第23話 戦いの後
「さすがねシンくん」
シエナがニコリと笑顔を見せやってきた。
「思ったより来るの早かったな」
「当たり前じゃん。狂犬の幹部の強さは知らなかったし」
心配してくれたってことか。
「シンさん、あなたの魔法はとても不思議ですね。空間を操るなんて」
「なっ!?」
う、嘘だろ…………。もうバレたのか!しかもこの場で言ったら……………。
「なるほどねぇ。だから攻撃が見えないのか」
シエナがニヤつきそう言った。
「ああ、そうだよ…………」
サナカさん目良いんだな。
「シンさん、私はあなたを気に入りました。是非私達の学園に───」
「行かせるわけないでしょ」
「それを決めるのはシンさんですよ」
「ごめんサナカさん、僕はアルカディア学園が気に入ってるんだ」
あんなにもみんなのリアクションの良い学園は無いよね。
「まぁそう言うと思っていました。それでしたらシンさん、私とお友達になってくれませんか?」
友達か……………。それくらいなら問題無いかな。
「良いよ」
「それじゃあこれからよろしくお願いしますね」
サナカは僕に手を差し出した。
「うん、よろしく」
僕はその手を取った。
どうしてかは分からないがサナカは嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「そんな笑顔出来たんだ……………」
シエナは少し嫌そうな顔をしていた。
サナカさんと仲良くなかったけ?女子ってのは分からないものだ。
「皆さんありがとうございました。特にシンくん」
エナが深く頭を下げてきた。相当悔しいのだろう、顔にシワが寄っていた。
「エナ団長、エースは僕の魔法と相性が良かっただけです。あなたが悔しがる必要はありませんよ」
「そうだとしてもまだ生徒である君に頼ってしまった自分が不甲斐ないんです…………」
「姉さん…………」
「狂犬の脅威は今回ではっきりしました。これから私は狂犬について深く調べるつもりです」
「そうですか。頑張ってくださいね」
エナ団長が動いてくれればすぐに情報が入るだろう。それは狂犬と本格的にぶつかるつもりでもあるということ。
そうでなくても狂犬は国を狙っている。だからこそシエナの近くにいる僕を排除しに来た。
つまりこのままシエナさんについて行けばまた狂犬の人と戦えるって事だ!最高じゃないか!
「会場にいる生徒達に死者は居ないようです。治癒魔法によって全員元通りになったとも」
「あの二人に任せて大丈夫だったみたいね」
「ええ、あの二人にも才能があると私は思います」
オルトとルイの事かな?
「では戻りましょうか。シンくんの表彰もまだですし」
「でもどうやって戻るの?転移魔法は使えないのに」
「僕が使えるから問題ないよ」
多分エナ団長もそのつもりで言ったんだろうしな。表彰してくれるならしてもらいたいものだ。
[転移]
そうしてやっと会場に戻ってきた。
「ほんとに戻ってきた!」
「ますますシンさんに興味が湧いてきます」
そういえば完全に忘れてたけどサナカさんいつまで手握ってるんだろ。
「ねぇサナカさん、そろそろ手離したら?」
「あら、本当ですね。完全に忘れていました」
わざとなのか?どうして嘘って分かるような口調でいったのだろうか。
「サナカさん、あなた───」
シエナはあからさまにムカついていた。
それにしても会場にいる生徒がざわついているな。それも僕を見て…………。
「投影魔法生きていたんですね」
えっ?てことは…………。エースとの戦い流れてたってことか!?じゃあ僕の戦っている姿が流れていたと。じゃあ全員に実力がバレたって事なのか……………。
だって見てくる人と目を合わせただけで体ビクつかせて目逸らすし、怯えてるってことだよな。絶対見られてる。
「よぉシン!やっと帰ってきたんだな」
「狂犬の幹部と戦ってたんだよね?」
「ああ、そうだよ…………」
「すげー迫力だったぞ!俺じゃあついていけなかったぜ」
「やっぱり映ってたんだ…………」
「うん、映ってたね。見てた人はみんな口開いて固まってたよ」
笑いながらそんなことを言う二人。
じゃあもう実力隠しても意味が無いってことか…………。ミカエル学園行こっかな?
「シンくん、そろそろ行くよ!」
急に僕の手を引くシエナ。
「ちょ、ちょっと待って」
「行くよ!」
シエナは僕を睨みつけて言った。
「は、はい……………」
こ、怖ぇ〜。
「それではまた会いましょうねシンさん」
サナカは笑みを浮かべ、手を振ってきた。
「うん、バイバイ」
僕も手を振り返した。
「ねぇシンくんはサナカさんみたいは品のある子が好きなの?」
「えっ、急にどうしたの?」
「いや、別に…………」
シエナは少し頬赤くしていた。
「僕はシエナさんみたいな明るい子が好きかな…………」
リアクションが良いんだよね。サナカは典型的な王女って感じでクールだからリアクション薄くてあんまり面白くないんだよ。
「そ、そっか…………。そんなんだ!」
「なんか嬉しそうだね」
「べ、別にそんなの思ってないよ!」
「……………そうなんだ」
それにしては声が弾んでる気がするけど、やっぱりシエナさんは不思議な人だな。
その後、表彰をされたのだが、エースとの戦いを見た人達はそりゃあ優勝で当たり前だよな、みたいな雰囲気を出しており特に盛り上がることも無く終わってしまった。
ものすごく悲しい事だ。
まさかこんなにも早く実力がバレるとは思わなかった。
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読んで頂きありがとうございますm(*_ _)m
これにて二章完結です。
引き続き読んで頂けると嬉しいです。
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