第20話 狂犬の襲来
シエナと合流したシン達はエナと作戦会議をするため転移魔法で会場に戻ろうとしていた。
全員が魔法陣の中に入り、光に包まれた。
「君は行かせませんよ」
そんな声が聞こえたと同時にシンが魔法陣の外に吹き飛ばされた。
「シンく───」
シエナがシンを助けようと歩き出したが転移魔法が発動し、会場に戻された。
シンとその男が向かい合う。
「もしかしてあんたがボス?」
「はい、狂犬のエースと申します」
その名を聞いてシンは顔をハッとさせた後不敵な笑みを浮かべた。
(まさかガウス先生が言ってた人に会えるなんてなんか嬉しい)
「彼女達が戻ってきては面倒ですね」
そう言ってエースは魔法陣を消し飛ばした。
「シン・クロイセルくん、私が君を殺します」
エースは不気味な笑みを浮かべた。
※
転移魔法によって会場に戻されたシエナ達はもう一度シンのいる場所に戻ろうとしていた。たが直ぐに魔法陣が消え去り、行くに行けなくなってしまった。
「やはり潰されてしまいましたね」
「ええ、そうね…………」
シエナがものすごく焦った顔をしていた。
「今の男、姉さんから聞いてたやつに似てた。特別席にさっきまで居たって」
それを聞いてサナカも焦った顔をした。
二校戦が行われていた草原はミカエル王国の端にある。一方会場はアルカディア王国とミカエル王国の間にある。
「あの近くに転移魔法の光は無かったよね」
転移魔法は対象を即座に移動させるという性質上、使う魔力が強大なので遠くからでも発動がわかってしまうのだ。
「他の敵じゃねぇのか?」
そう信じたいがあまりに特徴が似ておりその線がないのは明確だ。
「この短時間で転移魔法なしであそこまで移動出来る時点で普通じゃない。シンくんももしかしたら出来るかもだけど敵も出来るって時点でもしかしたら同じくらいの実力を持ってる可能性が高いかも」
「マジか…………」
全員がシンの身を心配していた。
『全員聞こえますか?』
そんな中エナから[同調]で声を掛けられた。
『会場に狂犬が押し寄せてきています。手伝って貰えますか?』
「わかったわ。それより姉さんシンくんがあの男と今二人でいるの…………」
『それは本当か!』
エナが声を上げる。その焦った様子に全員が体を震わせた。それほどまでにやばい相手だと理解したのだ。
『あの男は狂犬の幹部、エースと名乗っていました。シンくんと同じように見えない攻撃をしてきた。私はあの男に指一本触れさせて貰えませんでした』
「姉さんが何もさせて貰えなかったって……………」
シエナは心配と焦りで鼓動が早くなりいてもたっても居られなくなっていた。
「私、シンくんの所に行ってくる!」
「───待ちなさい」
それをサナカが止めた。
「あなたのお姉さんでも何も出来なかったんです。あなたが行っても意味がありません」
「でも!」
「エナ騎士団長、あなたがシンさんの所へ向かってくれませんか?他の騎士団もあなたでしたら動かせますよね?」
『ええ、可能ですが…………?ここにも敵が大量に───』
「問題ありませんよ。ここには学園一の王女が二人もいるのです。下っ端の雑魚など相手になりません」
「ですよね?シエナさん」
サナカがシエナにニヤリと微笑む。
「当たり前よ!」
それを聞いてエナは安心したのか任せました、と言いシンの方へ向かいだした。
『最後に敵の特徴だけ教えておきます。彼らは影移動を使います。周りに敵が居なくなったからと言って油断はしないでください』
[影移動]
影に潜り、誰からも認識されず移動出来る魔法。奇襲を得意とし、気配すらも感じないので油断大敵なのだ。
「とことん面倒な相手ね」
シエナはものすごくイライラしていた。
「オルトくんとルイくんは試合後で疲れてるでしょ───」
「俺たちなら余裕だぜ」
ルイも首を縦に振る。
「休めなんて言うつもりないわよ。多分怪我人がたくさん出てると思う。だから二人はその人達を安全な場所に運んで欲しいの。敵がいたら容赦はしなくていいわ」
「了解しました」
「やってやんよ!」
オルトとルイもやる気だ。シエナは微笑み「それじゃあお願い」と言った。
そうして全員が散開した。
会場の観客席に出たシエナはその光景に目を疑った。
会場にはヒビが入り、ぐちゃぐちゃになっており、黒いフードを羽織った男達と生徒が剣やら魔法やらを撃ち合い、両者とも倒れていた者が存在した。だがやはり魔法士だからか倒れた者の中に死んでいる生徒はシエナが見る限りではいなかった。
シエナは剣を抜き、息を整える。
(あのフードから魔力を感じる。もしかしたら影移動の魔法が埋め込まれてるのかも…………)
なら───。
シエナはある案を思いつき、近くにいた黒フードを切り倒した。
そうしてフードを取り、自分が羽織る。
(やっぱり魔法が埋め込まれてる)
『みんな敵が来てる黒いフードに影移動の魔法がうめこまれてる。使いたかったら奪い取って』
それを伝え、シエナは影に潜った。
敵を見つけては手だけを出し、稲妻を流す。
それ喰らった敵は白目を向いて倒れる。
シエナはものすごいスピードで観客にいる敵を倒していく。
「てめぇ!」
影に潜っていた他の敵がシエナへ向かってきた。
影の中は自分たちの空間でないのでこういったこともあるのだ。恐らく敵はこれを用いて情報を交換し合っていたのだろう。
シエナと敵は影の中で剣を撃ち合う。影の中は例えるなら息のできる水の中だ。剣を振るっても相手に当たるような速度は出ない。
だがシエナは雷魔法を使うことが出来る。
不利だとわかった敵は地上に上がる。
シエナも上にあがり、剣を振るった。
それを敵は止めた。
だがシエナはもう片方の手で稲妻を貯めており、それを放ち敵を真っ黒焦げにした。
(あっ、やりすぎた……………)
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