第3話 九角武丸、チュートリアルクエストをやる
「うっ………ここは………道場?」
光が収まり、視力が戻ると和式の道場のような場所にいた。
「ここは扶桑同盟の新兵訓練所です。ユーザーは扶桑同盟所属の新兵として、エターナルクエストオンラインの世界で生きていくために、これからチュートリアルを受けて貰います」
側にいた光の玉が現在地と目的を教えてくれる。
「チュートリアルか、何から始めるんだ?」
「まずは戦闘です。近接、遠距離、魔法を体験して貰います」
「クラスは選ばなくてもいいのか?」
「クラスについては戦闘のチュートリアルで解説します」
光の玉に話しかけると、光の玉はチュートリアルで何をするか説明してくれる。
「まずは近接からです。近接、遠距離物理スキルは戦士クラスで纏められています」
「ん? どう言うことだ?」
光の玉の説明を聞いて俺は聞き返す。
「戦士と言っても防御特化のタンク、一撃必殺か、手数でダメージを与えるアタッカー、更に細かく言えば素手格闘や射撃特化などスタイルは千差万別です。これに他のクラスを混ぜればスタイルは無限大と言っても過言てはないと思います」
「組み合わせにすごく悩みそうだな」
「ご安心ください。ゲーム内マネーや課金アイテムでいつでもクラスやスキルの入れ替えができます」
光の玉からスキルやクラスについて説明を受けた俺は最初のキャラメイクが肝になると思ったが、光の玉はゲーム内マネーでクラスを変えれる施設や課金アイテムの画像を添えてクラス変更の方法を伝えてくれる。
「それでは戦闘のチュートリアルクエストを始めます。私の頭上にクエストマークが表示されたら、もう少し近づいてみてください」
説明を終えると、光の玉の頭上に大きな☆マークが現れる。たぶんこれがクエストマークなんだろう。
「最初の戦闘チュートリアルは近接攻撃の練習です。クエストを受けますか?」
言われた通り光の玉に近づくと、メッセージウィンドが表示されて、クエスト内容とクエストの目的、そしてクエストを受けるか受けないかの有無の選択肢が表示される。
「声で承諾するか、メッセージパネルをタッチして貰えればクエストが受けれます」
「なるほど、そう言うシステムか」
チュートリアルクエストを受けようと思ったが、どうやって承諾すればいいのか戸惑っていると、光の玉がクエストの受け方をレクチャーしてくれる。
「クエストの受託を確認しました。まずは壁にかけてある武器を選んでください」
俺がメッセージウィンドに表示されるイエスの文字をタッチすると、クエストを受けた扱いになり、メッセージウィンドに次のクエスト目的が表示される。
「この足元から伸びてる光るラインはなんだ?」
俺がクエストを受けると、自分の足元から武器が飾られている壁まで一本道のラインが表示される。
「クエストラインルートと言うもので、アシストで目的地までの最短ルートラインを表示しています。ただ、謎解きなど一部のクエストにはこのルートラインが表示されません」
「あー、ネタバレで全然謎解きにならないからか」
足元から伸びているルートについて質問すると光の玉が教えてくれる。
「武器もいろいろある………と言うか力入れすぎてね?」
壁にかけてある武器に目をやると剣、槍、棍棒、果ては少数民族やマイナーな武術の古今東西現実に存在した様々な武器もある。
じいちゃんから教えて貰ったり、動画でしか見たことのない武器まで網羅しておりこのゲームが侮れないと思った。
「まずは好きな武器を選んで、アシストモードのまま案山子を攻撃してください」
「アシストモード?」
聞きなれないゲーム用語を聞いて、俺は聞き直す。
「はい、格闘など戦闘経験のないプレイヤーでもアクション映画のような戦闘や動きができるようにシステム側からアシストしています。これがあればどんな運動音痴てもパルクールアクションも楽々こなせます」
「ふーん」
俺は光の玉からアシストモードについて説明を受けながら木刀を手に取り、道場のど真ん中に設置されている案山子に向かい、試しに案山子に攻撃してみる。
木刀が案山子に命中すると、ダメージと思われる数値が表示された。
「………なんか、気持ち悪いな」
アシストモードで体が勝手に動くのに違和感がある。
例えるなら頭では右を殴りたいのに体が勝手に左を殴ろうとする気持ち悪さだ。
「でしたらゲーム設定画面と発言して貰えれば、設定画面が表示されるので、そこでアシストモードをオフにできます」
「ゲーム設定画面………あ、出てきた」
光の玉に言われたように発言すると、俺の視界に文字や数値が表示された半透明のパネルが現れる。
「アシストモードをオフにして………ふふ………アハハハハっ!!」
アシストモードをオフにして木刀を振るうとしっくりとくる。
そのまま何度も素振りしたり、案山子を叩いていたりすると、右手で物を持つことに、自由に動き昔のように剣を振るう事が出来るのか楽しくなってしまう。
「ユーザー、もうその辺で止めて次に行きませんか?」
「おっと、つい楽しくて………進めてくれ」
