいるのか探ってみる」
明智官兵衛は話が終わると立ち去ってしまう。
「取りあえず遭難者を探せばいいのか」
俺とラウラは船の残骸が散乱する海岸を探索する。
「人が倒れているな」
船の残骸の影に人が倒れているを発見し、鞘で生きているか確認するために倒れてる人物を突っつく。
「うおおおああ」
「屍人? あ、ゾンビか」
「このゲームのゾンビは走らないタイプだから対処が楽だね」
倒れてる人をつつくと、倒れてた人は呻き声を上げて起き上がり、さらに死角になっていた場所からさらに二人の屍人が現れて、のろのろとこちらに向かってくる。
「旋風撃!」
モンスターネームは屍人となっているが、動きや特徴からゾンビの和名と俺は認識し、打刀を抜いて構え、旋風撃の範囲に屍人達が入るように位置取りをしてスキルを叫ぶ。
「一発では倒れないか」
「私に任せて、せーの爆破!」
ラウラは神楽鈴を両手でもってフルスイングするように振って鈴をならすと、火の弾が屍人の一人に命中した瞬間爆発し、他の屍人も巻き込んでクリティカルの文字と大ダメージが表示され、屍人達はドロップ品に変わる。
「今のは一際大きかったが、なんかスキルか?」
「うん、属性武器で効果が変わるスキルなの。今回は炎だから爆発」
「ほー、面白いな」
屍人と言うゾンビからドロップ品を回収して探索を再開した。
──キャラクターデータ──
名前:九角武丸
種族:人間
キャラクターレベル:3レベル
クラス:ファイター5レベル
スタミナポイント:2レベル
パッシブスキル
刀マスタリー5レベル:武器種別刀を装備すると物理ダメージボーナス
豪腕:両手武器物理ダメージボーナス
獅子心:物理ダメージボーナス
調薬:回復アイテムなどを作れる。
アクティブスキル
バッシュ2レベル:単体物理ダメージ
旋風撃2レベル:範囲物理ダメージ
名前:ラウラ
種族:人間
キャラクターレベル:3レベル
クラス:魔法使い5レベル
マジックポイント:2レベル
パッシブスキル
調薬:回復アイテムなどを作れる
回復量修練:回復スキルの回復量ボーナス
アクティブスキル
治癒の光:5レベル:単体HP回復
爆破:範囲魔法ダメージ
ブレス:単体魔法防御力ボーナス
守護結界:単体物理防御力ボーナス
魔力の刃:単体物理ダメージボーナス
マスヒール:範囲HP回復
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます