第4話 九角武丸、クラスと装備を選んでチュートリアルを終わらせる


「クラス選択ですが、ユーザーの種族が人間なので三つ取得出来ます」

「結構種類あるな」


 ズラリと並ぶクラス名がパネルに表示され、クラス名をタップするとクラスの説明やスキル一覧が別枠パネルで表示される。


「なあ、同じクラスを重ねて取るメリットってあるのか?」

「あります。クラススキルにはレベルが設定されており、スキルレベルの上限はクラスレベルと同等になります。つまり、戦士1レベルだとスキルレベル上限は1レベル。初期作成段階で戦士クラスを三枚目重ねれば戦士3レベルでスキルレベルも最大3レベルまで取得できます」


 光の玉にクラスの重複について質問すると光の玉はパネルを使って説明してくれる。


「クラスをバラバラに取ると手数は増えるが、スキルレベルが低い、クラスをひとつにすれば一芸特化って感じか?」

「その認識であっています」

「なら戦士クラスを3レベルだな」


 光の玉の説明を聞いた俺は戦士クラスを3レベル取得し、スキル選択に移行する。


「スキルは初期で7つ取得出来ます。レベルがあるスキルはクラスレベルまでしか取得できません」

「スキルが多くて悩むな」

「ゲーム内マネーや課金アイテムでいつでもクラスやスキルを入れ替えれますので、気軽に考えてください」


 スキル一覧を見ながらあーでもないこーでもないとうんうん唸って悩んでいると、光の玉がアドバイスしてくれる。


「でもなあ、このスキルは両手武器用で、こっちは金属防具をつけていないことが前提だし、そういえば刀ってこのゲームでは重軽のどっちだ?」

「小太刀は片手軽武器、打刀は片手で持てば軽武器、両手で持てば重武器、野太刀は両手重武器になります」


 刀の種別について質問すると、光の玉はパネルを表示して刀の種別を説明してくれる。


「とりあえず刀マスタリーを3レベルまで取得して、豪腕、獅子心、バッシュと旋風撃でいくか」


 刀を装備すると攻撃と受けにボーナスが入る刀マスタリー、両手で武器を持つことでダメージと防御にボーナスが入る豪腕、基本ダメージが上がるパッシブスキルの獅子心、単体ダメージのアクティブスキルのバッシュと、自分を中心に範囲にダメージを与えるアクティブスキルの旋風撃を取得する。


「それでは最後に装備を選んでください」


 クラスとスキル取得が終わると光の玉がパネルを提示して装備を選べといってくる。


「武器や防具の横にレベルが表示されてるけど、これは装備条件か?」

「そうです。必要レベルを下回ると装備できません。上回っても特にボーナスはないので適正レベルの装備に切り替えていってください」


 パネルに表示される装備一覧には名前の横にレベルが表記されており、光の玉が言うには同じ名前の装備でもレベルが違うと攻撃力や防御力が違ってくるらしい。


「防具は軽中重の三種類あるけど違いはなんだ?」

「軽防具は物理防御が低くて魔法防が高いです。重防具は軽の逆で物理防御が高く、魔法防御が低いです。中防具は中間です。また戦士クラスのスキルで防具マスタリーがあり、全身を同じ重さの防具で揃えるとボーナスが付くのもあります」

「なら木刀とこの足軽の中装備セットかな」


 俺が選んだのは大太刀サイズの木刀と戦国時代の映像作品などで良く見かける陣笠に胴鎧といった防具だった。


「以上でチュートリアルは終了です。道場から出ましたら勢力クエストが開始されます」

「勢力クエスト?」


 チュートリアルが終わると、光の玉が聞きなれない単語を口にする。


「ユーザーが所属している勢力のメインクエストです。それ以外にも各地にサブクエストがあり、プレイヤーはクエストをクリアしてレベルアップや報酬で装備を強化していきます」