光の玉から声をかけられるまで夢中で剣を振るっていた。
まだ物足りなく、もっと振るっていたかったがチュートリアルの途中だし、ラウラが待ってるのを思い出して、俺はチュートリアルクエストを進める。
「次に射撃攻撃です。アシストモードをオンにして射ってください」
「あんまりアシストモードはしたくないんだけどな」
光の玉は次の課題を出してくる。
俺は言われた通りアシストモードをオンにして、和弓に持ちかえて案山子に向かってしようとすると、レティクルが表示される。
「アシストモードがあるとこのようにレティクルが表示され、ある程度システムが射撃軌道を修正してくれます」
「アシストモードをオフにするとレティクルが消えたな。こっちはアシストモードありの方がやりやすいかも」
「軌道修正もされなくなるので気をつけてください」
俺はアシストモードをオンオフして矢を放ち、違いを確認する。
「あれ? さっきから結構射ってるのに矢が減ってない?」
「射撃武器は特殊な矢や弾丸を使わない限りは無限です」
「ふーん」
俺は矢筒から矢を取り出そうとして、先ほどからかなりの数の矢を放ったのに矢が全然減っていないことに気付くと、光の玉が種を明かしてくれる。
「魔法攻撃も基本的に物理近接と射撃と同じです。チュートリアルを受けますか?」
「いや、魔法には興味ないから次にいってくれ」
光の玉から魔法について習うかと言われて俺はスキップして次のチュートリアルに進める。
「では、次はクラススキルです。練習用に戦士系アクティブスキルのバッシュとハードショットを付与します」
光の玉がそう言うとメッセージウィンドにバッシュとハードショットを習得したと表示される。
「スキルにはパッシブとアクティブがあります。パッシブは取得した時点で常に有効化されダメージなどに適用されます。アクティブはマジックポイントやスタミナポイントを消費して使用されます」
光の玉の説明と同時にパネルが現れ、パッシブとアクティブスキルの違いが絵で解説される。
「バッシュは近接、ハードショットは射撃のアクティブスキルになり、使用方法は口頭でスキル名を発言するか、スキル毎に設定された動作を行うかです。まずは口頭発言で試してください」
「バッシュ! おおう!?」
俺は光の玉に言われた通りスキル名を発言して攻撃すると、スタミナポイントが消費されて通常攻撃の倍近いダメージが表示される。
「では、続いてスキル動作を行ってください」
「こうか? あ、できた」
次にスキル動作のチュートリアルが始まり、ムービーに合わせてスキル動作を真似るとバッシュのスキルが発動する。
「これは面白いな」
同じように射撃スキルのハードショットも口頭とスキル動作で試す。
「以上が攻撃チュートリアルです。続いて回避チュートリアルに進みます」
光の玉がそう言うと、道場のど真ん中に武器を持った人形が二体現れる。
片方は木刀、もう片方は弓矢を持っていた。
「回避はアシストモードがあればユーザーのステータスから産出された回避力で自動で回避します。アシストモードをオフにした場合、ユーザーの反射能力が不可欠になります」
「ずいぶんとアシストモードが優秀だな。とりあえずオフで試してみたい」
「そのまま木刀を持った人形に近づいてみてください」
光の玉は回避方法についてレクチャーしてくれる。
俺は自身の腕前を確認したくてアシストモードオフで回避に挑戦することにし、光の玉に言われた通り人形に近づく。
人形は俺が近づくと木刀を振り上げて構え、攻撃範囲に入ると振り下ろしてくる。
(あれ? 動きが滅茶苦茶遅いな)
人形が振り下ろそうとする木刀のスピードがまるでスローモーションのように見え、容易に回避できる。
「それでは続いて弓矢を持った人形に近づいてください」
光の玉に言われた通り人形に近づくと、矢をつがえて放ってくるが、木刀よりも早いがそれでも容易に回避できる。
(チュートリアルだからスローモーションなのか?)
「次に防御です。武器や盾を構えることで相手の攻撃を受け止めて、ダメージを軽減することができます」
遅すぎる攻撃に違和感を俺は覚えるが、光の玉はそんな違和感に気付く様子もなくチュートリアルは次に進んでいく。
「それでは人形に近づいて攻撃を盾で受け止めてください」
(やっぱりスローモーションだな)
防御のチュートリアルでも人形の攻撃は遅く、容易に盾で受け止めれる。
「武器や盾には防御力が設定されており、攻撃を受け止めた時だけ鎧などの基本防御力に加算されます。またスキルの中には回避や防御にボーナスがつくパッシブスキルもあります」
光の玉はそう言って一部の戦士系スキルを紹介してくれる。
回避系スキルは回避率が上がるとかではなく、回避しきれなくてもダメージを軽減したり、回避行動に無敵時間を与えるタイプだった。
「以上で戦闘チュートリアルは終了です。次にクラス選択を説明したいと思います」
光の玉がそう言うと、視界にクラス一覧が表示された。
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