第2話 旅本番スタート!のリアル

 車窓から見える、いつもと違う風景。


 流れていくその様を、のんびり眺める。


 いや、なんとなくね。


 そんなシチュエーションをね、頭に描いていたんですよ。


 リアルはこう。


 若干空いてる通勤電車並みの混雑度。

 

 つまり、運良く座れた私の目に入るのは、人人人人、なわけ。


 ああ、なんだろ……期待しすぎたな、これは……やはり年末だから、人の移動が激しいのだ。


 そう、嫌な予感を抱かせるキーワード。


 ね・ん・ま・つ。


 いやいや、とりあえず掛川でおいしい海鮮食べるんだもんね! 年末は気にしないんだもんね!


 ん? 年内の食事提供は29日まで……だと?

 今日までじゃん! あっぶな!


 えっちらおっちらとグーグルマップでお店に。


 やばい。


 外のベンチに人の姿が見えるぜ……混んでる……混んでるよね?


 私は迷いを悟られないように、さり気なく店内の待ち人リストに名前を書いた。


 4番目。


 くぅ……せっかくここまで来たんだ、待とうじゃないか!


 メニュー! メニュー!


 注1:この時の鹿嶋はルンルンでありました。


 あぁ、どれもいい……


 口コミにあった穴子……


 宝石箱やぁ〜の声が聞こえてきそうな、バランスよく海の幸がおさまっている海鮮丼……


 おすすめメニューの本マグロ……


 注2:お留守番している鹿嶋の次男19歳は、マグロ星人です。罪悪感。


 ええい、罪悪感なんて気のせいだ!


 いけいけ、おすすめの本マグロ!!


 無事に順番が回ってきて、私の目の前に本マグロさんがやってきた。


 んんまいぃい……!


 いきなりトロ食べちゃったぁい!


 甘いよ、だってトロだもん!


 米もお茶もうまい。赤身もマグロ、うまい。


 うまいうまいうまいとひたすら脳内で叫びながらもぐもぐし、撮影した写真をポストする。


 エックスではフォロワーさんが反応をくださり。


 ラインには会社の友だちが返信をくれ。


 薄れる孤独感。幸福感が満ちていく。やはり空腹はメンタルによくないな、と再確認。


 入店を諦めなくて良かった……


 お腹いっぱいで幸せ!


 さあ次は可愛い鳥さんを愛でて幸せになるのだ!


「ごちそうさまでした!」


 意気揚々と店を後にし、あたたかな日差しの下、私は再びグーグルマップを開いたのだった。

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