「ふーん、まあ挑戦してみるか」


 光の玉の説明を聞いて道場の外に出る。


「おおっ!」


 燦々と輝く太陽、鼻を刺激する緑の自然の匂い、肌で感じる微風、そして茅葺き屋根の農村と段々田んぼと言う時代劇の農村が眼下に広がっていた。


「武丸ちゃーん!」


 視界に広がる風景に感動していると、俺を呼ぶ聞いた声がする。


「ラウラ!」

「武丸ちゃん、そのまんまでキャラメイクしたの?」


 声がした方向に振り向くと、大きく手を振る褐色肌に金髪の巫女服姿のラウラがこちらに駆け寄ってくる。


「ああ、自分の姿で感じたかったからな。誘ってくれてありがとう。仮初めとはいえ、こうやってまた腕を動かせるよ」

「あ………よかった………ちゃんと動いたんだね………よかった」


 俺は駆け寄ってきたラウラの頭を右手で撫でる。

 俺の右腕が動くことを確認したラウラは泣き笑いながら何度もよかったと繰り返し呟く。


「もう泣き止めよ。折角ゲームにログインしたんだから楽しもうぜ」

「ぐすっ………うん」


 俺はラウラの涙を右手で拭いながら声をかけ、泣き止むのを待つ。


「それじゃあ、早速クエスト受けようか。村の広場に領主の高札があるから、そこからクエスト受けれるよ。視界の右下にミニマップと施設やクエストのマーカーが表示されてる?」

「へー、ちゃんと世界観や文化に合わせた感じになっているんだ。ミニマップもあるぞ」


 ラウラに案内されながら村の中を通る。

 村中の風景は長閑な農村と言う感じで、農民たちが畑や田んぼを耕していたり、農家の軒先には干し物がぶら下がっていたりする。


 道は踏みかためられただけの土道で、俺達か歩くと、うっすらと足跡が残る。


「武丸ちゃんはクラススキルは何を取ったの?」

「戦士クラス3レベルで、刀マスタリー3、大物使い、豪腕、バッシュと旋風撃だ。ラウラは?」

「私は魔法クラスでヒールやバフ系がメインかな。自衛レベルで攻撃魔法も覚えてるよ」


 クエストが受けられる高札がある広場へ行く途中俺とラウラはクラスやスキルについて話し合う。


「そうだ、武丸ちゃん。チーム組んでフレンド登録しようよ」

「どうやるんだ?」

「こっちから申請送るから大丈夫」


 ラウラは何か思い出したようにパンっと手を叩くとチームとフレンドの申請の話をしてくる。

 俺がやり方知らないと言うと、ラウラは自分のステータス画面を展開してフリック操作する。


「ん? 申請がきたな」

「武丸ちゃん、両方承諾して」

「こうか?」


 ラウラの仕草を見ていると、突然視界に半透明のパネルが表示され、ラウラからチームとフレンドの登録申請がきているとメッセージが表示され、ラウラに言われるまま承諾する。


「視界の左上にラウラの名前とヒットポイントバーが現れたな。あとミニマップにラウラのマーカーも表示されてる」

「これでお互いのヒットポイントとか、位置を確認し合あったりするんだよ」

「へー………お、あれが高札か?」


 ラウラからチームとフレンドシステムについて説明を聞きながら歩いていると、目的地である村の広場に到着する。

 高札回りにはプレイヤーと思われるキャラクター達が集まり、高札をしばらく見つめたかと思うとあちらこちらに散っていく。


「高札の上にある黒星マークが勢力クエストで、白星マークがサブクエストだよ」

「あ、本当だな」


 ラウラの説明を聞きながら高札を見ると、高札の上には黒い星マークがあり、パネルに表示されるテキストメッセージがラウラが言っていた勢力とサブクエストの違いを説明している。


「えーっと何々? 昨日の嵐で海岸に扶桑同盟の艦隊の一部が座礁し、救助の為の人員を求む?」


 高札に書かれている内容を読み上げると、【クエストを受けますか? Y/N】と言うメッセージパネルが表示される。


「チーム組んでる時にチームリーダーがクエスト受けたら、メンバーも一緒に受けれるよ。はい」


 ラウラはそう言って俺にチームリーダー権限を渡してくる。


「じゃあ一緒にやるか」

「うん!」


 俺はラウラと一緒に勢力クエストの漂流者の救助に向かった。

 




──キャラクターデータ──


名前:九角武丸

種族:人間

キャラクターレベル:1レベル

クラス:ファイター3レベル


パッシブスキル

刀マスタリー3レベル:武器種別刀を装備するとダメージボーナス

豪腕:両手武器ダメージボーナス

獅子心:物理ダメージボーナス


アクティブスキル

バッシュ:単体物理攻撃

旋風撃:範囲物理攻撃



名前:ラウラ

種族:人間

キャラクターレベル:1レベル

クラス:魔法使い3レベル


アクティブスキル

治癒の光3レベル:単体HP回復

爆破:範囲魔法攻撃

ブレス:単体魔法防御力ボーナス

守護結界:単体物理防御力ボーナス

魔力の刃:単体物理ダメージボーナス


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